彼岸花ときつね

                                                     絵と文:都筑信介

                    (本作品はフィクションであり、登場人物等の名称はすべて架空であり、実在しません。)

章夫さんとアンナちゃんは二人暮らし(?)です。秋が少しずつやってきて、ちかごろ朝夕は、涼しい風が、気持ちよく感じられるようになりました。章夫さんの住んでいる町の南には、秋風川という川があり、その土手には、、「彼岸花」が自生し、「ごんぎつね」のお話のような規模ではありませんが、秋の初めごろには、美しい赤い彼岸花がところどころに群集し、そこを訪れる人を楽しませてくれます。章夫さんは、敦子さんに、「アンナと、秋風川にお散歩に行くが、一緒に行くかい?」と電話をすると、「いくいく、今日はお休みだし、いい天気だものね。」といい返事が返ってきました



秋風川の両側の土手は、涼しい風が川岸に流れ、草が少し秋色に染まった美しい風景でした。ところどころに彼岸花の群集がみられ、秋を感じさせてくれます。
「ごんぎつねの場面に、そっくりだね」
「原文では、どのように、書かれているの?」と敦子さんが聞くと、章夫さんは、
「文すべてを暗唱しているわけではないけど、たしか、お昼がすぎると、ごんは、6体の地蔵様のかげにかくれていました。とてもよいお天気で、中山城の屋根が陽に照らされて光っていました。彼岸花は満開で、それは、赤いじゅうたんを敷き詰めたようでした~だったかな?」
「そんな感じなんだ。たしかに、彼岸花の群集して咲いているところをみると、赤いじゅうたんのようにみえるわね、昔のひとは、うまいことをいったものだわ~」
「もうすこし、歩いて行こう、たしか、地蔵様はないけど、石仏はあったような気がする。」



しばらくいくと、3つの石仏らしきものがありました。章夫さんは、
「だいたい、ごんぎつねの話に似てきたぞ。」
「むかし、この物語が書かれたころも、きっとこんな風景だったんでしょうね?」その時でした。
「あっ、、、」
「どうしたの?」
「みてみて、あそこの石仏の横にみえるの、キツネじゃないの?」
「ほんとだ、こちらを見て笑っているようだ」
「やはり、この季節、物語通り、キツネさんは、こうやって現れるのね。」
「ははは、川で、うなぎをつかまえているひとはいないけどね」
「物語では、きつねが、栗やマツタケをはこんだことになっているけどね。」



その日の夕暮れでした。何か縁側のほうで、音がするなあ、と思って、のぞいてみたら、なんと、キツネが遊びに来て、アンナとお話しをしていました。
「アンナ、元気か?山で栗が、落ち始めたから、一つもってきたぞ」
「ありがとう、これからは、山もあきの装いね?、もう少しすると、朝夕は寒くなるわね。」
「物語では、キツネは栗を何個ももってきたみたいだけど、キツネがくわえてこれるのは、1個だよ」
「ははは、そうよね、それで十分よ、ありがとう。」
このあと、夜更けまで、話がはずんでいるようでした。







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