新年とネズミさん
                                                      絵と文:都筑信介

               (本作品はフィクションであり、登場人物等の名称はすべて架空であり、実在しません。)

章夫さんは、アンナちゃんと二人暮らし(?)です。新年になり、初詣や、おせち料理、あいさつ回りなどが終わり、春の七草のおかゆが、そろそろはじまるころ、
「やれやれ、今年も、正月の行事はもう終わりだ、さあ、明日からはまた1年がんばらないとね?」といって、章夫さんは、床につきました。
しばらくして、寝床に月の光が差し込み、夜も更けたころ、章夫さんは、なんだか、ひそひそといった話し声で、眼をさましました。
たしかに、障子の向こうで、なにやら、ひそひそと、そして「ちゅう、ちゅう」ともきこえるようなささやき声が、聞こえてきました。
章夫さんが障子のほうをみると、そこには、月の光の、まるで「影絵(かげえ)」のように、2匹のネズミの姿が、障子に映っていました。



章夫さんが、耳を澄まして聞いていると、
「今年は、どうも、パッとしなかったなあ」
「毎年、お社には、この時期いっぱい人がきて、いっぱい「お供えもの」があるんだけんども、、、」
「今年は、お社に、だあれもおれせん(名古屋弁:誰もいないねえ)、食べるもんなんにもあれせんがや(名古屋弁:たべるものが何一つないねえ)」
「方言言ってる場合か?なにか食べるもの見つけないと、たいへんだぞ、?」
「今年は、疫病がはやったからな、でも、この家行くと、何かお零れがもらえるって聞いたからきてみたんだ」
「でも、なにもないなあ?まあ、今日のところは寝るかあ?」



次の日、章夫さんは裏庭にアンナちゃんをつれて出てみると、アンナちゃんがある1点をじっとみつめているので、よくみたら、草むらのなかに丸い巣穴があって、よくみると
小さいカヤネズミがじっとこちらを見ています。章夫さんは、「昨日話をしていたのは、あのカヤネズミたちか?」
そう言って、章夫さんは、そっと、巣の入り口に、サツマイモを3つおいておきました。「まあ、ちょっとしたごちそうだぞう」
そういって、章夫さんは、その場を去りました。



その夜、章夫さんは、また「ひそひそ」という話し声で目をさましました。みると、障子の向こうの縁側で、2匹のネズミが、はなしをしていました。
「今日、ごちそうがみつかったんだって?」
「そうなんだ、この家の主が、気にかけてくれたみたいで、、」
「ほう、こんなご時勢だけど、そんなこともあるんだな、」
「ほんとにたすかったよ。」
「そういえば、運の神様から、推薦人を出すように言われていたね。?」
「ここの主を推薦状に書いて、渡したらどうだや-も(名古屋弁:渡してみたらどうですか」



数日後、章夫さんは、パンを買いにゆきました。そうしたら、敦子さんが出てきて、「宝くじが当たったんですって?」
「うん、そうなんだ、5等だけど、まあまあラッキーだったなあ、きっとあのネズミがくれたんだ」
「まあ、幸運ね、くじも、やさしくないと当たらないわね、ははは、」


どうでしたか?昔から、おむすびころりん、のお話にあるように、ねずみさんは、米や穀物の収穫に関することでは、よく登場しますね。
豊作であれば、その御礼として、ネズミの神様(豊作祈願)に感謝し、ねずみさんにもおすそ分け、ということなんでしょうか?
日本では、ネズミさんも繁栄のあかしとして、あがめられているところに、日本人のやさしさを感じます。

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