No.303

オーロラの彼方へ

2001.6.28掲載

珍しくオットが「観たい映画がある」と言い
出した。しかも、劇場に足を運ぶという。
だけど、あまり話題の映画ではなさそうだ
った。よくよく訊いてみてその訳が分かっ
た。「無線」が出てくるのだそうだ。オットの
趣味のひとつはアマチュア無線なのだ。
なんだ、それだけのことなんだ・・・と思った
が、滅多にないことなので、オットが乗り気
な時はなんでもついていこう、というのが
私の生活信条なので、その程度の気持ち
で、ふたりともさして期待もせずに観に行っ
た。

だいたいのストーリーは聞いていた。オー
ロラの現れた夜、亡くなった父親と無線で
繋がるという話だった。息子から見たら、
父親のいるところは『過去』で、父親から見
たら、息子のいるところは『未来』だった。
父親は、まだなくなる数日前の父親だった。
当然、過去に起こったことを知っている息
子は、父親が何とか死なずに済むように
アドバイスをした。半信半疑の父親だった
が、息子、と名乗る若い男の言ったことで
命拾いをしたことから、過去の運命が変わ
ってゆく。

ゆっくり観られるヒューマンものと思ってい
たら、大間違いだった。いきなりから、かな
りスピーディーに展開していき、そして、ハ
ラハラ・ドキドキのし通しだった。こんなは
ずではなかったので、心臓の準備が出来
ておらず、どきどき胸が苦しかった。とにか
く、初っぱなから終わりまで、ずっとそんな
カンジで、心臓の小さいワタシはタイヘンだ
った。それならそうと予め知らせて欲しかっ
た。

そのドキドキする合間にも、現実には死に
別れている父親と息子の、無線を通して
交わされる絆や愛情が切なくて、また、あっ
たかくて、じわじわと涙が出た。互いが、こ
の交信相手が間違いなく「息子だ」「親父だ」
と確信が持てたとき、「逢いたかった」と言
ったそのセリフにぐっと来た。ワタシも、出
来ることなら両親にこうして逢えたら・・・と
思うと、涙が止まらなかった。思わず、ニュ
ーヨークへ行って、オーロラの出てる日に
交信してみようかと思ったくらいだ。

物語の展開は内緒にしておくが、見かけに
寄らず・・・と言っては、とっても失礼だけど
本当にいい映画だった。お涙ちょうだいも
のが苦手の人にも、サスペンスとして楽し
める作品だと思う。オットもワタシもお気に
入りで、もう1度観たいと思っている。今度
はドキドキの準備は大丈夫なはずだから。





                      (ま)

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