アサガオと夕顔

                                                         絵と文:都筑信介

(本作品はフィクションであり、登場人物等の名称等はすべて架空であり、実在しません。)

章夫さんはアンナちゃんと二人暮らし(?)です。ある、お天気の良い日曜日、章夫さんは、芽がでて、だいぶ大きくなったアサガオの苗をそろそろ植え替えて、家の横の手製のロープにはわせようかな?と思って、作業をしておりますと、それを見に来た、となりのあずきちゃんが、うらやましそうにこちらを見ています。そして、章夫さんの顔をみて、しばらく黙っていましたが、急に決心がついたのか?、章夫さんに話しかけました。



「おじさん、それ、アサガオの苗?」
「そうだよ。」
「これは、おじさんが種をまいたら、芽がでてきたの?」
「そうだよ、」
「・・・・、いいなあ」
「え、どういうこと?なにかあったの?話してごらん?」
「実は、いま、学校で、アサガオの観察ていうのをやってるんだけど、・・・、みんなは鉢にまいた種から、ちゃんと芽がでてきたんだけど、」
「わたしのだけ、芽がでてこないの。」
「そうか?じゃあ、おじさんの小学校1年生の時といっしょだ!」
「え~、本当?」
「おじさんも、学校の先生が、土の中に穴を開けて、種をまきなさい、と言ったので、そのとおりにやったら、全然めが出なくてね。今から思えば、深い穴を掘って種をいれたので、芽が出なかったのかな?と。」
「おじさんも、なんでも最初は失敗続きでね、人生も失敗だらけだ、ははは、。でも、失敗は成功の基だぞ。失敗があって理由がわかるから、成功があるんだ。」
「本当?」
「そうだよ、ほら、一つ苗をあげるよ、それを観察すればいい。でも、初めの種からは芽が出ませんでした、と書いた方がいいぞ、そちらのほうが、理科の観察記録としては100点だ!」
「ありがとう」



「アサガオって、朝、花が開くから、朝顔っていうんでしょう?」
「そうだよ。」
「じゃあ、昼顔っていうのもあるの?」
「あるよ。昼顔は、とくに浜辺で咲くけどね」
「じゃあ、夕方に咲く夕顔というのはあるの?」
「あるよ。」
「へえ~、じゃあ夜顔というのは?」
「えーとどうかな?おじさんも夜顔というのは、あんまりきいたことないなあ?どうなんだろう?」
「ははは、」
こんな会話が続いたら、もう、お昼近くになりました。



その日の夕方、章夫さんは、アンナちゃんを連れて、お散歩に出ました。ある道の曲がり角に、見ると白い花がいい香りを放ちながらいっぱい咲いています。
「これは、見事。夕顔だ。こんなにたくさん咲いているのを見るのは久しぶりだぞ。」
夕顔は、さあ、これから、夕暮れ時のショーが始まるわよ~と言わんばかりに、どの花も章夫さんのほうをみているようです。
そんな、夕顔の白い姿に見とれていると、横から、思いがけない声が聞こえました。
「おひとつ、どうぞ。」



「え~、僕に?」
「はい、白い夕顔をお気に召したようなので、、」
これは、この垣根の中の家に住んでみえる女の人でした。夕顔は、とても上品な扇の上にのせられており、黄色の扇に白い夕顔がとても映えていました。
そして、その扇もとてもよい匂いがする扇でした。そして、この女の人があまりにも美しく、上品で、この世のものとは思えないような感じがしました。
思わず、章夫さんは言葉を失い、しばらくみとれていました。
その時、どこか遠くから、どこかで聞いたことのあるような声が聞こえてきました。
「章夫さん?、章夫さん」



「夕顔~むにゃむにゃ」
「あれあれ、居眠りしちゃってる、しょうがないわね、アンナちゃん、おこしてあげて、かぜひかないうちにおうちに帰らないと」
と、敦子さんに居眠りの現場を発見されたのでした。




   どうでしたか?朝顔も夕顔も、日本的な花ですね。つい、その美しさに目を奪われてしまいそうです。夕方、お散歩をしていると、
垣根に白い夕顔がたくさん咲いている、そんな風景があると散歩も楽しくなりますが。
まあ、ちょっとしたところに、季節を感じるものがあるかもしれませんよ。


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