No108

「犬が生きる力をくれたー介助犬と人々の物語ー」を読んで

2001.3.25掲載

                                                    大塚敦子  岩波書店

初めこの本を見かけたとき、介助犬を必要としている人と、介助犬との話だと思いました。

それが、読んでいくうちに、介助犬を訓練した人々の再生の話でもあることが分かっていきました。

重罪を犯した女性受刑者が刑務所の中で、介助犬を育てていくというプロセスの中から、得ていったもの。

犬の真っ直ぐな愛情、信頼に支えられて、人生をやり直そうと思えるまでになっていく受刑者の人達。

また、そこで訓練された介助犬によって、

身体にハンディを背負った人の精神的・肉体的な自立がどれほど助けられているかを垣間見ることが出来ました。

しかも、そこで訓練される犬は捨てられていたり、飼い主がなんらかの理由でかえなくなって持ち込まれた

シェルターから引き取られて来た犬なのです。

通常1週間以内に引き取り手が見つからない場合は安楽死という運命が待っています。 

その犬達の再生の物語でもあるのです。 

訓練を終え、ハンディを持った人(引き取り手)と引き合わせるとき、

たいていの犬はその人が何を必要としているのかを瞬時に理解するそうです。

そして、犬がそれまで自分が受けてきた訓練の意味を理解し、体中で誇りを感じているのが解るそうです。

私はこの本を読んで、犬という生き物のひたむきさを改めて思い知らされたと同時に、とったをより愛おしく思いました。

とったにもまた根気よく、何かを教えたくなりました。

初めて飼った犬がとったで「オスワリ」を教えるだけでも途方に暮れ、

「言葉の分からない犬に教えるなんて大変なこと」と思っていたことが、懐かしく思い出されました。

それを介助犬に育てていくのは並大抵なことではないと思います。

だけど、多くの介助犬が育ち、社会で活躍できることを願わずにはいられません。

本のお話はアメリカでの話。日本ではまだまだ盲導犬でさえ、入店を断られたり、乗車を拒否されたりと、

現実は厳しいようです。

もしかしたら、今は健康な自分も何らかの事故に巻き込まれてハンディを背負ってしまうかもしれないのです。

常に相手の立場になって考え、ハンディのある人もない人も共に助け合っていける社会に一日も早く実現していきますように。

                                                 

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