「緊急招集3」

「今日こそは解決させないとな」
三回目ともなると、この場所も慣れたもの。
高見沢は通い慣れたスタジオに来たような気持ちで、目の前のドアを開けた。

『遅い!!』
「うわぁっ!!」
誰もいないと思っていた部屋からの予想外の声。
驚いて持っていたパソコンを放り投げそうになった。

そこにいたのは、なんと桜井と坂崎。
二人は、イスに座ってドアを開けた高見沢をジロリと睨んでいた。
「えっ!?な、なんでもういるんだよ!?棚瀬も!」
部屋の隅に立っていた棚瀬も見つけて、高見沢は三人を指差す。
よく見ると、テーブルの上にはすでに二人の飲み物が置いてあり、飲みかけだった。
どうやら高見沢が来るより、ずいぶん前からいるようだ。

「昨日、棚瀬に聞いたんだよ。今度、三人が休みの日はいつだって」
「そしたら、明日だって言うから、絶対呼び出されると思って、二人で先に来たんだよ」
「なんだよ、やる気満々じゃん」
「違う!」
坂崎がプルプルと首を振る。
「違わないじゃん。なんだよ~最初からそれくらいのやる気を出してくれよな」
「だから違うっての。呼び出されたくないから、先に来ただけ!」
「またまた~照れちゃってぇ~」
「だからっ」
「坂崎、何言っても無駄だ。腹が立つだけだから黙ってた方がいいよ」
諦めきった桜井が目の前のグラスを手に取った。
「もう諦めたの?諦めが早いね、桜井は」
「それが俺たちが長く続いている秘訣だよ。よく考えてみろよ。俺が折れなきゃ成り立たないことが山ほどあるだろ?」
そう言って、アイスコーヒーを口にする。
「確かに。そうか、僕たちがここまでやってこられたのは桜井のおかげかぁ」
「さすが桜井、悟りがもう仙人の域に入ってる。よ!桜井仙人!」
「何が仙人だ。誰だよ、こんな風にしたのは」
「…あ、俺たち?」
テヘ、と高見沢が笑う。
「”俺たち”じゃなくて、高見沢だろ。一緒にしないでよ」
坂崎がムッとして反論するが、
「何言ってんだよ。高見沢側に付いた時点で坂崎も同罪だ」
と桜井に言われて、ペロリと舌を出した。

「まぁまぁ。とりあえず高見沢さんも座りませんか?飲み物、何にします?」
棚瀬に言われて、ようやく高見沢も椅子に座る。
「飲み物…ねぇ、アイスはないの?アイスがいいな」
「…近くにコンビニはありますけど…アイスがいいんですか?」
「だって、今日まだアイス食べてないもん」
「…分かりました、買ってきますよ。何がいいんですか?」
「えっとね~ハーゲンダッツのクリスピーサンド!」
「カップアイスじゃないあたりが高見沢らしいね」
「なにそれ、美味いの?」
「え、桜井知らないの?ハーゲンダッツ」
「それは知ってる!その…クリリンなんとかって何?」
「違う!クリスピーサンド!”クリリン”はドラゴンボール!」
「クリスピー?フリスビーの親戚?あ、前に流行った伸びるアイスならぬ、投げるアイス?」
『……』

そんな桜井を無視して、困ったような顔で棚瀬が確認する。
「あの、クリスピーサンドがいいんですか?」
「え、ダメ?」
「ダメというか…」
「棚瀬のポケットマナーで買うんだから、高いのはやめろってさ。もうさ、ガリガリ君でいいじゃん」
「あの、坂さん、金額の問題ではないですからね?」
「違うの?」
「じゃあ、クリスピーサンドでもいいじゃん。ガリガリ君も美味しいけど、今はクリスピーサンドの気分なんだよ」
「……う~ん…」
頭をポリポリして、棚瀬が唸った。
「何か不都合でもあるわけ?」
「不都合と言いますか…その…」
「何、はっきり言ってよ」
「…まぁ、言っていいか。実は今日はスイーツを準備してるんですよ」
「えっ!スイーツ!?」
高見沢の大きな奥目がキラキラ輝く。
「ええ。なので、飲み物以外はあまり、たくさん食べないでいただきたかったんですよ。ちょっとしたアイスなら、まぁ、いいかなと思ったんですが、クリスピーサンドだと結構大きいじゃないですか」
「ああ、そういうことか。それなら先に言えよ~」
「そうだよ。先に言えばよかったのに」
「しばらくしたら届く予定なんですよ。準備したと言ったら、今すぐ食べる!となると思ったので、言わない方がいいかなと…」
「子供じゃないんだから、高見沢だってそれぐらい待てるよ。ねぇ?」
「うん。…たぶん……」
「たぶんなんだ…。でも、今日はなんでスイーツを準備してるわけ?」
「そうだよ。やけに準備がいいじゃん」
「え?まぁ…今回は坂さんから先に確認の電話もありましたし、こうして揃うことは分かっていたので、それならばと」
「気が利くじゃん」
「ほんと。何か気持ち悪い」
「坂さん、ひどいです…」
「それなら飲み物だけでいいよ。アイスコーヒーで」
「はい、分かりました。すぐお持ちしますね」
棚瀬がタタタッと小走りで部屋を出て行く。
「あ、スイーツって何か聞くの忘れちゃった」
「夏だから水物かな」
「あ~ゼリーとか?ゼリーもいいけど、俺はやっぱりケーキだったらうれしいなぁ」
「いやぁやっぱりさぁ、グイッと飲み干してプハーッ!ってするものがいいなぁ」
『それはスイーツじゃないっての!』

