2023年12月のQ&A |
【Q】 |
2023年9月施行の精神障害の労災認定基準の変更について教えてください。 |
【A】 |
月刊社労士10月号参照 |
認定基準の変更の経緯 |
厚生労働省では、仕事によるストレス(業務による心理的負荷)が関係した |
精神障害については、2011年に策定した「心理的負荷による精神障害の認定 |
基準(旧認定基準)」に基づいて労災認定を行ってきました。旧認定基準発 |
出以降、働き方の多様性が進み労働者を取り巻く環境が変貌するといった社 |
会情勢の変化が生じ、また、精神障害の労災保険給付請求件数が年々増加し |
ていることから、より適切な認定、審査の効率化を図るため、2023年7月に |
報告書が取りまとめられ、この報告書を踏まえて、2023年9月1日に精神障害 |
の認定基準を改定しました。 |
旧認定基準からの改正された認定基準の主なポイント |
(1)業務による心理的負荷評価表の見直し |
(2)精神障害の悪化の業務起因性が認められる範囲の見直し |
(3)医学意見の収集方法を効率化 |
(1)業務による心理的負荷評価表の見直し |
業務による心理的負荷の強度の判断に当たっては、認定基準に示す「業務によ |
る心理的負荷評価表」を指標として、発病前おおむね6ヶ月に対象疾病の発病 |
に関与したと考えられる業務による出来事やその後の状況を把握して、同表に |
示す「具体的出来事」に当てはめ、心理的負荷の強度を「強」「中」「弱」の |
3段階に区分して評価します。 |
この業務による心理的負荷評価表について、令和2年度に実施した「ストレス |
評価に関する調査研究」の結果に基づき、また、決定事例や裁判例等を精査し、 |
各項目への当てはめや心理的負荷の強度の評価が、適切かつ効率的に行えるよ |
うにする必要があるとの観点から、次のとおり見直されました。 |
@具体的出来事の追加 類似性の高い具体的出来事の統合等 |
労働者を取り巻く環境の変化等に対応するため、以下の具体的出来事を追加し |
ました。 |
●顧客や取引先、施設利用者等から著しい迷惑行為を受けた(いわゆるカスタ |
ーハラスメント) |
●感染症等の病気や事故の危険性が高い業務に従事した |
併せて、各具体的出来事への当てはめや心理的負荷の強度の評価が効率的に行 |
えるようにするとの観点から、できる限り項目ごとの重複を避け、細分化され |
た項目が一定程度統合されました。また、各項目の表記も、事実を客観的に評 |
価でき、かつ、その内容が明確化・具体化されるよう一部修正しました。 |
A心理的負荷の強度が「強」「中」「弱」となる具体例等の拡充 |
心理的負荷の強度が「強」「中」「弱」となる具体事例について、明確化の観 |
点から拡充しました。例えば、「パワーハラスメント」の出来事については、 |
これまで、身体的な攻撃と精神的な攻撃の例のみが示されていましたが、パワ |
ーハラスメントの6類型すべて(身体的攻撃、精神的攻撃、人間関係からの切り |
離し、過大な要求、過小な要求及び個の侵害)の例を拡充し、併せて、性的指 |
向、性自認に関する精神的攻撃等を含むことも明記しました。また、一部の心 |
理負荷の強度しか具体例が示されてなかった具体的な出来事について、他の強 |
度の具体例を明記しました。このほか、心理的負荷の総合評価の視点について |
も、記載を拡充しています。 |
心理的負荷の強度を「弱」「中」「強」と判断する具体例(P13以降) |
(2)精神障害の悪化の業務起因性が認められる範囲の見直し |
精神障害の悪化について、旧認定基準では、悪化前おおむね6か月以内に業務 |
による心理的負荷評価表の特別な出来事(資料A参照)がなければ、業務起因 |
性を認めていませんでした。 |
これに加えて、悪化前おおむね6ヶ月以内に特別な出来事がなくても、悪化の |
前の業務による強い心理的負荷が認められる場合には、当該業務による強い心 |
理的負荷、本人の個体側要因(悪化前の精神障害の状況)と業務以外の心理的 |
負荷、悪化の態様やこれに至る経緯(悪化後症状やその程度、出来事と悪化と |
の近接性、発病から悪化までの期間など)等を十分に検討し、業務による強い |
心理的負荷によって自然経過を超えて著しく悪化したものと医学的に判断され |
るときには、悪化した部分について業務起因性を認め、労災認定できることを |
認めました。なお、通院・服薬を継続している者であっても、症状がなく、又 |
は安定していた状態で、通常の勤務を行っている状況にあって、その後、症状 |
の変化が生じたものについては、精神障害の発病後の悪化としてではなく、症 |
状が改善した安定した状態が一定期間継続した後の新たな発病として判断すべ |
きものがあると明示しました。 |
資料A(特別な出来事の類型) |
■心理的負荷が極度のもの |
心理的負荷の総合評価を「強」とするもの |
・生死にかかわる、極度の苦痛を伴う、又は永久労働不能となる後遺障害を残す |
病気やケガをした(業務上の疾病による療養中に症状が急変し極度の苦痛を伴っ |
た場合を含む。) |
・業務に関連し、他人を死亡させ、又は生死にかかわる重大なケガを負わせた |
(故意によるもの除く。) |
・強姦や、本人の意思を抑圧して行われたわいせつ行為などのセクシャルハラス |
メントを受けた |
・その他、上記に準じる程度の心理的負荷が極度と認められるもの |
■極度の長時間労働 |
心理的負荷の総合評価を「強」とするもの |
・発病前の1ヶ月におおむね160時間程度を超えるような、又はこれに満たない |
期間にこれと同程度の(例えば3週間におおむね120時間以上の)時間外労働を |
行った |
(3)医学意見の収集方法を効率化 |
より効率的な審査を行う観点から、支給・不支給の決定に当たり必要となる医 |
学的意見の収集方法を見直しました。(資料B参照) |
旧認定基準では専門医3名の合議(専門部会)の意見が必要とれていた事案に |
ついて、認定基準では、高度な医学的検討が必要なものを除き、専門医1名の |
意見で決定可能となりました。(例1)また、旧認定基準では専門医1名の医 |
学意見の収集を必須としていたものについて、認定基準では主治医意見の収集 |
より決定可能になりました。(例2)これにより、審査に要する期間を短縮で |
きる事案が増加します。 |
資料B(医学的意見の収集方法) |
■専門医1名の意見で決定可能 |
【例T】対象疾病の治療歴のない自殺行為 |
心理的負荷の強度が「強」に該当するか判断がしがたい事案 |
(高度な医学的検討が必要なものを除く) |
■主治医の意見のみで決定可能 |
【例2】業務による強い心理的負荷が認められるが、業務以外の心理的負荷や |
個体側要因が軽微である事案 |
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