No.107
納豆おんな
2001.3.19掲載
おととい、夢を見た。納豆を食べてる夢だった。 なんとゆう夢・・・『納豆を食べよ』という神様のお告げなのか。 だから、というわけでもないけど、昨日スーパーで18円で売られていた納豆を買ってきた。 じゅ、18円・・・3個パックが18円。1パックあたり6円の計算だ。特価とはいえあまりにも安すぎる。納豆に失礼だ。かわいそう過ぎる。 そう、私は納豆が納豆が大好きなのだ。 私が生まれ育った家庭では、朝ごはんの食卓にはほとんど毎日、といっていいほど、 納豆はなじみのごはんの友だった。 父などは、大根をおろしをかけて辛い納豆を食べる日もあったし、 祖母は「カラダにいいから」とすりおろしにんじんを混ぜて食べていた。 その時はあまりにも身近過ぎて、それほど納豆の存在を気にかけたことなどなかった。納豆を遠慮なく食べれるありがたみも。
だけど、縁あって嫁いだオットの家族はあまり納豆のことを好ましく思ってなかった。 そんなことは聞いてなかった。 オットはまあいい。納豆ごはんならなんとか食べてくれる。寮生活の賜物だ。 結婚当初、朝から”納豆味噌汁”を出した私にオットは牽制球を投げかけた。 理解できなかった。なぜ、納豆ごはんは食べれて納豆味噌汁がだめなのか。 オットが、生まれて初めて口にした納豆味噌汁のことを会社で語ると 同じ社宅の先輩に「うらやましい。食ってみたい。」と言われたらしい。 たぶん、その人のウチは奥さんが納豆嫌いなのだろう。 一瞬、その先輩と結婚すればよかったのか・・・という思いが脳裏をかすめたが、その話はまたあとで考えよう。
とにかく、私は納豆が好きなので、本や雑誌で見かけた納豆料理を食べてみたくて仕方がないのだ。 「だめ」と言われれば言われるほど、私の納豆に対する郷愁にも似た思いは強くなっていくのだ。 ある日”納豆揚げぎょうざ”を作った。強行突破である。こうなったら作ったもん勝ちだ。 納豆と小さく切ったチーズと小口切りした万能ネギを餃子の皮で包んで揚げたモノだ。 あ〜、今でも想像しただけでヨダレが出てくる。 でも、だめだった。とりあえず、食べてはくれるが「あんまり・・・」と言う。悲しい。。。 それはあんまり悲しいではないか、オットさん。 しばらく私のなかの納豆おんなはなりをひそめていた。オットがいないときのごはんは納豆ご飯が多くなった。 冷やご飯で作る”納豆お好み焼き”なるものも発明した。オットがいないときはしめしめとそれを作って食べる。 だから、納豆はいつも冷凍庫になければならない。 それでも、それでもやっぱり納豆のおいしさをオットにも解って欲しかった。一緒に食卓を囲み「おいしいね」と言い合いたかった。 次なる作戦はは”納豆チャーハン”だった。 たくあんとか高菜などの漬け物を入れるのがポイントだ。それで、歯触り感もよくなり、漬け物のさっぱり感が納豆の臭みを上手くごまかしてくれる。 息を呑んでオットの言葉を待った。ついに、合格だった。納豆チャーハンばんざい!「これは旨い」を連発させた。 これには自信があった。オット母にも何とか食べさせたい。でも、オット母は「納豆」という言葉を聞いただけで首を横に振る。激しく。 「食わず嫌いは損ですよ」 仕方がない。強行突破だ。さすがに3人分作る勇気はなかったが、ひと口を小皿に盛ってオット母のいる階下に行った。 「これ、騙されたと思って食べてみて下さい。もし、いやだったら捨ててもいいから。」と言ってそそくさと2階へ戻った。 別になんと言われてもよかった。もともと期待などしていなかった。嫌いなモノは仕方がないのだから。 だけど、食わず嫌いは許せなかった。人生の楽しみの半分は減っていると思う。 さて、気になる判定は・・・?判定は◎だった。あの納豆嫌いのオット母の口からついに「おいしい」という言葉が聞けた。 「これなら食べれる」オット母は自分を偽ったりしない人だ。 これからも、揺るぎない努力を積み重ねて、じわじわと納豆を浸透させていきたいと密かに思っている。
今日のお昼は納豆ごはん、ということは朝から決めていた。昨日3パック18円で買ってきた愛おしい納豆だ。 午前中、オット母が出かけている間、留守番をしていたら、おみやげにパンを買ってきてくれた。おいしそうなパン。お腹はぺこぺこだった。 もうお昼を過ぎていた。パンもいいなぁ・・・。パンの匂いがかすかにする。あんぱんマンのかわいいパンもある。 てりてりっとしたクロワッサンも見える。ほぉら、こんぶパンもあるよ。 これでもか、これでもか・・・。これでも、あなたは納豆を食うのですか?とパンが訊く。 でも、私はすでに納豆をかいていた。納豆の匂いが部屋中に充満しているはずだ。あぁ〜早く食べたい。私の口は完全に納豆口になっていた。 今さら、パンになど変更出来そうにない。パンはおやつにしよう。 そして、昨日18円で買ってきた納豆を熱いごはんにかけてほおばった。 やっぱり旨い。満面の笑み。この至福のひととき。。。納豆ならではの幸福感。納豆は納豆にしか出来ないしあせわせを運んできてくれる。 あぁ、ごはんの上に乗っかってている納豆のひとつぶ、ひとつぶが愛おしい。
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