2023年05月のQ&A |
【Q】 |
管理監督者の休暇、休業、各種手当等について教えてください。 |
【A】 |
監督又は管理の地位にあるものとは、一般的には、部長、工場長等労働条件の決 |
定その他労務管理について経営者と一体的な立場にある者の意であり、名称にと |
らわれず、実態に即して判断すべきものであります。 |
(昭和63年3月14日基発150号) |
管理監督者の範囲については、民事裁判例では、@経営方針の決定に参画するあ |
るいは労務管理上の指揮の権限を有する等経営者と一体的な立場にある。A出退 |
勤の管理を受けず、独自の裁量で勤務時間を決定できる。B職務の重要性に賃金 |
を受けているという3つの要件を満たすことが必要です。 |
【用語解説】 |
基発:通達のこと。通達とは法令の解釈や取扱い等を上級機関から下級機関へ示 |
すものですが、その中で基発は、労働基準局長名で発する通達のことを表わす。 |
■時間外手当・休日出勤手当 |
管理職については、労働時間、休憩、休日に関する規定は適用除外であるため、 |
時間外及び休日労働(法定休日)に対しての割増賃金の支払いは必要ありません。 |
■36協定は対象外 |
36協定とは、従業員に法定労働時間を超えて働いてもらう場合や、休日出勤をお |
願いする場合に必要な協定のこと。正式には、「時間労働・休日労働に関する協 |
定」といいます。管理監督者に対しては、労働基準法の「労働時間」に関する規 |
定が適用されないため、36協定は対象外となります。その一方で、管理監督者も |
「深夜手当」や安全配慮義務の適用対象となっているため、健康を害するような |
深夜業や長時間労働は避けるのが望ましい。 |
■深夜手当 |
深夜業(午後10時〜午前5時まで)に対しては割増賃金の支払いが必要となりま |
す。 |
■育児休業(産後パパ育休制度ふくむ)・介護休業 |
管理監督者であっても育児休業・介護休業は取得できます。また、2022年10月 |
から施行された産後パパ育休制度も取得できます。但し、時短勤務については認 |
める義務はありません。 |
■年次有給休暇 |
有給休暇とは、企業が従業員に対して給与を支給する休暇日のこと。労働基準法 |
第39条の有給休暇の規定は、管理監督者にも適用されるため付与する必要があり |
ます。また、年10日以上の有給休暇がある管理監督者についても、一般の従業員 |
と同様、2019年から開始された「年5日以上の有給休暇取得義務化」の対象とな |
ります。 |
■雇用契約書(労働条件通知書) |
雇用契約書とは、企業と従業員との間で労働契約の内容について合意を証明する |
書類のこと。雇用契約は口頭でも成立しますが、従業員とのトラブルを避けるた |
め書面で交付するのが望ましいです。管理監督者は、経営者と一体的な立場であ |
りますが、一従業員であることに変わりないため、一般の従業員と同様に労働条 |
件を明示する必要があります。管理監督者との間でも、雇用契約書を取り交わし |
ておきましょう。 |
■産前産後 |
管理監督者の女性適用 |
6週間以内(多胎妊娠は14週間以内)に出産する予定の女性を就業させてはなり |
ません。産後8週間を経過しない女性を就業させてはなりません。但し産後6週 |
間を経過しない女性が請求した場合において、その者について医師が支障がない |
と認めた業務に就かせることは差支えありません。 |
■労働時間の把握が義務化 |
働き方改革関連法案の施行(2019年)により、管理監督者の労働時間の把握が義 |
務となりました。タイムカードによる記録をしない場合は、「パソコンの使用時 |
間を記録する」方法等による客観的な方法で把握をしてください。なお、労働時 |
間の状況を記録したものは3年間保存する義務があります。 |
判例【医療法人徳州会事件 昭和62年3月31日 大阪地判】 |
【事案の概要】 |
(1)Y医療法人の人事第2課長として主として看護婦の募集業務に従事していたXが、 |
労基法41条2号の管理監督者の地位にはなかったとして、時間外・休日・深夜労 |
働にかかる割増賃金の支払いを求めて提訴したもの。 |
(2)大阪地裁は、管理監督者の地位にあるものに該当するとした。 |
【判示の骨子】 |
(1)労働基準法41条2号のいわゆる監督若しくは管理の地位にある者とは、労働時 |
間、休憩及び休日に関する同法の規制を超えて活動しなければならない企業経営 |
上の必要性が認められる者を指すから、労働条件の決定その他労務管理について |
経営者と一体的立場にあり、出勤、退勤等について自由裁量の権限を有し、厳格 |
な制限を受けない者をいうものと解すべきである。 |
(2) XのY法人における地位、職務権限の内容、労働時間の決定権限、責任手当・ |
特別調整手当の支給の実態等からみると、Xは、Y法人における看護婦の採否の決 |
定、配置等労務管理について経営者と一体的な立場にあり、出勤、退勤時にそれ |
ぞれタイムカードに刻時すべき義務を負っているものの、それは精々拘束時間の |
長さを示すだけにとどまり、その間の実際の労働時間は原告の自由裁量に任せら |
れ、労働時間そのものについては必ずしも厳格な制限を受けていないから、実際 |
の労働時間に応じた時間外手当等が支給されない代わりに、責任手当、特別調整 |
手当が支給されていることもあわせ考慮すると、Xは、右規定の監督若しくは管理 |
の地位にある者に当たるものと認めるのが相当である。 |
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