No.016
小犬風おやじ
2001.5.11

 

こないだ、いつものようにトッタと散歩していた時の
こと。よく通る公園の、近くの家の奥さんが表に出
てよその奥さんとお話をしていらしたので、特に顔
見知りと言うわけでもないのだけど、一応この町内
の人なので会釈をして通り過ぎようとしたら「あらぁ?
大きくなったわねぇー!」と声をかけられた。

もちろん、ワタシのことではないだろう。トッタのこと
に決まっている。「えぇ〜・・・あ・・・はい・・・。」とに
こにこ笑って通り過ぎるしかない。

だけど、決してその人がおかしいのではないのだ。
トッタは本当に小さいのだ。体重はだいたい7kgを
常にキープしている。きゅっと引き締まったカラダ。
トッタは時々おやじくさい顔をするかと思えば、赤ち
ゃんみたいな無邪気な顔もする。
間近で見ると年は隠せないが、特に離れたところ
から見ると、やっぱり「小犬?」って訊きたくなる気
持ちも分からないでもない。自慢じゃないけど「豆
柴?」って訊かれることもしょっちゅうなのだ。だか
ら、ワタシもこうゆうことには慣れていた。大抵は
「何歳?」って訊かれて、「もう5歳なんですよ、こ
れでも成犬なんですよー。」で、びっくりされて終わ
り。

それが、今回のは目をまん丸にして「大きくなった
ね〜。」だったから、なんだか妙におかしくて、ワタ
シはおかしさをかみ殺して返事をした。通り過ぎる
ときにもう一度、その奥さんの顔をよく見てみた。
笑顔が、まるでひまわりみたいな明るい人だった。

そういえば、真冬の散歩の時にも挨拶を交わした
かもしれない。除雪車が通った後の道路は圧雪で
つるつるしてて滑りそうで、「つるつるですよね〜。」
と、声をかけたりかけられたりしたっけ。その時、
恐る恐る前を歩いていたその人がつるっと転んだ
ので笑っていると、ワタシも同じところでつるって転
んだのだった。そして、ふたりでげらげら笑ったのだ。

たぶん、顔見知りだろうとそうでなかろうと、声をか
けずにはいられない人なのだろうけど、なんだか心
があったかくなった。





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