後編




こんな所でどうしたの?
二人は知り合いなの?

軽く話し掛ければいいのに俺はそれが出来なかった。
二人は顔を近づけてこそこそと笑い合いながら話しをしている。
それはまるで恋人同士のような。
途切れ途切れ会話が聞こえてきた。

「…式の日取り…そうね……かしら……」
「俺の家に……そう…」
「…約束よ」
「分かって……」

俺の足が底なし沼のように地面にズブズブと埋もれて行くような感覚に
陥った。
取り巻く不安が認めたくない事実を俺に伝える。
…いつから二人は付き合っていたのだろう?
そんな気配はしなかったのに。
俺がバイトに入ったくらいから緒方さんがルーナ・クワナに来ている。
いや、もしかしたらそれより前かもしれない。

「ああ、そうか…」

緒方さんがいつもレモンチーズタルトを買う理由。
それは恋人が作った得意なケーキだからだ。
昨日、俺の事心配したのも清音の従弟だと知っていたからだろうか。
家に泊めたのも俺が体調を崩して休むことで清音に負担がかからない
ようにするためだったのだろうか。

「ちょっと、りっくんどうしたの!?」

店の前のシャッターを閉めようとしていた茜が俺を見て驚いた声を
上げる。
ぼんやりしていた俺はいつの間にか店の入口に来ていたみたいだ。
おろおろした茜が俺の傍まで来る。

「ねぇ、どうしたの?どこか痛いの?」

痛い?
うん、胸が張り裂けそうに痛いんだ…。
ポタッと地面に水滴が落ちた。
溢れる涙は頬を濡らして落下していく。
地面に吸い込んでいく涙を見つめながら俺が緒方さんに恋していた
事に ようやく気付いた。
そして同時に失恋も決定した。
俺は袖で涙を拭って茜に大丈夫と一言告げて早足で店の中に入った。
こんな顔を人には見せられないので従業員専用トイレに入り便座の
蓋の上に座った。
滅多に泣く事なんて無いが泣き始めたら最後涙が枯れるまで出続ける
という難儀な特技を持っている。
トイレットペーパーを巻き取って涙が出終わるのを待つが今の感情に
相乗している涙はとどまることを 知らない。

「―…うっ、…くっ」

嗚咽まででる始末。
最初から報われない恋だったのか。
緒方さんは男で俺も男で…。
緒方さんと清音は恋人同士で。
さっき式がどうのとか言っていたからもしかしたら近いうち結婚する
かもしれない。
考えていたら涙が滝のように流れてくる。
トイレットペーパーがぐっしょりと濡れてしまった。
ぐすっと鼻を啜っていると。
ダンダンダンッと大きなノックがした。

「山平君っ!大丈夫か!?」

この声は緒方さん!

「陸斗、どこか痛いの!?」

これは清音!

「りっくーん!!」

茜まで!

「山平君とにかくここを開けてくれないか」

焦った声の緒方さんに言われたがこんなぐしゃぐしゃの顔でみんなの
前に現れるなんて絶対無理っ。
それに今こうやって緒方さんの声を聞いただけで涙がジワリと出て
くるのに顔を見たら涙腺が崩壊する。

「だ、大丈夫、ですっ」

鼻声になってしまったが言葉にはなっていたと思う。
しかし、ダンッともう一度強くドアを叩く音がしていつもの緒方さんの
柔らかくて優しい声ではなく聞いた事もない低く恐ろしい声で、
開けなさいと言った。
俺は恐怖でビシッとその場で固まった。
開ける気がないと判断した緒方さんはドアノブをガチャっと回しその
まま引っ張った。


ーバキッ!!!


「!!!?」

そんなに簡単にドアって外れるのですか!?
鍵を壊して中に緒方さんが入ってきた。
俺は顔を未だに出続ける涙を見られたくないので腕で
顔を隠して身体を丸めた。

「救急車呼んだ方がいい?」

トイレを覗きこんできた茜が緒方さんに問いかける。
きゅ、救急車って!?
俺は病人じゃないんですけど!

