No.012
太 郎
2001.02.27.

 

とったと散歩している途中で出会うわんこ、太郎。

なかなか手強い相手だ。

いつもとったの姿を見つけるやいなや、激しく吠え立てる。

柴で、菱形を横長にしたような顔。いかにも強そうだ。

いかにも『太郎』と呼びたくなる面構え。そうでなければ『テツ』と私は呼びたい。

『太郎』は私が勝手に付けた名前。でも、もし『太郎』でなければ何だというのだ。想像も付かない。

かわいいとったに吠え立てるその太郎と、遭いたくなければそこを通らなければいいのだ。

だけど、

どうしても、あの菱形の顔に会いたくなって、自然と歩く速度が落ちるとったを励ましながら、

太郎の家の前の手前の電信柱の影から、そっと様子を窺う。

とったはその電信柱で用を足した後もあまり気が進まない様子。

私の顔だけ見てる分には太郎は「なに?」っていう顔をしているのだが、

その後ろから、

とったがおそるおそる姿を見せると、たとえ小屋に入っていても、飛び出してきて吠えまくる。

とったは「くぅーん・・・」って泣きながら、早足でその前をやり過ごそうとしている。

でも、ある日、どうしてだか、太郎が知らん顔の時があった。とったを見ても知らん顔。

一体なぜ。

もう、とったに慣れたのかな。

でも、またある日、なんの心の準備もないまま吠えられた。

まさか、吠えられるなんて思ってなかったから、私は飛び上がった。もちろん、とったも。

私は毎日同じ道を散歩しない。その日の気分で、あっちへ行ったりこっちへいったり。

だからなのかな。たまに現れるから、なのかな。

その太郎の法則が知りたくなって、毎日通っている。

未だに太郎の気持ちは分からない。

太郎の本名も分からない。

いつか、尋ねてみよう。そして、いつか太郎の写真も撮らせてもらおう。

 

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