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2021年6月の特集

退職金規程
退職金は、法令上で義務付けられた制度ではありません。そのため退職金制度を
設けるか否か、さらにその内容については会社の判断に委ねられています。
一方で社員からすると、退職後の生活を考えたときに退職金の存在は非常に重要
なものになります。そのため、退職金規程の定めが不十分で解釈や運用に疑義が
あれば、退職金について争いが生じてしまいます。そうならないためにも、社員
にとって分かりやすい、また会社にとっても判断に迷わず運用できるような規程
が求められます。
そこで労基法では、退職金の定めをする場合においては、「適用される労働者の
範囲、退職手当の決定、計算及び支払の方法並びに退職手当の支払の時期に関す
る事項」を就業規則に定め、届出がなければならないことが規定されています。
(労基法第89条第3号の2)。就業規則に定める場合には、「退職金に関しては、
別に定める」と規定した上で、詳細について別途退職金規程を設ける方法が一般
です。

退職金規程B
第7条(競業避止義務)
退職後6ヶ月、会社と競業する他社への就職及び競業する事業を営むことはでき
ない。退職後に当該事実が発覚した場合については、原則として退職金の全部ま
たは一部を支給しないものとする。
2 前項において、退職金支給後に発覚した場合には、前条第2項の手続きによ
る。

第8条(金額の端数計算)
退職金の計算において、100円未満の端数が生じたときは100円に切り上げる。

第9条(退職金の受給権者)
退職金の支給を受ける者は、本人(本人が死亡した場合は、その遺族)とする。
2 前項の遺族の範囲及び順位については、労基法施行規則第42条及び第43条の
定めるところによる。同順位者が2名以上となる場合は、その中の1名からの請求
及び1名に対する支給をもって全員からの請求及び全員に対する支給とする。
3 会社は、前項について確認するために証明書類等を求めることがある。

第10条(退職金の支払時期と方法)
退職金は、特別な事情がある場合を除いて、原則として退職した日から2ヶ月以
内に支給する。
2 退職金は、本人または遺族が指定する銀行その他金融機関の本人(死亡の場
合は、受給権者である遺族)名義の預金口座に振り込むものとする。

第11条(附則)
この規程は、令和〇〇年〇〇月○○日から施行する。

【ポイント】
競業避止と退職金
技術やノウハウ、営業機密は、利益を生み出すための大切な資産です。これらが
ライバル会社に渡らないように、退職後において一定期間同業他社への転職を禁
止することを競業避止義務と言います。本来、退職後については『職業選択の自
由はありますが、一方で会社の利益を守らなければなりません。そのため、労働
者との個別の同意または就業規則に記載することで、合理的な範囲(見本では、
6ヶ月)での競業避止義務が認められています。
この競業避止義務の実効性を高めるためにとられるのが、競業避止義務違反に対
する退職金の減額又は不支給です。退職金の功労報奨的な性質から一部の判例で
認められているケースもありますが、非常に限定的です。したがって、同業他社
への転職や同業種間の開業という事実だけで判断をせず、懲戒解雇等と同様に、
永年の功を抹殺してしまうほどの不信仰行為であるのか個別具体的に判断をして
いく必要があるのです。

退職者が死亡した場合と死亡退職
退職金を支給する権利は、その支払日ではなく、「退職」という事実によって発
生します。
そのため、退職金の支給日前に退職者が死亡してしまった場合でも、退職金を請
求する権利はすでに発生しており、その請求権は死亡後、相続財産に含まれます。
一方、死亡退職にいて行政解釈では「労働者が死亡したとき退職金の支払につい
て別段の定めがない場合には、民法の一般原則による遺産相続人に支払う旨と解
されるが、労働協約、就業規則等において、民法の遺産順位によらず、労基法施
行規則第42条、第43条の順位による旨定めても違法ではない」とされています。
つまり、退職金規程等で定めていない場合は遺産相続人に、退職金規程で遺族の
範囲を定めていればその規定にそって支払えばよい、ということです。頻繁に起
きるケースではありませんが、後のトラブルを防止するためにも、ここで明確に
しておくべきでしょう。基準は会社によってまちまちですが、行政解釈のように
労基法施行規則第42条、第43条の順位を準用している会社が多く見られます。ま
た実際の支払時には、規定に定める受給権者かどうかを公的書類等で確認をとる
ための根拠条文を入れておきましょう。
【用語説明】
労基法施行規則第42条(遺族補償を受ける者)
遺族補償を受けるべき者は、労働者の配偶者(婚姻の届出をしなくとも事実上婚
姻と同様の関係にある者を含む。以下同じ。)とする。
2 配偶者がない場合には、遺族補償を受けるべき者は、労働者の子、父母、孫
及び祖父母で、労働者の死亡当時その収入によつて生計を維持していた者又は労
働者の死亡当時これと生計を一にしていた者とし、その順位は、前段に掲げる順
序による。この場合において、父母については、養父母を先にし実父母を後にす
る。
労基法施行規則第43条(遺族補償の受給者及び順位)
前条の規定に該当する者がない場合においては、遺族補償を受けるべき者は、労
働者の子、父母、孫及び祖父母で前条第二項の規定に該当しないもの並びに労働
者の兄弟姉妹とし、その順位は、子、父母、孫、祖父母、兄弟姉妹の順序により、
兄弟姉妹については、労働者の死亡当時その収入によって生計を維持していた者
又は労働者の死亡当時その者と生計を一にしていた者を先にする。
2 労働者が遺言又は使用者に対してした予告で前項に規定する者のうち特定の
者を指定した場合においては、前項の規定にかかわらず、遺族補償を受けるべき
者は、その指定した者とする。

支払方法と時期
退職金は、就業規則等で定められている場合は、賃金であり労基法で定める賃金
の中でも『臨時に支払われる賃金』と区別されます。労基法第24条で定める賃金
支払い5原則のうち、『通貨払いの原則』『直接払いの原則』『全額払いの原則』
に違反することはできません。
一方で労基法第23条では、死亡または退職の場合において権利者からの請求があ
った場合においては7日以内に賃金を支払わなければならないとも定められていま
すが、この規定について退職金の取り扱いは、「予め就業規則等で定められた支
払い時期に支払えば足りるものである」とされていることから、就業規則等で定
める場合においては、請求から7日以内に支払う必要なないのです。
退職金の支払い時期は、労基法第89条において、就業規則等で定めなければなり
ませんが、具体的な時期については法令で定められていません。そのため算出の
難易度や退職後の不信行為等の有無を調査する時間等を考えて決定することにな
ります。退職金は、退職者の生活保障という側面もあるため「会社が定めた日」
や「適宜定める」等のあいまいな表現でなく、より具体的に定める必要がありま
す。

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