「Believe」



「次は12月だね」
その言葉に、肯きと微笑みを返して僕はバスに乗り込んだ。
いつも通り一番後ろの座席に座り、左側の窓際に寄る。
それを、ちゃんと分かっていて、バスの外の君は、この窓の下まで来ていた。
僕を見上げる瞳。
いつもと変わらない、静かな柔らかい目差しで見つめてくれる。
僕を不安にさせないように。

出逢った頃は、寂しさを隠しきれずに、君は泣いていた。
逢える時間は、離れている時間よりも極端に少ない僕達だから、離れてしまえば心も冷たくなっていくような、そんな不安を強く感じて。
君を凍えさせる涙を止めたくて、傍に行って抱き締め、慰めてあげたくて、けれど動き出すバスから降りることもできずに、僕は、ただ悲しい顔を見せることしかできなかった。
そして項垂れた心のまま、心配で堪らずに、いつまでも後ろを向いていた僕に、君はいつしか気が付いていたんだ。
だから、二人が寄り沿う、ほんの少しの間の、溶けるように暖かな光と、どんな場所よりも優しい音に包まれた後の、痛いほどの切なさを押し隠して、君は微笑むようになった。
どこにいても、どんなに距離があっても、私の心は傍にあるから。
前へ向かって。
次の瞬間へ手を伸ばして。
言葉のない微笑みで、君は僕へ、そう伝えてくれる。
そして僕も気が付いた。
守りぬくもの。
見据えるべき道。
優しさを心の強さに、切なさを希望に、君のために変えていくすべを。
隠してしまった君の壊れそうな弱さを、包み込んで溶かしてしまえるように。
二人で時を重ねあい、進んでいこうと決めたから。
君は、涙を流してもいいんだ。
独りきりの時、果てしなく広がっていくように感じてしまう目の前の闇が怖いと、縋ってもかまわないんだ。
届かない声すらも、僕がすべて受けとめてあげる。
痛みも悲しみも、乗り越えていけるように、守っていくから。
信じられなかった「ずっと」を、二人だけの本物にしよう。
君と出逢う数だけ、愛しさが増していくから。
今、次の街へ行っても、また君の元へ帰っていく。
僕達の「想い」を約束したのだから。

愛を信じて。
僕を、信じて。