No.020
思い込み
2002.2.23

 

朝から、下でオット母の大きな声がする。
なんだろう・・・って思って降りて行って見ると
階段の下で笑いながらとったを呼ぶオット母。
玄関では、何にも繋がれていないとったが、
小首をかしげて弱々しくしっぽを振ってた。

寒い冬の間、とったは玄関の中で過ごす。
とったの錘は「タイヤ」。雪国なので2種類の
タイヤがあって、かならず一組は遊んでいる
から、そのひとつにとったの引き綱を繋いで
いるのだ。

その日はお客さんが来ることが分ってたから
玄関に入っていきなり犬がいたのでは、びっ
くりされるだろうから、オット母はとったを、玄
関を上がった廊下の突き当たりに移動させ
ようと思って、そのタイヤから引き綱を外し、
つまり、とったをフリーにして先にタイヤを移
動した。

そして、とったを呼んで「こっちへおいで」と
言うのだけど、カレは自分がそこに繋がれて
いるものだと思ってるから、ちょうど引き綱の
つっぱったその場所から一歩も動かないの
だ。

ちなみに普段のカレは、「おいで」と呼ぶと喜
んで跳んでくる。

笑いころげながら何度も何度もとったを呼ぶ
オット母の声に、しっぽをふりつつ「そんなこ
と言われてもボク繋がれてるし、そっち行け
ないし・・・」って言いたげな顔で。

でかい笑い声は二人分になった。
とったはますますしっぽを振りながら、小首を
傾けた。



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