No.205

夏の庭

湯本香樹実

2001.9.7掲載

ひょんなことから「人が死ぬところを見てみたい」
と思った”ボク”達3人は、候補に挙がったひとり
暮らしの、もうすぐ死にそうに見えるおじいさんの
観察を始める。毎日学校の帰りに塀から様子を
窺うボク達。ところが、おじいさんは死ぬどころか
だんだん元気になっていくのだった。そんな3人
の少年達とおじいさんの交流を描いたお話。

ワタシがどうやら”じじコン”(おじいちゃんコンプレ
ックス)らしいというのは認める。おじいちゃんに
はなぜか弱いのだ。そういえば、『霞町物語』の
おじいちゃんにもぞっこんだった(笑)。

それは、もしかしたら、ワタシが物心着いた頃に
はすでにもう「おじいちゃん」て呼べる存在がいな
かったからかもしれないけど、とにかく、おじいち
ゃんが好きなことは確かだ。

だからなのかもしれないのだけど、この本はワタ
シのツボをことごとくくすぐってくれた。笑ったり泣
いたり・・・すごくなつかしい、あったかい気持ちに
させてくれた。

それに、何よりこの作者の表現のまろやかさにう
っとりと・・・そう、もう文字通り骨抜きにされてしま
った。まるで詩を読んでいるような美しい文章。つ
い何度でも読みたくなる。

中でもワタシが一番好きなところは・・・好きなとこ
ろはいっぱいあるけど、種屋さんでのシーンだ。
これを読んだ後は、なにか種を蒔きたくなってし
まった。きっと、作者も植物が好きなのだろうな。

そして、この本は、人生においてとてもとても大事
なことをとても分かり易く”ボク”に、少年達に語ら
せている。実は、児童文学らしいというのは、図
書館で借りるときの、この本の”居場所”で気付い
たのだけど・・・。

ワタシの大好きなたいせつな本になりました。
きっと、友達にもプレゼントするだろうと思います。
今、夏のおわりに読むのにちょうどいいかもしれ
ません。





                          (ま)

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