無事、高見沢のアイスコーヒーもやってきて、ようやく本題に入る。
「さて、この前は結局この話すらできなかったから、今日こそは話し合うぞ」
「この前、何話したんだっけ?」
「ほら、あれじゃん。ゴンザレスと俊子とコウ子」
「ああ、そうだ、それだ。ゴンザレスとコウ子でやればいいのに」
『やらないっての!!』
「でもさぁ…絶対ウケるって。ゴンザレスだけでも笑えるのに、コウ子もいるんだぜ?会場は毎回爆笑―」
『俊子、うるさい。』
二人の目が本気(マジ)なので、この辺でやめておくことにした。
いや、二人というより、小さい方の目が……なのだが。
「…えっと、じゃあ本題に入ろうか!」
「さっさと入れ」
「先に来たからって、暇じゃないんだからね」
「分かってるって!えっと、”わちゃわちゃ”とは何ぞやってことだけど、あれから誰かに聞いてみたって人は?」
「聞くわけないだろ。なぁ、坂崎?」
「もちろん。それなら最初から聞いてるよ」
「なんだ、聞いてないの?」
「なんだよ、高見沢は誰かに聞いたのか?」
「いや?」

予想通りの答えに、二人は冷たい目を高見沢に向けた。
「そんな目で見ないでよ。聞けてないけど、勇気を振り絞って聞いてみよう!と試みようとはしたんだから、その気持ちは褒めてよ」
「試みようとしただけで、何もしてないんだろ?」
「…うん、まぁ…」
「だったら何もしてないのと同じじゃん」
「もう!なんでそんなに冷たいんだよ!」
「冷たくもなるだろ。こんだけ休みの日を潰されてさ、解決しようって言ってるわりに何にもしてないんだから」
「そうだよ。色んな人に聞いたけど、みんな分からなかったってことなら、僕だって誰かに聞いてみようと頑張るよ」
「な、なんだよ~俺がまず誰かに聞かなきゃいけないっていうのか?」
「当たり前だろ!言い出したのはおまえなんだから!」
「風のウワサか何かは知らないけど、高見沢のところに届いたわけでしょ?それなら、高見沢が責任を持って意味を知るべきだよ。僕たちに振られても困るよ」
「え~……聞けるような人、周りにいないんだけどなぁ…」
嫌そうな顔をして、アイスコーヒーを一口飲む。
「それでも誰かに聞くしかないだろ。なぁ、坂崎?……坂崎?どうした?」
先ほどまで普通に話していたのに、坂崎がある一定の方向を見て固まってしまっていた。
桜井が覗き込むと目が開いていたので、寝ているわけではなさそうだ。

「え、なに、坂崎どうした?」
「…ねぇ、高見沢。これで調べてはみたんだよね?」
「え?」
そう言って坂崎が指差したのは、テーブルの上に置いた高見沢のパソコンだった。
「…パソコン?」
「…その様子からすると、調べてないね…」
高見沢はパソコンをジッと見つめ、ハッとした。
「…そうか!ネットで調べればいいんだ!」
『お~い…』
二人に呆れ返った顔で見られ、高見沢は誤魔化すようにエヘ…と笑う。
「おまえさぁ、それだけいつも手元に持ってんだから、それで調べろよ!調べられるんだろ?ネットってやつで!」
「ネットで調べても分からなかったんだと思って聞かなかったけど、まさか調べてなかったなんてね。びっくりだよ」
高見沢自身も、何故ネットで検索しなかったのか不思議に思う。
こんなにもパソコンを持ち歩いているし、日々使っているのに。
いくら聞き慣れない言葉を知ろうと悪戦苦闘していたからと言っても、まさかネットの存在を忘れるとは、さすがにひどい。
「…ご、ごめん……」

