No121

通勤路の楽しみ

2002.05.10掲載

  電車通勤なので、家から最寄の駅までの道のりを
15分、てくてく歩いている。

そのたった15分だけど、少しはワタシの体力づくりに
役に立っているみたい。初めの頃は駅に着くとすぐに
ベンチに座りたくなったものだけど、近頃は平気だも
の。何もないのに毎日はなかなか歩けないけど、通
勤となるといやでも歩かなければらない。15分ってい
う時間は長くもなく短くもなく、歩くのにちょうどいい、
ちょうど良すぎる時間なのだ。

当たり前だけど、歩くとあったかくなる。今の季節では
それほどありがたみも感じないけれど、冷え性のワタ
シにとっては、あったかい=しあわせ。ちゃんと歩いた
あったかさは、しみじみと足の先まであったかくなって、
それが持続する。真冬に、歩かないで駅まで来た日は
ホームで寒くて凍えそうだったもの。だから、せっかく
のオット母の親心もきっぱり断ってよく歩いた。夏はど
うなるか知らないけれど。。。

それに、その通勤路はよくよく観察してみると、えらく
ワタシ好みだった。ちょっとタイムスリップしたような懐
かしい家並み。その家々の間には舗装されてない緑
色の路地がある。

小さい頃、大阪のがちゃがちゃした所で育ったワタシ
は、よく狭い路地を走り回っていた。そんなワタシに
とってはたまらない路地。そこは、さすがに大阪みた
いに狭くはないけど、ちゃんと向こう側が見える、なん
となく湿っぽい緑色の空間。切り取られた向こう側の
景色もいい。

そして、家の周りじゅうに所狭しと置かれた鉢やプラ
ンターの類。家の前の溝の上の鉄板の上にも。エア
コンの室外機の上にも。灯油のドラム缶の上にも。
庭がないから、もう家の周りじゅういっぱい。だから、
角の家はちょっとお得。角の家の人が植物好きで、
たくさん置けてよかった、よかった・・・なんて思う。

それらをしげしげと眺めてみると、なんでかサボテン
が多いことに気付いた。にょろにょろっとした、うちに
もある白檀や、名前の分らない元気なサボが、プラス
チックの鉢をめりめり割っていっぱい子を吹いている
のがたまらない。あぁ・・・あのはみ出してるのでいい
から、分けてもらえないかなぁ・・・っていっつも思って
しまう。

あの大きいサボはなんだろうって近づいてってみると
素焼きの鉢に立てに入れられたでっかいたわしだった
りもする。もう朝日が昇ってからずいぶん経ってるけど
一応朝日を浴びて逆光なので、シルエットだけ見て絶
対サボだと思ったんだけど・・・全く期待を裏切らない
サボテン通りだなのだ。

それに、サボだけじゃない。大好きな多肉もある。
名前の分らないエケベリアがたくさん、発砲スチロー
ルから踊りだしている。よく見ると、金のなる木とかも
植わっててちょっとした多肉の寄せ植え。この寄せ植
えが、冬の間は見られなくてどれだけさみしかったこ
とか。ワタシの元気の源。きっと大事に中に入れても
らってたのだ。いつも、さっさか歩きながらもしげしげ
とそれらを眺めさせてもらって、いつかこの家の人が
出てきたらお話したいな〜って思う。切に切に思う。

この家は例の角の家。この季節は他にも、こじんまり
とかわいい花がいっぱい咲いてて本当に楽しませて
くれる。これから咲くだろう花も楽しみ。家の前の物干
し竿にかかっている洗濯物を見ると、どうもおばあちゃ
んひとりみたいな感じ。どんなおばあちゃんかなぁ・・・
って想像は膨らむばかり。。。

そんなこんなで駅に着いたら着いたで、電車もまた楽
しい。実は電車通勤は初めて。独身の頃はバスだった。
今から思えば、バスなんて、なんてつまらないんだろう
って思った。

駅員さんはマニュアルどおりに「線路よーっし!」とか
「○○よーっし!」とかって、いちいち指差し確認作業
があるようで、それがちょっと恥ずかしいけどおもしろ
い。ワタシの乗る電車は結構若い駅員さんが多くて、
おっ、やってるやってるって思う。

車内放送もなぜか好きなのだ。大抵本を読んでるか
ら、そんなに真剣に聴いてるわけではないんだけど、
いい声だな〜とか、初々しい声だな〜とか・・・どこど
こには何時に着くのかぁ・・・とか、まぁ、とにかくいろ
いろ。

そして、たかがひと駅だけど、ワタシの貴重な読書タ
イム。これが意外と読めるのだ。あまりにも読めるの
で、もしかしたら、うっかり過ぎてしまったかも・・・って
何度となく顔を上げてはきょろきょろと景色を確認し
てしまう程。その読書タイムの為に、ひと駅でも席を
確保するのに必死の毎日。

電車からは両親が眠っているお墓だって見える。ほ
んの少しの間、本から顔を上げれば・・・だけど。

ホームでぼんやり電車を待ってると、あぁ線路って、
歌じゃないけどほんとにどこまでも続いてるんだなぁ・
・・ってしみじみ思う。そんなワタシの通勤路。

車通勤よりはちょっと時間がかかるけど、そこには
読書タイムやぼーっとする時間、体力づくり(?)や
植物鑑賞の時間も含まれてて実に盛りだくさんなの
だ。





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