「いや、救急車を呼ぶよりも車で直接行った方が早い。俺が連れて
行きます。車を貸して貰えませんか?」
「じゃあ、私の車を使って」

清音が緒方さんにキーを渡す。
え、どうしよう。
このままだと健康な俺が病院に連れていかれる。
診断:失恋による情緒不安定です、なんて笑えない!
俺は緒方さんの顔を見ずスーツの袖を引っ張った。

「お、緒方さっ、俺、俺っ」

どこも悪くないんですと続けようとした言葉はスーツの袖を引っ張って
いる手に緒方さんの手が重なった 事で驚いて飲み込んでしまった。

「大丈夫、すぐ連れて行くから」

そう言うのと同時に抱き上げられた。
ええーーーーっ!!
小柄でもなく体重も軽くはなく人並にあるのにそんな俺を簡単に運んで
行く。
振り払う事も出来ずにただ、皆に泣き顔を見られたくない俺は手で顔を 隠す事で精一杯だった。
店の横にある駐車場に止めてある車の後部座席に俺は入れられて、
緒方さんが運転席に入り車を出そうとしたとき車の外からオーナーの
久和名さんの声が聞こえてきた。

「一体、何の騒ぎだ?」

30代後半の久和名さんは無口であまり笑わないが本当は優しくて
必要な 時に必要な言葉をくれる 尊敬できる人なのだ。

「雅貴くん、先に行ってくれる?後ですぐ行くから」

緒方さんが清音にそう言われて言葉を交わし車を出した。
動き出した車の窓を指の隙間から見れば久和名さんに清音が何か
話して いるのと心配そうにこっちを見てくる茜の姿があった。
何でこんな騒ぎになったんだろうか…。
とりあえず病院行きは阻止しないと。
少し走った後、車が信号で停止する。
俺を急いで病院に行かせたい緒方さんは焦っているのかハンドルを
トントンと 指で叩いていた。
俺はモソッと起き上る。

「あの…」
「着くまで横になってなさい」
「大丈夫です、俺どこも悪くないんで…」

ミラー越しに俺を見ていた緒方さんが振り返る。
無言のままジッと見られその視線に耐えられなくなって下を向いた。

「胸を押さえながら苦しそうに泣いていたと沢井さんに聞いていたが」

茜が緒方さんに言ったのか!

「それは違うんです、その…」
「昨日も様子がおかしかったから体調が悪化たのかと心配して君を
探して みたら」

緒方さんの手が俺の顔に伸びてきて長い指が目じりを拭う。

「泣いていたね」
「…あっ」
「どこも悪くなかったらどうして泣いていたんだい?」

どうして?
それは、それは…。
また底を突きたと思っていた涙が出てくる気配がして瞬きをした。
俺は無理矢理あははっと笑った。

「笑わないで下さいね。俺失恋しちゃってー」
「…失恋?」

緒方さんが驚いた顔をした。
しかし次には真剣な顔になり誰?と聞いてきた。
もちろんあなたですとは言えず。

「最初は好奇心と憧れでずっと見ていたんですけど、どうやら俺その人
の事好きだった事に気付いて…でも気付いたとたんにそれは絶対に
叶わない恋だったんです」
「なぜ?」
「その人恋人がいて、もうすぐ結婚するんです」
「ずっと見ていたって事は近くにいる人?」

そうです今俺の目の前にいる人です。
俺は曖昧に笑った。
緒方さんは難しい顔つきになり伏せていた目を俺に向けた。

「止めなさい。その人の事は」
「え…」
「君にはもっとふさわしい人物がいるから」

ポロリと涙が落ちた。
あなたがそれを言うのですか。
あなたにそんな事を言われたら俺は。
再び流れ始めた涙は底を尽きるまでまだ十分な量があるようだ。

「す、すみま、せん。女々しく、て」

膝に埋もれるようにして顔を隠した。
信号が青に変わり車が走り出す。
お互い無言のままでしばらく車が走りそして止まった。

「降りて」
「ここはどこですか?」
「俺のマンションの駐車場」
「えっ」
「車の中じゃ落ち着けないだろう?かといってお店に戻っても言い
づらいと 思ってね」
「あ、はい。すいません」