しょんぼり俯く高見沢の様子から、本当にネットで調べるということが、まったく頭になかったんだなと、二人は思った。
ここ数年で一番と言えそうなほど高見沢が凹んでいるのも分かった。

高見沢はファンの要望に応えようと必死だったのかもしれない。
普段ならすぐにパソコンを開いて、あれこれ調べたりするのに、今回はそんな姿を見ていない。
いつもやることすら忘れるほど、周りが見えていなかったのだろうか。

二人には、そんな高見沢に若い頃の姿が重なって見えた。
寝食を忘れて、曲作りに没頭する若かりし頃の高見沢。
今も曲作りは大変だが、あの頃はもっと大変だっただろう。
つい先日もソロライブを二日間やったところだ。
疲れもあるはずなのに、そんな顔は見せない。

アルフィーのために。
ファンのために。
この男は、とにかく目の前のことに全力なだけなのだ。

桜井と坂崎が顔を見合わせて、ふぅとため息をついた。

まったく、高見沢というやつは…

腹立たしい気持ちは、桜井と坂崎の中から自然と薄れていった。


下がりきった高見沢の肩を坂崎がポンと叩く。
「ほら、調べてみなよ。検索かければ絶対何かしら出てくるって」
「う、うん…」
「よく分からないけど、検索すると色々出てくるんだろ?それなら出てくるよ、いっぱい」
ネットに無知な桜井も精一杯フォローする。
「うん…」
高見沢が頷いてパソコンを手元に引き寄せると、電源ボタンを押した。
ウィーン…と起動音がして、画面が出てくる。
「よかったじゃないか。今日解決できそうで」
「一分ぐらいで解決しそうだよね」
「は、はは」
二人の笑顔に、高見沢の表情も少し和らいだ。
ブラウザマークをクリックして、お気に入りから検索サイトを表示させた。
「えっと…わ―」
入力し始めたところで、コンコンとドアをノックして棚瀬が入ってきた。
「お話し中、すみません。スイーツ来ましたが、どうしましょう?あとにしま―」
「今食べる!!」
高見沢が勢いよくパソコンを閉めて立ち上がった。

『…はぁ!?』
まぬけな顔をして、桜井と坂崎が高見沢を見上げた。
これまでのやりとりは何だったのかと、言いたくなるようなキラッキラの目をしている。
あんなに凹んでいたのに、何故この男はこんなにもキラッキラした目ができるのか。
そして、何故スイーツが先になるのか。
今一番やらなくてはいけないのは検索ではないのか。
二人も立ち上がる。
「何言ってんの!先に調べて、すっきりしてから食べればいいじゃん!」
「そうだよ。早く解決させようぜ」
「すぐ解決するだろうから、食べてからでいいじゃん!」
「いや、でも―」
「たーべーてーかーらーっ!!!」
「高見沢、おま―」
「食べてからなのっ!!!食べたい食べたい食べたーいっ!!」
還暦を過ぎた筋肉男が地団駄を踏む。

そう、高見沢はこんなやつなのだ。

『……も…もーっ!!』
同じく還暦を過ぎた二人もそんな高見沢に地団駄を踏んだ。
薄れたはずの腹立たしさは、すっかり元通りである。
…いや、倍増しているかもしれない。

「ま、まぁまぁ…。高見沢さんがこんなに食べたいと言ってますし、一旦休憩して先に食べましょう?」
「棚瀬!甘やかすなよ!」
「そうだそうだ!」
「でも、このままだと今日の話し合いも終わりませんよ。またお開きになってもいいんですか?」
『う…』
「そうだそうだ!」
高見沢がいつの間にか棚瀬の後ろに回って、棚瀬をガードに使う。
残念ながら、物が飛んでき場合は何の防御にもならない、とても小さな盾だが。
「高見沢!おまえが言うなよ!」
「そうだ!いい歳して、子供みたいなこと言いやがって!!」
「だって、食べたいんだもーん」
「こ、こんのデコ助めっ!」
「うるせー!飲み助!」
「たらこ助!」
「何だよ、それ!変なの!ヒゲ助!」
「奥目助!」
「几帳面助!」
「筋肉バカ助!」
「何をぉ!」
「何だよっ!」

