菜の花の話

                                                     絵と文:都筑信介
        
                                  (本作品はフィクションであり、登場人物等の名称はすべて架空であり、実在しません。)

章夫さんは、アンナちゃんと二人暮らし(?)です。「今年は寒い冬だなあ、」と数日前まで、ぼやいていた章夫さんですが、2日前から、陽ざしがとても明るくなり、日中はさんさんと、太陽が草原を照りつけ、とてもポカポカした暖かい日になりました。こんな陽気のよい日なので、章夫さんは、アンナちゃんとを連れて、お散歩に出ることにしました。
よいお天気です。そよ風が吹くと、草原の草の香が、そっと運ばれてきて、章夫さんとアンナちゃんを包み込むのでした。
「アンナ、春の匂いだねぇ~」というと、
「クワン」とアンナちゃんもうれしそう。そんなことを言いながら、しばらく歩くと、菜の花の黄色が草原を彩るその中に、一人の女の子が、笑っています。



「こんにちは、初対面だねぇ、この辺にすんでいるの?」
「はい、でも、こうやってヒトの世界にデビュウするのははじめてなの!」
「そうか、最近は、疫病が流行っているからなあ、みんな家に引きこもってしまって、あまり出てこないようになっちゃたからなあ!」
「はい、でも私は妖精で、いわば「おばけ」だから、どこかの漫画の歌にあるように、おばけは死なないし、病気もなんにもないのよ」
「ははは、そうか~いいな~病気もなんにもないんだ!」
「おじさん、今からこの草のステッキを振ると、、こちらの菜の花がいっせいに花開くわよ~、それ~」



「ほんとだ、まるで魔法みたいだ。」
見る見るうちに、草原の菜の花は、いっせいに黄色に開花し、あたり一面が黄色の絨毯(じゅうたん)のようです。
「すごーい、きれいだ」
「ところで、ひとりで遊びにきたの?」
「いえ、お父さんとお母さんといっしょにあそびにきたの、」
「ふーん、お父さんとお母さんも妖精なの?」
「そう、昔はデートでこの草原で踊ったって言ってた。」
そのときでした、「菜の花(なのか)~、こちらよ」と、いう呼ぶ声が聞こえました。

みると、そこには、なずなちゃんと、土筆くん(つくしくん)がいるではありませんか?




「え~、じゃあ、あなたはひょっとして、なずなちゃんと土筆くんのお子さんなの?」
「正解!」
「わたしたちは、春の妖精だから、今の時期しか、ここには来れないのよ~ね~おかあさん?」
「そうかあ、なずなちゃん、お母さんになったんだ~いいなあ、楽しそうで」
アンナちゃんが、うれしそうに、笑って「クワン」といった時でした。
3人とも、徐々に菜の花の黄色の絨毯のなかに消えてゆきました。
菜の花(なのか)ちゃんの笑った顔はいつまでも、草原に残ったままに思える章夫さんでした。
「妖精だもんな。」章夫さんとアンナちゃんはいつまでも菜の花の草原をみつめていました。

  どうでしたか?もう春はそこまできているようですね。みなさんも菜の花の咲く丘にいってみましょう!はるの妖精たちに会えるかもしれませんよ。


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