俺はまた緒方さんの家にお邪魔する事になった。
考えてみれば昨日は幸せだったな。
洗面所を借りて自分の顔を見てみれば目が赤く瞼も腫れぼったい。
うわっこんな顔じゃ接客なんて出来ないよ。
リビングに戻ると緒形さんの姿はなく俺はソファーに座って昨日と同じ
クッションを抱えた。
そして一度ある事は二度あるらしい。
心身が疲れ果てていた俺は昨日と同じ過ちを犯した。

夢と現実の狭間を漂っていると緒方さんが俺の目の前に現れた。
俺を見つけると嬉しそうに笑って傍まで来る。
俺の頬を優しく撫でた後、その場所に優しいキスをした。
驚いて声を出してしまったけど嬉しかった。
また緒方さんが俺の顔に何度もキスを落とす。
俺はまだ足りなくてもっとして欲しくて“もっと”とおねだりした。
夢の中なのだからいいよね。
すると緒方さんは俺を苦しいくらいに抱きしめ、額、頬、鼻にキスを
して行き、そして…唇に。
わーーーーっ!!
ふわりとした甘いキスだった。
幸せ一杯でこのまま夢が覚めないで欲しいと願ったが無情にも意識が
はっきりしてきて覚醒する。

ぼんやりとした視界に何かが映る。
それは緒方さんのドアップの美しい顔。
自分の唇に触れられている感触。
キスしてる…。
俺緒方さんと今…キスしてる。
やがてゆっくりと緒方さんの顔が離れていきほほ笑まれた。
我に返った俺はソファーの端までズザザーっと移動するとまだ
感触の残って いる口元を手で覆う。
緒方さんが掛けてくれたと思われるブランケットが下に落ちた。
どこから夢でどこからが現実で一体何が起きたんだかそれを理解
した方がいいのかとにかく思考回路が混乱している頭ではまともに
考えられなかった。

「ねぇ、誰の夢を見たの?」
「えっ…」
「好きな人の夢を見ていたんだよね?」

なぜそんな事を言ってくるのか分からずしかも緒方さんの言う通り
実際好きな人の夢を見ていたからますます返答に窮した。
そんな俺の傍に緒方さんが寄ってくるとソファーの背もたれに手をつき
俺に 覆いかぶさるように 見下ろしてくる。
俺はビクビクしながら緒方さんを見上げた。

「俺の予想だけど…山平君の好きな人って、もしかして男の人?」

ドックンと心臓が跳ね上がった。
その後もドクドクと心臓が早鳴る。
俺は黙っていたけど緒方さんは頷きそうなんだねと言った。
どうしよう、嫌われる?軽蔑される?
まともに緒方さんを見れなくて俯いてしまった。
不安のあまり手で顔を覆って気付く。

さっき俺にキスしていなかったか…?

「誰って聞いても教えてはくれないのかな?」

頭上から聞こえてくる質問にコクッと小さく頷いた。
すると小さく溜息が聞こえてくる。

「もう一度言うけれどその人の事は諦めなさい。ああ、男だからとか
そう言う理由じゃないからね」
「…っ、分かってます。でも、でも」
「思いを告げても君を振り返ってくれる事はないよ」

ああ、喉の奥が苦しいくらいに痛くなる。
痛くて痛くてうまく呼吸すらも出来ない。
どうしてそんな事を言うの。
俺は、俺は…それでも、あなたの事。

「す、好きなんです!振り返ってもらえない事なんて分かってます!
それでも好きなんです!」

視界の半分は涙にぼやけて見えなかったけど俺は緒方さんをまっすぐ
見て 叫んだ。
そう、緒方さんに告白するように。
そんな俺を緒方さんは怒りの籠った瞳で見下ろしている。
俺は緒方さんが口を開く前に自分自身で終わらせることにした。