「あ~もぉ~ヤダ。帰りたい」
チビ助…いや、坂崎はプルプル顔を振って、疲れ切ったようにイスに腰を下ろした。

二人が怒る気持ちは棚瀬もよ~く分かるが、これでは話し合いも先に進まないし、このままだと二人が帰ってしまい、用意したスイーツも無駄になってしまう。
何とか二人の怒りを沈めなければと、棚瀬は間に入って笑顔を振り撒いた。
「ま、まぁまぁ、お二人とも落ち着いて。気分転換にもなりますし、休憩して美味しいスイーツを食べましょう?」
「こうなったのは、棚瀬があんなタイミングで入ってくるからだぞ」
棚瀬に当たる坂崎。
だが、これはあながち間違ってはいない。
調べ終わった頃に棚瀬がやってくれば、何ら問題はなかったのだから。
「す、すみません。早く食べていただきたくて…というか、見ていただきたかったので、急いで来てしまいました」
「見る?何をだよ!」
「僕たちが今一番見なきゃいけないのは、検索結果だと思うけど。違う?」
取って食われそうな勢いの桜井と、静かに怒りをぶつけてくる坂崎に言われて、さすがの棚瀬も引き下がりそうになった。
が、今日はダメだ。
今日は何としてもこちらの用意したスイーツを三人に出さなければ。
冷や汗をかきながら、
「…きょ、今日、何の日か覚えていますか?」
と尋ねる。
「はぁ?何だよ、突然」
「そうだよ、今はそんなこと…あれ?…ちょ、ちょっと待って」
「?」
桜井が首を傾げる。
「?」
高見沢も棚瀬の後ろで首を傾げた。
「坂さん、思い出しました?」
「今日って……25日じゃん!」
「25日だから何…あ」
桜井も思い出したようだ。
「…25日?25日…8月25日……あ」
高見沢も思い出した。

三人がポカンとして、顔を見合わせた。

すると、棚瀬がドアを開けて、
「お願いします」
と誰かに声をかけた。
現れたのは、白い服を着たパティシエと思われる男性が二人。
「失礼いたします」
一礼して部屋へと入ってくると、大きめの四角いケーキをテーブルの上にそっと置いた。
三人が目の前のケーキに釘付けになる。
そこには、三人の似顔絵が描かれ、数字の形をしたロウソクの4と1が立っている。
『これ…』
パティシエ二人の隣に棚瀬が立ち、三人と向き合った。
「41回目のお誕生日、おめでとうございます。と言っても、みなさんすっかり忘れていたみたいですけどね?」
フフフ、と棚瀬に笑われて、三人はものすごく恥ずかしくなった。
今日がデビュー記念日だなんて、誰一人気づいていなかったし、数分前までのあのケンカとも言い難い馬鹿馬鹿しい言い合い。
何をしてるんだと自分たちにツッコミを入れたくなる。
穴があったら入りたい気分だ。

「二人を呼び出すことばっかり考えてて、すっかり忘れてたよ…」
「俺も。ここに来ることしか頭になかったから…そうか、今日はデビュー記念日だったのか」
「ってことは、あの武道館でのお祝いセレモニーから、もう一年経つわけだね」
「そうだ、そういうことか!」
「うわ、一年早いなぁ!」
「早いねぇ」
「25日が三人ともお休みだったので、きっと集まることになるだろうと、こちらのパティシエさんにお願いしてたんですよ」
「気に入っていただけたら、うれしいです。内緒だということだったので、こちらも楽しく、そしてドキドキしながら作らせていただきました」
そう言ってパティシエの一人がにっこり微笑んだ。
「素敵なケーキを作ってくださって、ありがとうございます。似顔絵、似てますねぇ」
棚瀬に言われ、三人が改めてケーキを眺める。
「うん、似てる。すごいな」
高見沢がそう言うと、二人も頷いた。
「ほら、三人の鼻とか口元、そっくり」
「目元も似てるな」
「うん、似てる似てる」
「ありがとうございます」
「さぁ、ロウソクに火を点けましょう」
「え、そこまでやんの?」
「今日はいいんじゃないの、ライブじゃないんだし」
「そうだよ、別にそこまでやらなくても…」
「何を言ってるんですか!記念すべき日なんですよ!やります!」
棚瀬が力強く頷き、ロウソクに火が灯った。
「それでは…」

