06年4月29日
忘れられつつある「クルマの面白さ」



つて、スペシャリティというカテゴリーがクルマには存在していた。
幼い頃に憧れたクルマ、一時期は若者のデートカーとまでいわれたクルマ「スポーツカー」が
今存続危機といわれている。
ミニバンの流行や、ガソリン価格の高騰に伴う低燃費なコンパクトカーへの関心などがスポーツ
カー減少の大きな要因になっているといえる。
年々クルマを選ぶ基準が実用性にシフトされてきたことは確かに否めない。
今や、女性の観点でも自分で運転したいクルマはコンパクトクラス、彼氏に運転して欲しい
クルマはミニバンもしくはLクラスセダンといい、スペシャリティは女性にも嫌われた存在に
までなってしまっているようだ。
各自動車メーカーとも、この2つのカテゴリーに特に力を入れており、スペシャリティはというと、
トヨタはセリカの生産中止が発表され、日産もシルビアが既に生産中止、ホンダもインテグラの
生産中止など、もはや壊滅状態に近い。
以前ラジオを聴いていて、元レーシングドライバーの土屋圭市氏の「この国はスポーツカーに
見放されている」というコメントからも、この傾向はうかがえてくる。
そもそも、スポーツカーの減少傾向をユーザーはどう思っているのか。そこでTPHではビジター
対象に公開アンケートを実施した。
まず、「スポーツカーの減少傾向をどう思うか」については、時代の流れによるものという回答は
見られたものの、半分以上の回答は「寂しい、残念だ」という、カテゴリー崩壊を惜しむ声だった。
「スポーツカーはどんな存在か」については、次のコメントが寄せられた。

・セカンドカーとして週末に乗りたい
・自分を見つめなおせる空間
・日常から非日常へのスイッチ など

その他に寄せられたコメントをいくつか紹介する。

・高価で買えないハイパワーなクルマは存在するが、そのようなクルマを
 満足に扱える人はこの世に何人いることだろう
・実用性に劣るとはいえ、少なくともニーズがあることは確か

次に、「復活して欲しいクルマは何か」については、下の円グラフのような結果になった。



あえて10車種近くのノミネートを挙げたが、特に偏りなどなく、どのクルマにおいても復活を
願うファンは必ず存在することがうかがえてくる。
また、ライトウェイトクラス(特に1,600cc)の復活を切実に願う意見が非常に多い。
「スポーツカー=ハイパワーで高価な2ドア」という考え方もあるのかもしれないが、自分と
してはこれをイコールだとは思わない。「手ごろな金額で楽しめる、ワクワクできる2ドア」でも
十分スポーツカーといえると思うのである。このようなクルマの復活が確かに望まれているのである。
また、FR復活の声も少なくない。今や2,000cc以下のクラスはFF主流であり、FRは皆無。本当にFRに
こだわると、必然と大排気量のクルマしか選択肢に残らなくなってしまっているのも寂しい限りである。
自動車メーカーとしては、一企業として利益を出さなければならない。そのためには、スポーツ
カーなど売れないから廃止するということも理解できないわけではないが、もしもスポーツカー
というカテゴリーが完全に滅びたら、「クルマの面白さ」が忘れられてしまう、面白い車とは何か、
ワクワクするクルマとは何かがわからなくなってしまう、走りを忘れたユーザーが増加して
しまうことが懸念される。クルマを選ぶ基準は「乗っていていかに面白いか」と考える
自分にとっては、このような傾向が今後一層進んでしまうのは正直残念である。
先に、団塊世代が定年を迎えるにあたって、セダン需要は復活するとのコラムを書いたが、
「昔に戻りたい」とスペシャリティを選択するユーザーも、もしかしたら増えるのかもしれない。
クルマ好きなら、走りへの情熱を、クルマの面白さを忘れないでほしいと願いたい。
今回のこのコラムでは、そのような結論に達した。
公開アンケートに回答していただいた皆様に感謝したい。



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