もみじの話

                                           絵と文:都筑信介 

(本作品はフィクションであり、登場人物等の名称はすべて架空であり、実在しません。)

章夫さんは、アンナちゃんと、二人暮らし(?)です。ある朝、アンナをつれて、みんなで、お散歩をしているときのことです。黄色に色ずいた銀杏(いちょう)の葉がそよ風に運ばれて、
ひらりひらりと、ゆっくり舞い降りてくるではありませんか?ひらりひらりと、アンナちゃんの背中に降り立って、そのまま、そこへ着地、でもあまりにゆっくりなのでアンナちゃんは気づきません。車道を、一台の電気自動車がe-power(イーパワー)で駆け抜けたと思ったら、、地面に落ちてた銀杏の葉たちが、クルクルクルと舞い上がり、黄色の妖精のダンス。



敦子さんが、「まあ、きれい、まるで、ほんとうにおどっているようだわ~」と、楽しそうな声で、一瞬の寸劇に感動。
あたり一面を見渡せば、銀杏の街路樹は、すべて明るい黄色に染まっていました。
「もうすっかり、秋だなあ~、なんか急に色ずいたみたいだ。」
「そうね、ここ2~3日で、急に黄色に変身したみたい。今のうちに、秋を楽しんでいかないと、あっという間に過ぎ去っちゃうかもね」
「うん、今年は、夏は疫病騒ぎで、とても「浜辺の歌」という感じじゃなかったもんなあ、たまには、山にドライブにでもいってみるか?」
「賛成!、帰ったら、すぐ、残ったご飯でおにぎりを握って、スタートしましょう。」
「そうと、決めたら、行く気満々だね」



山のほうに走ると、もう周りの山々は、けっこう黄色に色ずいていました。ところどころに赤いカエデがあるのでしょうか?赤色に染まったところがあります。
「そのコントラストが何とも言えないくらい美しいわ~きてよかった」
「そうだな、あと1週間もしたら、散りだしたかも、しれないぞう」
「ここまできたら、だれもいないぞう、小僧もいないぞう、」
「ははは、なに、言ってんのよ?」
しばらく行くと、パーキングスペースがあり、そこから谷を降りると、絶景があると書いてあったので、そこで車を降りて、歩くことにしました。



そこは、絶妙の展望スポットでした。ちょうど、トンネルから出て、鉄橋にかかるところで、背景の裏山の壮大な紅葉の比類なき美しさ。

♬ 秋の夕日に照る山もみじ
 濃いも薄いも数あるなかに
 松をいろどる楓(かえで)や蔦(つた)は
 山のふもとの裾模様

♬渓(たに)の流れに散り浮くもみじ
 波にゆられて離れて寄って
 赤や黄色の色さまざまに
 水の上にも織る錦

「この歌、小学校でよく歌ったわ、それも合唱という感じで」
「うん、たしか、この詩は、朧月夜の作者と同じ、高野辰之の作詞だったと聞いているよ」
「そうなの、この歌、西欧でも人気あるみたいよ。わたしの友人が留学中に、つい歌ったら、もう一度歌ってっていわれて、その相手は、それがきっかけで日本にきてみたいというようになったというから、」
「どうも、作者は、郷里に帰る途中に、信越本線の碓氷峠で、ここにみえるような壮大な紅葉をみて、この歌を作ったらしいよ」
「あ、みてみて、列車がきた。」
「ほんとだ、歌の光景にぴったりだね」
こうやって、秋の一日がゆっくりとすぎていくのでした。


どうでしたか?みなさんも、つい忙しくて、もみじが赤くなったのも気が付かず、落葉になっちゃたという風になっていませんか?
ここでも、書きましたように、それは、もったいないので、ちょっとでも、休憩して、秋をみてみましょうね?

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