「でも、俺、諦めます。今はまだ無理だけど、努力しますっ」

ポロポロと涙が頬を伝う。
凄いな…俺の中に涙がこんなにもあったなんて。

「俺…あなたの事、緒方さんの事諦めます。どうか幸せになって
下さい」

うまく笑えただろうか。
涙は零れなかっただろうか。
緒方さんは大きく目を見開いた。
これで俺が好きな相手が誰だか分かっただろう。
否、緒方さんなら気付いていたかもしれない。
俺はソファーから立ち上がった。

「さようなら」

頭を下げてその場を去るために駆け足で玄関に向かった。
急いで靴を引っ掛けてドアを開けようとしたがそれは叶わなかった。
なぜなら緒方さんが俺の後ろから引っ張るように抱きついたからだ。
バランスを崩した俺は片足だけ靴を引っ掛けその場に尻をついたが
背中にぬくもりがあり身体に腕が回され離させないとばかりにギュウッ
と 力を入れられている。
少しでも動くと腕の締め付ける力が強くなる。

「緒方さん…?」
「もう一度言ってくれないか」
「え?」
「君の好きな人の名を」

耳元で囁かれフルッと身体が震える。
もう一度、と懇願されて掠れてしまった声で伝えた。

「俺が、俺の好きな人は緒方さんです」

言い終わると同時に身体を正面に向けられて真剣な目をした
緒方さんと 目が合った。

「君が好きな人は久和名氏ではなかったのか?」
「…へっ?」

何でオーナーの名前が出てくるんだ?
ポカーンと口を開けてしまった。

「いや、いいんだ。俺の勘違いの様だ。そうか」

いつもの様に優しい目をした緒方さんがフッと笑う。

「俺たちは両想いだったんだな」
「りょっ?」

両想い!?
え?えええ?
という事は緒方さんも俺の事好きって事?
でもそれはありえないよ!
だって緒方さんは清音と結婚するんだよ。
そう言ったら不機嫌な顔になってしまった。

「どうしたら俺と清音さんが結婚する話しになるんだい?」
「だって!」
「だって?」

俺はしどろもどろになりながら店の裏口で聞いてしまった話をした。
それを聞いた緒方さんはなるほどと大きく溜息を吐いた。

「勘違いをしてしまったみたいだけど清音さんと結婚するのは俺じゃ
なくて 久和名氏だよ」
「ええーーーーー!!」
「もしかして二人が恋人同士だって事、知らなかったのか?」
「何で緒方さんは知っているんですかぁ!?お客さんなのに!」
「清音さんとは昔からの知り合いでね。俺の姉が清音さんの高校の
時の後輩なんだ。いつも俺が君にケーキのリクエストをするのは その姉の我儘でね、こんなのが食べたいって言ってくるからなんだ」
「え、じゃあレモンチーズタルトは?いつも注文するのはなぜですか?」

緒方さんは逡巡の後、両想いだしいいよねと呟いた。
両想い…その言葉に俺の顔が赤くなる。

「君は覚えていないだろうけど俺たちは山平君がルーナ・クワナに
バイトする 前から会っているんだよ」

え?
マジですか!?
覚えてない…。

「どこで会いましたか?」
「ルーナ・クワナで。まだ山平君が高校生の時に。姉が憧れている
先輩がケーキを作っているという情報を知ってね俺に買ってこいって
言って来たんだ。
しかたなくその店に行ったんだけど入ってみればたくさんのケーキが
あってどれにしたら良いか迷っていたんだよ。そしたら君が」
「俺?」
「そう。これがお薦めですよって。レモンチーズタルトを幸せな顔を
してどんだけ おいしいか 説明してくれたんだ」
「そんな事したんですか…」

客の分際で何やってんだ当時の俺!

