No.026
ダンボールハウス
2004.11.26

 

いつの頃からか、雷が怖くて怖くてしょうがなくなってしまったとった。
小さい頃はへっちゃらだったのに。あの頃は、ぴかっと光った稲光
の後、すぐに大きな雷が鳴って、こりゃ絶対近くに落ちたね、ってな
時にでも、知らん顔してきょとんと小屋の中に居たのに。

大人になって、いろんなことが分ってくるにつけ、怖いと思うことが
増えていくのは犬も人間と同じなのかな。

ただ、犬の場合は耳が聞こえ過ぎて、ワタシ達人間の耳には全く
聞こえないような音でも分るようで、そんな時のとったは、尻尾を
たれておろおろ落ち着かず、それは、たとえごはんを前にしても
同じだった。その様子で、たぶん、遠くで雷がなってるのだろうと
ワタシ達は思ってる。(後になって、テレビで見たのは、犬は電磁
波を感じ取るらしい)

玄関に居るときは、下駄箱の下に潜り込んだり、廊下に上がって、
カラダを下駄箱の側面にぴったりくっつけて、隅っこでぶるぶる震
えて硬くなっていたりした。そうやって、雷が行き過ぎるのを待って
いた。

それが、玄関が居場所では、人の出入りの度に落ち着かなさそう
にしてたので、廊下の突き当たりにとったの居場所を移したら、隠
れる場所がなくなったからか、今度は、オット母の居る部屋の扉を
がりがりがりがり爪で引っかくようになった。

やさしい上に、とったがかわいくてかわいくてしょうがないオット母は、
そんなとったを部屋に入れてやるようになった。部屋の中に入れて
もらってもまだ足りず、何かの下に潜り込みたがった。

そして、それだけでもまだ足りず、今度は、夜中に部屋の敷物をが
りがりがりがり爪で引っかくようになった。犬的には穴でも掘ってい
るつもりなのか。そんで、そこに潜り込みたかったのかな。

とにかく、ただでさえおばあちゃんの介護で疲れてる上に寝不足気
味のオット母には堪らなかったようだ。とうとう、雷が騒いでそうな日
は、夜だけ2階へ連れてってと言われた。

ワタシが思うには、ー”がりがり”すればオット母は部屋に入れてく
れるーってことをカレは学習したのだろう。ワタシはオット母ではな
い。それは、とったも分っているだろう。2階で”がりがり”はしない
だろう。

と、思っていたのだけど、何やら廊下から音が聴こえてくるではな
いか。

茶の間の戸を開けて見てみると、猫みたいに、片手で”がりがり”
やっているではないか。う〜ん・・・2階に連れて来てもダメだった
か〜。それに、とった。アンタのがりがりやってる部屋にはだぁれ
もいないんだよ。しょうがないね。じゃあ、どこかに隠れ場所を作
ってあげないといけないね。

そーゆうわけで、思いついたのが『ダンボールハウス』だったのだ。
ちょっと小さめだけど、その方が落ち着くだろう。その夜、ときどき
廊下で”がりがり”する音が聴こえてはいたけど、あまりの眠さに放
っておいた。それに、ー2階ではがりがりしても部屋には入れてもら
えないーって学習させなきゃ。

結局、いつの間にやらそのままぐっすり眠ってしまったワタシ達。
夜中はどうだったのかは誰にも分らない。。。



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