「第二戦」


三人はまたか…と同時にため息をついた。向かった部屋に、
「お疲れ様です」そう言ってニッコリ笑う棚瀬がいたからだ。
今日の記念ライブの最終打ち合わせをすると聞いていた三人だったが、部屋に裁判のように机と椅子が配置されていることに気づくと、あれをするのかとさすがにすぐピンときた。
「そんな顔しないでください。お三方のためにしているんですから」
「俺たちのためになってるか?」と面倒くさそうな顔をして呟いた桜井に坂崎が苦笑して首を傾げる。
「おまえも諦めが悪いなぁ」キラキラのラメ衣装が眩しい高見沢がやれやれと机の上にパソコンを置いて椅子に腰掛けた。その隣に坂崎、そして桜井が腰を下ろす。何気に立ち位置と同じ並びになるのは、染み付いた長年の癖だろう。
「ファンがお三方をどのように見ているかも分かるんですから、良い機会ではないですか?」
「良い機会ねぇ…」
「まぁ、ファンが何に喜ぶのかは分かるから、今後のライブの方向性を決めるのには役立つかもしれないね」
「お、良い事言うねぇ、幸ちゃん」
「えっへん!でも、肝心の高見沢が素直にやろうとはしないけどね」
「えっへん!」
「高見沢さん、そこ威張るところじゃないです…」
「いいんじゃない?実際ファンが楽しかったと言ってくれるライブができてるわけだし、良い意味で裏切ってるってことで。ねぇ、桜井?」
「まぁ、ファンのみんなが満足してくれることが一番だからな」
「そうそう!そういうことだよ!だから今後も頑張って台本書くからな!台詞はトチるなよ!」
『ほーい』
「頑張るのはそっちですか!?」



「では、今日は二回目となります」
『はいはい』本業より寸劇を頑張る三人が素直に返事をする。
「あれ、みなさん素直ですね」
「何言ってもやるんでしょ?」と坂崎。
「はい」
「抵抗しても無駄ってことだろ?」と桜井。
「はい」
「じゃあ、さっさとやってよ。記念ライブのリハーサルもしっかりやりたいんだから」と、冷たく高見沢が言い放つ。心が折れそうになった棚瀬だったが、いやいや負けてはいけないのだ!と気持ちを奮い立たせた。
「はい!では早速まいります!!」


エピソードその八
ライブ中、マイクを通さずにメンバー同士で話していることがありますが、その時の表情を見ると”本当、仲が良いんだなぁ”と思います。
また、ライブの最後に三人でご挨拶をしてくださる時も、特に桜井さんと坂崎さんは挨拶が終わると顔を見合わせて一言交わしたり笑い合ったり。
ご本人たちは気づいていないかもしれませんが、本当に幸せそうに笑っているんですよ!
お互いが大好きだからこそ、できる表情だと思います!

坂「そう言われてもなぁ…」
桜「特に気にしたことないから、どんな顔してるとか言われてもな」
高「棚瀬、俺たちそんな顔してんの?」
棚「してますねぇ…そういう時はアルフィーメンバーとしてではなく、友人として、の顔でしょうか」
坂「ああ、素なわけね」
桜「つまり緩みきった顔ってことか」
棚「ゆ、緩みきった…」
高「そんな顔見て何が楽しいんだよ?」
坂「緩みきった顔が好きなんじゃない?」
桜「趣味悪いなぁ」
棚「そういうことではないと思いますよ!素ということなら、きっと飾らない柔らかい笑顔をされているんですよ!そして、そんな笑顔を見られてファンの方は喜んでいるんです!」
坂「…棚瀬、いつからクサイこと言うようになったんだよ。やめてよ、気持ち悪い」
棚「坂さん、ひどい!」
高・桜「気持ち悪…」
棚「全員ひどい!!」


エピソードその九
先日の2019夏の乱、ムービングステージで移動中、高見沢さんが穴に足を取られて転んでしまい、その後のMCで「リハーサルで桜井がやって、ちゃんとやれよ!と怒ったのに、本番で俺がやってしまうなんて…」と悔しがっていらっしゃいましたが、それに対して桜井さんが「大丈夫だよ。みんなが心配してるよ?」とサラリとおっしゃいました。
リハーサルで高見沢さんに怒られたのに、高見沢さんには大丈夫だよと優しいお言葉を…!!
桜井さんの優しさに感動しました!!普通だったら、「ざまぁみろ!」って言いますよ!
高見沢さんのことを本当に好きじゃないと、あんな風には言えないですよね!