ハッピーバースデートゥーユー
ハッピーバースデートゥーユー
ハッピーバースデーディア アルフィー!!
ハッピーバースデートゥーユー

「さぁ!みなさんで消してください!」

ここまでされたら、消さないわけにはいかない。
先ほどまで言い合いをしていた三人が、仲良くケーキに顔を寄せた。
「行くぞ」
『うん。』
高見沢の声に二人が頷く。
「せーの!」
『フーッ』

「わー!おめでとうございますー!」
棚瀬とパティシエたちが笑顔で拍手する。

ものすごく照れくさい瞬間だ。
けれど、ものすごくうれしい瞬間でもある。

三人は自然と笑顔になった。

パティシエにキレイにカットしてもらい、お皿には、それぞれ自分の似顔絵部分がやってきた。
「自分は自分が責任を持って食べるってわけか」
「そういうことだね」
「食べるのもったいないなぁ…って、高見沢もう食べてる!」
「早っ!」
「ん…んんっ!んまい!」
「お、じゃあ僕も。いただきます。…うん、美味しいね。そんなに甘くないから、これならパクパクいける」
「本当だ。クリーム美味いなぁ!」
そんな三人の様子に、パティシエたちも満足そうな笑みを浮かべていた。


パティシエたちを見送った棚瀬が部屋に戻ってくると、三人が先ほどとは打って変わって、ケーキを食べながら楽しげに話をしていた。
あの言い合いが嘘のようだった。
「あの時さぁ、二人が一緒になって転んでくれたじゃん?転んだ恥ずかしさが笑いに変わって、俺、すごい救われたんだよね。ああ、三人でよかった!って思ったんだよ」
「そういうこと、色々あるよな。声出ないなって時に、さりげなく入ってきてくれたり」
「もし一人が調子悪くても、二人がフォローできるもんね。三人である強みだよね」
『そうそう!』
「一人だったら、ここまでやってきてないよな」
「うん、無理」
「何言ってんの。俺は絶対無理だけどさ、坂崎と高見沢は一人でもやれるでしょ」
「無理だよ。二人がいるから今のソロ活動とか、他の仕事もできるのであって、いなかったらとっくの昔に辞めてるって」
「そうだね。僕もフォークの仕事とか色々あるけど、それはアルフィーがあるからこそ、なんだよね。アルフィーのおかげで今の仕事があるわけだから、もしアルフィーがなかったら、僕もすぐに諦めてただの熱帯魚屋やってるよ」
「やっぱりさぁ、アルフィーの元祖、桜井がいてくれたからだよな」
「うん、やっぱりそこに行きつくよね」
「え、俺?」
「そう。桜井がいたから、俺たちは今も頑張れてるんだよ」
「うんうん」
「…な、なんだよ、やめろよ、そういうこと言うの」
「あ、照れてる!」
「本当だ!」
「バ、バカッ!照れてねぇよ!」
「じゃあ、この赤いほっぺはなんですかねー」
「おやー?何か耳が赤くないですかー?」
「こら、触るなって!…バカ!やめろって!」


棚瀬の入る隙間がなさそうなので、邪魔をしないように静かに部屋を出た。
音を立てて出たとしても、気づきもしないと思うのだが。

時計を確認すると、あと一時間もすれば坂崎が仕事へ行く時間になっていた。
高見沢も、その数時間後には仕事だ。

あの様子だと、今日はこれでお開きになりそうだ。
ネットで検索できたとしても、即解決!とは行かないだろう。

四回目は秋ツアー中になるだろうか。
棚瀬はスーツの内ポケットから手帳を取り出した。

10月か…11月か…
手帳をめくりながら、棚瀬が呟く。

「さて…次はどういう作戦で妨害するかな…」


ファン以上に”わちゃわちゃ”を楽しんでいる棚瀬なのであった。



おわり
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今回は、アルフィーのお誕生日のお祝いもかねて、わちゃわちゃして
もらいました♪

41回目のお誕生日、おめでとうございま~す!(*^^*)

なんと、ろきさんがこの”わちゃわちゃ”をイラストにしてくれました~♪
そうそう、こんな感じ!w
でも、棚瀬さんがやけに男前なのが気にかかるw
そしてイラストの中のセリフでもわちゃわちゃしてるよ~(*^m^*)
可愛いイラストありがとう~!


2015.8.25

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