かみなりさまのお話

                                                 絵と文:都筑信介
                           
                         (本作品はフィクションであり、登場人物等の名称はすべて架空であり、実在しません。)

章夫さんは、アンナちゃんと二人暮らし(?)です。2月のある日、午前中に急に曇り空になったなあ~、と思っていたら、遠くから「ゴロゴロ~」と地面に響くような雷鳴が聞こえてきました。
章夫さんのうちで、お茶を飲んでいた敦子さんは、「あらら、雷さんの登場かしらね、この時期としては、珍しいわね」と。
ゴロゴロゴローン、と微振動で、湯呑についだ緑のお茶が少しゆれたなあ~と思ったそのとき、ものすごく大きな「バリバリバリ~」という音が、章夫さんの家の裏庭の方で、するではありませんか。
さすがに、アンナちゃんもびっくりして、飛び起きて、「ワンワン」といいながら、裏庭にでてみると、、、



見てびっくり、なんと、雷さまが、裏庭に、天から落っこちてきたようです。みると、それも、子供のようです。「かみなりさんだ。大丈夫か?」
「子供のかみなりさま、はびっくりしてあたりをキョロキョロと見まわしていましたが、章夫さんが「大丈夫か?」
と聞くと、雷さんは、「ニカッ」と笑って、「だいじょうぶみたいら。どうも、雲の切れ目から、地上に落っこちてしまったみたいら。いてて、」
「雲の上からみたら、うまそうなゴマのついたパンが見えたので、ほしいなあ、と思って覗き込んだのが、失敗だったら。」
敦子さんは、「ゴマのついたパン?ひょっとして、このアンパンのこと?」といって、かみなり君にみせると



「そうそう、これら~」と。「食べて、いいら?」
「ええ、どうぞ、うちはパン屋なのよ。ほかにも、こんなパンもあるわよ?」と敦子さん。
「こりゃ、うまいら、こんなうまいもんは、しばらく食べたことがないら~」
でも、また、「父ちゃんに怒られそうだ!これはえらいことになったちゃったら」
「まあまあ、だれでも、失敗はあるわよ、アンパン食べたら、ゆっくりかんがえたら?」
「ははは、」としばらく、かみなり君と、お話が弾んだのでした。しかし、そのあと、また、大きな音が今度は家の中でしたかと思ったら、



「こら、おまえらか、うちの坊主をさらったのは、?」と、雷さんの父ちゃんと母ちゃんでしょうか?章夫さんと敦子さんは、雲に巻かれて、天上に連れていかれてしまいました。



気がついたら、ここは雲の上のようです。でも、足元はふんわりして、かすかに暖かく、気持ちのいい所です。横から、声がきこえてきました。
「すまなかったね、おどかして。息子にきいたら、息子が自分で雲から落っこちたんだと、そして、あの人たちはいい人で、おいしいアンパンとやらをくれた。とうちゃん、何にもわかっていない!
といって、息子に怒られてね、悪いことをしてしまったなあ、と。」
「ああ、びっくりした」と敦子さん。
「ごめんなさいね。あとで、むすこに、家まで送らせるから、それまで、かみなり雲の見学してってください。」
ふと見ると、結構いろんなものがならんでいます。
「あれは、雲を作る装置?」
「そうよ、週末は雨だから、いっぱい作っておかないとね。」
「あれは?」
「あれは、雷の音を出す大音響設備よ」
「え~、レコードとスピーカーなの?それにバッテリ?」」
「そうよ、昔から、何にもかわってないのよ、最近、本部はパソコンで、オンラインでやれ~とか、パスワードで認証しろとか言っているけど、昭和生まれの雷たちにとっては、悩みの種だね」
「そうなんだ。」



「アンパンありがとう。とってもおいしかったら。また、食べたいけど、簡単には、地上にはいけんら」
「これ、持っていってくんろ、」
「これは?
「これは、鬼の飴ら、これをなめると、約1年は絶対病気にならんら」
「すごいね。ありがとう。」
こういって、かみなり君は章夫さんたちを送ってゆきました。


どうでしたか?かみなりさんは、いつも、みなさんのことを、みなさんが、無事で元気でやっていけるように、雲の上からみているかもしれませんよ。

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