高「え!桜井ってば俺のことそんなに好きなのっ?参ったなぁ~…」
桜「そうじゃなくて、単に俺が大人ってことでしょ」
坂「そうだね、高見沢が小学生なだけだよね」
高「しょ…小学生!?」
棚「そうですね」
高「棚瀬!頷くなぁ!!」
桜「いいじゃないの、高見沢がそういう風だからいつまでも若々しく見えるんだよ」
高「…中身が小学生だから若々しく見えるって言われてもうれしくない!」
坂「でも、大人な高見沢って何か違うし」
桜「そうだな、高見沢が大人って…想像できないな」
高「俺は大人だ!!」
坂・桜『はいはい』
棚「では、あの時の発言は高見沢さんが好きというわけではなくー」
桜「俺が大人でー」
坂「高見沢が子供ってこと」
高「おい!!」
棚「そうですか…ではこの話は高見沢さんが小学生なだけだったと…」
高「こらぁ!メモるな!!」
桜(…まぁ、好きっていうのもあるけどな。怪我がなくてよかったよかった)
棚「え?桜井さん、何か言いました?」
桜「何でもなーい」


エピソードその十
ライブでのパンフ紹介の時、桜井さんが営業部長になりますが、必ずといっていいほど、高見沢さんが桜井さんの横にぴったりとくっついています。
他の場面でも、高見沢さんが桜井さんにぴったりとくっつくこともよくあります。
そこまでくっつく必要あります??
それってやっぱり桜井さんが大好きでくっついていたいってことですよね!?

高「またぁ!?」
坂「相当、高見沢は桜井スキスキだと思われてるね」
桜「……ポッ」
高「そこ!照れるなぁ!!」
桜「だってぇ…」
高「クネクネすんなぁ!」
坂「まぁ、いいじゃん。好きなんでしょ?」
高「…うん」
桜「…キャッ」
高「だから!!それやめろ!気持ち悪い!」
桜「えぇ~好きなんでしょお?やっだぁ~!」
高「ゴ、ゴンザレスで言うな!普通に言え!」
桜「なぁ、好きなんだろ?」
高「い、良い声で言うなぁ!普通にって言ってるだろ!」
桜・坂『照れるな照れるな』
高「照れてなーい!!」
桜・坂『はははっ』
棚「高見沢さん!それなら認めてくださいよ!」
高「へ?何を?」
棚「な、何をって…」
坂・桜『何を?』
棚(…こ、この人たちはぁ~~っ!!わざとか!?)
坂「ああ、好きなんだったら“仲が良い“って認めろって?」
棚「そうです!」
高「あのさぁ!前も言ったけど、お互い好きじゃなきゃ四十五年もやってこられないって!」
棚「ですから、それが“仲が良い“ってことですよ!!」
高「そこがなぁ~何か違うんだよなぁ…」
棚「違うって何がですか!!」
坂「棚瀬、顔が怖い」
桜「そんな顔してっと、ファンに嫌われるぞ」
棚「坂さん、桜井さん、黙っていてもらえますか!?」
坂・桜『…はい……』
高「…う~ん、何て言うかさ。俺たちがお互いのことが好きで、お互いを認めあってて、その関係をイコール“仲が良い“ってその一言じゃ言い表せないと思うんだよね。周りからしてみたら“仲が良い“って一言で済むかもしれないけど、俺たち自身としては、もっと違う言葉だと思う」
棚「……」
桜「…そうだな。その一言では言い表せないものが俺たちにはあると思う」
坂「うん。何て言ったらいいのか分からないけど、僕もそう思う」
高「う~ん…何だろうなぁ…」
坂「う~ん…」
桜「う~ん……ニホンゴムズカシイネ」
坂「“声は良いけど頭の悪い桜井さん“が出てるよ!」
高「はははは!」
棚「…そうですね。お三方はそんな簡単な一言で言い表せるような単純な関係ではないですね。それなのに、何度も何度も“仲が良い“と言えと私たちは……ううっ」
高「泣くなよ!」
坂「そうだよ、泣いてないでしっくりくる言葉を見つけてよ」
桜「この記念の年に、俺たちの関係にしっくりくる言葉を見つけてくれよ。それこそ、長年支えてくれているファンのみんなと、さ」
棚「…は、はい!そうですね!!ファンのみなさんと見つけます!」
高「よし!じゃあ、今日のリハーサルに行くとしますか!」
坂「そうだね」
桜「行きますか」


「よし!!では、私は先に行きますね!」
棚瀬は気持ちを新たに、意気揚々と部屋を出ていった。
「怒ったり泣いたり、忙しいヤツだなぁ」
「それだけ真剣に俺たちのことを考えてるってことでしょ」
「俺たちっていうか、坂崎のことが半分以上だろうけどな」
「そんなことないと思うけど…」
「いや、あいつの場合は、坂さんスキスキ!だからな」
「やめてよ!気持ち悪い!」
「また泣くぞ、そんなこと言ったら」
「だって…」
「でもさ、あいつとの関係も、アーティストとマネージャーという単純な関係じゃないよな」
高見沢にそう言われて、確かにそうだなと二人は頷いた。
仲が良いという言葉だけでは言い表せない三人にずっと付いてきて支えてくれる棚瀬。ちょっと小さいけれど、頼りにしているのだ。三人にとって大切な存在はここいもいる。

ファンと共にあるそんな彼に恥じないステージにしよう。
三人はそう決意し、顔を見合わせた。
「行こう!」
「うん!」
「おう!」

そして振り返ると、三人は声を揃えて言った。
『みんな、大阪城ホールで待ってるよ!!』

四十五年の想いを込めた満面の笑みで。



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45回目のアルフィーさんのデビュー記念日は大阪城ホールでお祝いしました。
アルフィーさん!
45周年、本当におめでとうございます!!
これからもついていきます!


2019.08.25


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