で、さっそく次の日、トレーニング終わりにロックバイソンを飲みに誘ったわけだが……。

「おい、虎徹。お前、禁酒なんだろ?」
「は?」

待合室で汗を拭っていながら指摘してくるロックバイソンを 俺は思わずきょとんっと見つめてしまった。

「禁酒って……」
「ん?バーナビーがそう言っていたんだが違うのか?」
「バ、バニーがそう言ったのか?」

身を乗り出して聞くとああ、とロックバイソンが頷いた。

「お前の健康を考えてくれるなんて良い相棒を持ったな」
「えっ!?違う!それはちっがーう!!」

ぶんぶん頭を振って否定する。
あいつー!!

「素晴らしい!実に素晴らしい!!」

感動した声が聞こえてその方へ向くとスカイハイがニッコリとスマイルを浮かべている。
まさかバニー、スカイハイにも?
おそるおそる聞いてみる。

「俺が禁酒するとか訳の分からない事をバニーから言われたか?」
「ああ、先程ね。何と言う仲間想い!」

両手を上げてから胸の前で交差させるスカイハイ。
この分だと他のみんなにも言っている可能性が高い。
ま、俺は禁酒なんてしないけどな!

「じゃ、飲みに行くぞ」

ロックバイソンの肩を叩いて促すと禁酒だろと止められる。

「いいんだよ。あんなの勝手にバニーが言っているだけだ」
「でもな……誘いには絶対に乗るなって言われているしな」

チッと舌打ちして無理矢理ロックバイソンを引っ張っていく。

「お、おい」
「うるせ。いいから来い」

振り返りスカイハイも誘うと夜のパトロールがあるからと断られた。
スカイハイと別れ、まだ禁酒がどうのこうのと言ってくるロックバイソン を引きずっていつものバーへと直行しようとした……のだったが。
待合室の出入り口の自動ドアが開いた途端、俺は胃の底から潰れた声を出す事になった。

「ぐげぇっ!」
「なにが、ぐげぇっですか」

まるで俺の監視者のように腕を組みメガネを光らせるバニーが待ち構えていた。
絶対に分かっているはずなのにあえて聞いて来る。

「虎徹さん、どこに行くんですか?」
「え、あ?」
「ロックバイソンさんとどこに行くんですか?」
「…ぅ」

返答に詰まっていると後ろからそれは明るい元気な声で風を操っても空気が読めない 男が俺の代わりに答えてくれた。

「ワイルド君は飲みに行くそうだよ」
「スカイハーイ!!」

俺が咄嗟に名前を叫ぶと言った本人に爽やかな笑みを向けられた。
こいつホントに何も分かってない。
心の中でガクリと項垂れているとロックバイソンが腕を突っついて来た。
何だよ、と思って顔を上げるとなぜか顔色を悪くしながら前を見てみろと指を差している。
あ?前?
視線を前に向け……。
メ、メデューサがいるっ!!
髪を逆立てながらものすごく怒気を纏わせているバニーが俺を見据えている。

「あ、の……バニー?」
「禁酒ですって約束しましたよね!?」
「約束?お前が勝手に言いだした事だろ!」
「僕は貴方の為を思って言ってるんですって昨日も言ったのに!」
「だから、俺はどこも身体悪くないし酒癖も悪くねえよ」

どこの誰かさんみたくキスなんかしないしな!
ふんっと鼻から息を吐き出して
ロックバイソンにも同意を求めた。

「おい、俺って酒癖悪くねえだろ?」
「ああ、まあな……。吐くか寝るかだな」

ほらな!
胸を張ってバニーに向き直る。
メガネのブリッジを指で上げたバニーは少し考えた後、分かりましたと答えた。
よっし!
じゃあ、飲みに行くぜと一歩目を踏み出したらガシッとバニーに肩を掴まれた。

「何だよ」
「あなたが飲む相手はロックバイソンさんではありません。僕です」
「……は?」
「言って分かってくれないのなら実際に見てもらいます」
「ちょ、ちょっとー!?」

バニーに引っ張られロックバイソンとスカイハイに助けを求めるが二人揃って手を振られた。
こいつらっ!




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