♪:カノン(パッヘルベル)

No.101

しあわせな買い物

2001.1.31掲載

 先日、オットと新しくできた大型家具店を見に出かけた。ひさしぶりのふたりでのお出かけ。

私はただ、どんなとこか見に行くだけだと思ってたら、オットはソファーを買う気だった。もう、買う気満々だった。

2階には、たくさんのソファーが並んでいた。色とりどりのたくさんのソファー。私もなんだかその気になってきた。

ふたりでまずは、予算内の適当な値段がついていて、且つシンプルなデザインのソファーに座りまくった。

向こうの、ちょっと高いのはどうやらレザーのようだ。6万9000円はちょっと高いね・・・。

あっちの方のにも座ってみようよ。ソファーは座り心地が肝心。

 ようやく、シンプルで座り心地のいいのが見つかった。だけど、値段が分からない。パーツごとの値段が表示してある。

でも、なんだかよく分からない。

すると、紳士的な感じの店員さんがにっこり近づいてきた。説明を聞いてみると、パーツごとに選べるらしいとのこと。

それで、気になるお値段は・・・オットが勝手にいい方に解釈していた背あてなど二対の物は、ひとつの値段だという。

しめて15万円弱!う〜ん・・・今、ソファーに15万円は出せない。考えてみますね、とにこやかにその場を立ち去った。

できるだけ、その店員さんから見えないところまで来て、たまたまそこにあったソファーに腰掛けてみる。

8万9000円がやけに安く思える。これでもいいんじゃない?これで上等だよ・・・。

さっきの店員さんに見つからないようにもう一回りして、結局今日の所は諦めることにした。

下を見て帰ろうよ。それに、コーヒーが飲みたい。

 ゆったりと長いエスカレーターで下へ降りた。さっき、上りのエスカレーターから見えた人達みたいにコーヒーが飲みたい。

「小銭ある?」

「あるけど、なんで?」

「この中からおつりをもらうの、なんかいやだもん」

ふたりで200円を箱の中に入れてセルフサービスのコーヒーを飲んだ。ちょっと煮詰まってた。

今度は何があるのかな。

 コーヒーを飲み終えると、オットはすたすたとキッチン小物売場らしいとこに歩いていった。

そういえば、卓上用のクリープを入れる、ちょっと気の利いた入れ物を探していたのだった。

これは?と私が手に取ると、それはパッキンが効いてないからダメだという。まるで、主婦のように。

すると今度、オットがこれは?と手に取ったのは、ふたが木で透明な寸胴のガラスの瓶だった。

もちろんパッキンもちゃんとついている。なにやら英語が白い文字で書かれているのがまたいい。

そうだね。たくさん入るし、パッキン付いてるし。店内のグレーのかごを取ってきて中に入れた。

 次はお風呂グッズ売場のよう。オットはうちの洗面所の石鹸箱が気に入らないらしく、しきりに見ている。

こないだ、買ったばかりなのに。100円だけど、それなりに吟味したのに。

文句を言いながら、私は次の石鹸のコーナーで足が動かなくなってしまった。

どでかい四角い石鹸。立方体というのだったかな。オリーブオイルでできてるようだ。

ー皮膚の敏感な方にーと書いてある。冬場はとかく皮膚がかさかさしてしまう。なんかよさそう。

その隣には、フルーツの香りの、キャンディのようなきれいな色の小さい石鹸もある。

ストロベリー、オレンジ、レモン・・・いろいろ匂いを嗅いでみた。思わず食べたくなってしまうような甘い匂い。

ふと、オットがいないことに気づく。しまった、私ひとりで浮かれてた。つま先立ちしてその辺を見てみた。

見えるのは仲良さそうに顔をくっつけて、買い物を楽しんでいる若いカップルだけ。しかも3組はいる。くやしい。

いつのまにか、オットの姿を探して早足に。周りの物をもっとゆっくり見たいのに。

 ようやく、オットが見えた。紺色のフリースのジャケット。カレは押入収納用のケースの前に何食わぬ顔でいた。

私が必死で探していたことも知らずに。

「あ、押入のサイズ計ってきたらよかったね。」

「分かるよ。」

「でも、なんか見るからに中途半端な大きさだよ。また、今度にしようよ。」

それよりさぁと、オットをさっきのエリアに追い立てていく。わき目もふらせず、石鹸のコーナーへ。

「欲しければ買えば」と言う。そう、あっさり言われても困る。

でも、遠慮せずにそのどでかい石鹸を買い物かごにいれた。実は隣の・・・フルーツのも欲しいんだけどなぁ。

「どっちかひとつ。」

と言われたけど、カレが背を向けた隙にさっとかごに入れる。だって、でかいのは700円だけど、フルーツのは100円。

迷ったけど、とりあえずストロベリーの赤いのにした。他のはまた、今度ひとりで来たときにでもこっそり買おう。

 そして、さっきオットを探して素通りしてしまったところを、ふたりで念入りに見る。やっぱりこうでなくちゃ。

絵を見たり、ダンベルを持ち上げてみたり・・・CDもあった。今流行の癒し系のとか。

「これ、オットのお義母さんに買っていったら?」

私が指さしてるのは『プラス思考』というCD。いつものおふざけだったのに、オットは珍しくまじになった。

えっ、ほんとに買うの?いいの?ほんとにに効くのかな・・・。

そして、またオットは石鹸箱を見ている。あーでもない、こーでもない。結局、買い物かごの中に石鹸箱は入らなかった。

さぁ、もういい時間だね。なんかすごく遊んだ気分。家に帰ったらトッタの散歩に行かなくちゃ。

 すかすかの買い物かごを持ってレジへ。オットはまたどこかに行ってしまった。財布の中身はだいじょうぶだろうか。

レジを済ませた私のところにオットがやってきた。

「あれは?」

見ると、店の入口というか出口付近にソファーが置いてあった。シンプルでこじんまりとしたふたりの好みにぴったりのが。

ー日替わり特価品 1万円也 20台限りー 

こんなところに掘り出し物があったなんて。さっきの15万円のソファーなんてどこかへぶっとんでしまった。

当たり前だ。たったの1万円なんだもん。座り心地も悪くなかった。ただ、難があるとしたら色だった。

春のような淡いグリーン色。嫌いな色ではないけど、狭い部屋なのでアイボリーとかベージュとかクリームとか、

とにかく主張しない色を買おうと思っていた・・・。う〜ん・・・、1万円のソファーの前で腕組みするふたり。

「これさぁ、どれだけの人が買ったんだろうね。」

と言いながら、ソファーの上の伝票の残りを数えてみたり。

でも、1万円の魅力には叶わなかった。グリーン色もよしとしよう。

かくして、我が家ひと足早く春色のソファーがやってきた。

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