「ゼシカ。これからオレは、片時も離れず君を守るよ。君だけを守る騎士になる」

……何、これ。
どうしてこの人は、こういうセリフをこんなに意地の悪そうな顔して言うわけ?
これってもしかして、私が昨夜言った言葉に対する、イヤミの当てこすり?
……なんてヤツ……。
いいえ、怒っちゃダメ。
相手の思うツボだわ。笑って受け流せるくらい出来なくっちゃ。

「はいはい。どうもありがとうございますー」

あー! 殴ってやりたい!


「……まあ、ね。修道院のきゅうくつな暮らしには飽き飽きしてたんだ。いい機会さ。それに、ゼシカとはもっと深いつき合いになりたい。カタキ討ち? ああ、適当にな」
外に出ても、まだこんなこと言ってる。
敵討ちが適当?
そんな言葉、本気にするわけないじゃないの! 
ククールがどれだけ院長の事を大事に思ってて、どれだけ本気で仇を討ちたいと思ってるか、ほんのちょっとだって疑ってないわ。
なのにそういう事を言うってことは、私たちのことをバカにしてるのよ。
ククールって、本当の意味で軽薄なんだわ。
他人に対しての誠意ってものが無いから、本心を隠してごまかそうとする。
……でも、イヤではないのよ。一緒に旅をすること自体は。
希望が見えてきたって思うのは、嘘じゃないのよ。
……本当は『よろしくね』って言いたいんだけど……絶対に言いたくない。

「……ねえ、エイト」
と、そこの不良騎士! ちゃんと聞いてなさいよ!
「あいつは私ひとりのカタキじゃないわ」
本当は私一人でドルマゲスと戦いたかったけど、仕方ないわ。
敵討ちって目的は同じなんだから、お互いに抜け駆けはナシよ。
「ドルマゲスに殺された人、みんな……。みんなに代わって、私たちで」
ククールの方を横目で見ると、思いっきり目が合ってしまった。
おまけに目配せまでされてしまう。
あーもう! 見透かされてるみたいで腹立つ! 
別に、あんた一人に言ってるんじゃないからね!
「エイトと私たちで、あいつを倒そう。ね」

だから、これからよろしくね、ククール。
本当は! すっごく不本意なんだけどね!

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