「実は甘いものが少し苦手でね、姉の分だけ買っていこうと思っていた
んだけど 君の顔を見たら 食べたくなってしまって買ったんだ」
「おいしかったですか?」
「ああ、甘すぎず爽やかな味でおいしかったよ。でも、その日から
どうしてか君の事ばかり考えてしまっていてね。ある日友人ににそれは
恋しているんじゃないのかって言われてまさかと思ったけどそれと同時
に心がストンって落ち着いたんだ」

緒方さんはクスッと笑って俺を引き寄せて抱き締めた。

「でも君がどこの誰だか分からなくてね。店に行っても会える保証は
ないし。
ある日店で清音さんに聞いてみたんだ。
そしたら清音さんの従弟だっていうじゃないか。
でも色々君の事聞いているうちに怪しまれてしまって白状したんだ」
「え?清音は知っているんですか!?」
「ああ。驚いていたけど偏見を持たない人だから。あの時君は大学
受験で大切な時期だったから想いを伝えるのはそれが終わってからと
清音さんと約束をして君がバイトを始めた時に会いに行ったんだ」

そう、俺は緒方さんが店に来た時の事を覚えている。
お客さんはたくさんいるのにまるでそこには緒方さんしかいないかの
ように 目立っていた。
だけれどあの西洋造りの素朴でおしゃれな店にはしっくり緒方さんが
当て はまって存在していた。

「何でその時俺と会った事言ってくれなかったんですか?」

俺の問いに緒方さんは困ったように笑った。

「バイトの邪魔はしない事って清音さんと約束されていて…」
「清音の奴〜」
「清音さんは心配だったんだよ。君はバイト始めた頃だったし」

まあ、確かに前は仕事覚えるのに必死で結構余裕がなかったしな。

「だから俺の顔を覚えてもらうために何回も店に行ったんだ」

君がバイトしている日にねとウインク付きで言われて俺は思わず
緒方さんの肩口に 顔を埋めた。
うわわー、なんだろすごく嬉しいというか恥ずかしいというか。
そんな俺の頭を優しく撫でる。

「レモンチーズタルトを毎回買って行った理由って…」
「そのタルトは君と出会ったきっかけでもあるから」

緒方さんは唇を寄せて俺の耳元で甘く囁いた。

「君を思い出すんだ」

俺はもうバシューっと空気が抜けてヘロヘロの状態だった。
こんな大人の色香に当てられて限界です。
フフッと緒方さんが笑う。

「沢井さんには感謝だな」
「茜…?」

何で茜の名前が出てくるんだろう?

「俺が君の事を好きだって沢井さんにもバレてしまってね」
「え!?」
「そうしたら彼女、協力してくれたんだ」
「茜が!?」
「ポイントカードを作るというのも彼女の案なんだ」

もしかして俺に緒方さんの名前を教える為に?
おい茜、いいのか。
店を巻き込んで。

「それにあの雨の日も」
「まさか」

まさか、あの日駅前で偶然の緒方さんとの出会いは茜によるもの
だったのか!

「でも君とこうしていられるのが奇跡のように感じられるよ」
「俺もまさか緒方さんとこうなるなんて」

俺はギュウッと緒方さんに抱きついた。
緒方さんが俺の顔を上げさせた。

「陸斗くん、赤くて甘いケーキが食べたいな」

緒方さんの突然のリクエストに俺はうーんと考える。
そんな俺を笑って緒方さんの人差し指が俺の唇にそっと触れる。

「頂けますか?」

俺の顔が一気に赤くなり声がまともに出ない。

「……はい」

聞こえないくらい小さい声しか出なかった。
でも緒方さんは聞こえていたらしい。
クスクスっと笑った。
そしてゆっくりと唇が重なり合う。

清音達が心配しているかもしれないけど今はまだ…このままで。







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