秋のある日

                                                      絵と文 都筑信介

                 (本作品はフィクションであり、登場人物等の名称は、すべて架空であり、実在しません。)

章夫さんは、アンナちゃんと二人暮らし(?)です。だいぶ、秋も深まり、夕暮れが早くなったと感じるころ、新聞の夕刊に、あるチラシが載っていました。それは、「ぜひ、秋の狐山神社においでください。七五三のお子様、ぜひ、当神社で、よい思い出と記念撮影をどうぞ!
〇月〇日は、おみえになった方全員に、「特製おはぎ」をサービスしております。ぜひ、ご行楽を兼ねて、秋の狐山神社におこしください。」
とありました。そうです、章夫さんの町の東には、狐山という山があって、古くから、キツネが住んでいて、この山の入り口には、狐山神社というお社があり、ここへお参りすると、キツネのお利益があると言われています。
「アンナ、ちょうど、秋の散歩にはいい季節だし、〇月〇日は天気予報では晴天だし、おはぎがもらえるそうだから、行ってみるか?」
「クワン?」ということで、行楽計画決定。



当日は、予想通り、良いお天気で、歩いていくと「汗ばむ」ほどの陽気です。「半袖でも、よかったくらいだな。アンナ、暑いか? 境内の入り口に
自動販売機があるから、そこで水を買って飲もう!」風は心地よく、風が舞うと、赤茶色の葉が、パラパラと落ちてきて、道のあちこちを「秋色」に染めています。お水を呑んで、休憩した後、境内にはいると、巫女さんが明るい笑顔で出迎えてくれました。



「こんにちは、ようこそ、狐山神社へ、ここは初めてですか?」
「昔は、きたような覚えがあるけど、こんなきれいな巫女さんに、出迎えてもらったのははじめてだなあ。」
「まあ、お上手ですね。せっかくですから、ちょっとご案内しますと、うちの神社はキツネ様の神社でして、キツネ様にお参りしていかれると
その後、キツネ様の御利益があるとされています。それで、、」
「『キツネの幸運をよぶお守り』というのがありまして、これを買って、間接的に寄付をしていただくと、ご自宅にキツネ様がお礼に訪れる
とされています。その後、なんとなくですが、キツネ様が幸をよび、一家にしあわせが訪れるとされています。」
「おひとつ、いかがですか?、なお、クレジットカードでも可能でございます。」
「ははは、いい話だね、こうやって、巫女さんにもお会いできたんだし、ひとつ買っていくか?」
「ありがとうございます。ワンちゃんにもきっといいことがございますよ。」
「お参りが終わったら、あちらの丘のほうにお寄りください。そこで、今日は、おはぎがサービスされます。ごゆっくりどうぞ。」
「ありがとう。」

キツネ様にお参りし、お守りを手にして、アンナと、奥の小高い丘に上がると、そこは、よい展望台でした。
とてもよい眺めです。真っ赤に染まった葉が、山全体を埋め尽くし、町全体をすっぽり包んでいるようです。
お茶所に腰をおろし、しばらく絶景に目を奪われていると、「お茶と、おはぎでございます。」と、どこかで聞いたことのある声。



「あれ~、香織さんじゃないの?」
「章夫さん、おひさしぶり。」
「今日は、こちらに、出張なの?」
「ええ、しばらく、紅葉の季節は、こちらのお店を手伝うことになりまして、、、」
「そうなんだ。」
「キツネさんのお守り、買われました?」
「ああ、まあ、この山のキツネさんの、自然保護費を兼ねているのだろうから、そして、キツネさんにも会ってみたいからね!」
「巫女さんのいうように、キツネがご挨拶に来るという話、本当ですよ。わたしのうちにも登場しましたから、、、」
「へえ、それは、楽しみだね。」

夕暮れになり、章夫さんは、家路に着きました。家にかえって、しばらくすると、あたりは真っ暗で、アンナと夕ご飯をたべたあと、
しばらく、うとうとしてしまって、「やれやれ、ちょっと、疲れたかな~」と思って、起きるとアンナがいません。
「アンナ、どこにいった?」といって、奥の和室をのぞいたときでした。



庭に、キツネがやってきて、アンナと対面して、何か、「お話」をしていました。キツネは、こちらを向いて、笑っていました。
そして、その表情から、こんな話をしているように、思えました。章夫さんは、そっとそれを聞いていました。
「おまえ、ここで、暮らしているのか?」
「ええ、」
「ご主人はいい人か?」
「いつも、私のことを、考えてくれて、とても私は幸せよ」
「そうか、それは、よかった。」
「今日は、山から来てくれたの?」
「うん、キツネのお守りを買ってくれたからね、そのお礼に、、」
「帰りは、気をつけて帰っていってね」


どうでしたか?こうやって、きつねさんとお話ができるといいですね。あなたの親しい人は、ほんとうはキツネさんで、あなたがやさしい心の持ち主なので、化けて人になっているだけかもしれませんよ。そして、あなたが、やさしくなくなった時、あなたの前から、そっといなくなってしまうかもしれませんよ。

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