No.202

霞町物語

浅田次郎

2001.4.9掲載

浅田次郎の作品を読んだのは「鉄道員」が
初めてだった。それ以来すっかり虜になって
しまい、図書館で見つけては少しずつ読んで
いる。図書館で借りて、感動して、そして文庫
になった広告を見たら買わずにいられなくな
ってしまうのだ。本当はハードカバーで持って
いたいのだが、場所も食うし、お金もかかる。
だから、文庫なのだ。「鉄道員」の方は今、押
しつけ貸し出し中なので、またの機会にしよう
と思う。

この作品はー浅田次郎が初めて書いた、自
身の甘くせつなくほろ苦い生活ー
と書いてあ
る。
彼が若い季節の恋や友情や家族のこと。中
でも、特に私が好きなのは写真館を営む家
族の話だ。おじいちゃんと、婿養子のお父さ
んの師弟関係。おじいちゃんとおばあちゃん
の秘密。少しミステリアスな展開にどきどきす
る場面もあったりするが、とにかく潔くてかっ
こいいのだ。これが江戸っ子っていうものなの
かなと思わせてくれる。そして、あったかい。
私はこの家族が好きだ。おじいちゃんが特に
好きだ。「じじぃ」とか「ばばぁ」と呼び合う言葉
づかいとは裏腹な愛情を感じる。いや、裏腹
なのではなくて、それこそが深い愛情の現れ
なのだろう。
そして、写真師としてのおじいちゃんがこれま
たかっこいい。惚れ惚れする。一方、おばあ
ちゃんも負けず劣らずかっこいい。粋なのだ。
世の中には大見栄張ってこんなにかっこいい
生き方をしている人もいるんだな、と思わされ
た。

このおじいちゃんが、そして、おばあちゃんが
死んだとき、私もあの家族と一緒になってわ
んわん泣いた。だから、私はこの本を手元に
置いておきたいと思ったのだろう。

                        (ま)

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