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2023年02月のQ&A
【Q】
労災の継続事業(事業期間が予定されていない、一般企業等)のメリット制につい
て教えてください。


【A】
継続事業では、それぞれの業種に設定されている労災保険料率から、非業務災害率
※1(全業種一律0.6/1000)を減じた率を±40%の範囲で増減させて、労災保険
率を決定します。これをメリット料率といいます。

【用語解説】
※1非業務災害率とは、それぞれの業種に設定されている労災保険料率のうち、通
勤災害、二次健康診断、特定保健指導及び複数業務要因災害に係る給付並びに複数
事業労働者の業務災害に係る給付の一部に充てる分の保険料率のことで、業種を問
わず1000分の6としています。

二次健康診断
脳血管疾患及び心臓疾患の発生にかかわる身体の状態に関する検査
(一次健康診断における血圧検査等を除く)

特定保健指導
二次健康診断の結果に基づき、脳血管疾患及び心臓疾患の発生の予防を図るため、
面接により行われる医師又は保健師のよる保健指導(二次健康診断毎に1回に限る)
をいう。

2.メリット制の適用の対象と成る事業
継続事業では、「事業の継続性」に関する要件と、「事業規模」に関する要件を満
たしていることが、メリット制適用の要件となります。
@事業の継続性
メリット制が適用される保険年度の前々保険年度に属する3月31日(以下基準日の
時点において、労災保険の保険関係が成立してから3年以上経過していること
A事業の規模
基準日の属する保険年度の前々保険年度から遡って連続する3保険年度中(以下「
収支率算定期間」という)の各年度において、使用した労働者数※に関して、次の
A または B のいずれかを満たしていること。
A:100 人以上の労働者を使用した事業であること。
B:20 人以上 100 人未満の労働者を使用した事業であって、災害度係数が 0.4以
上であること。災害度係数は、以下の計算式で算定します。
災害度係数 = 労働者数 × (業種ごとの労災保険率−非業務災害率) ≧ 0.4
※労働者数(16ページ 最低労働者数早見表参照)

3.メリット収支率の算定
メリット収支率とは、連続する3保険年度中の確定保険料に対する保険給付等(業
務災害に係る保険給付及び特別支給金)の割合であり、次式により算定します。

収支率=(保険給付補額+特別支給金の額※)÷(保険料の額×第1種調整率※)

※保険給付の額+特別支給金の額は、基準日以前の連続する3保険年度期間におけ
る業務災害に関する保険給付及び特別支給金の額です。
但し、以下のものに係る額は除かれます。(特別支給金の額についてもこれに準じ
ます。)
・障害補償年金差額一時金
・遺族補償一時金(失権差額一時金に限る。)
・通勤災害に係る保険給付
・二次健康診断等給付
・特定疾病にかかわった者に係る保険給付(非災害性腰痛、振動障害、じん肺等)
・第3種特別加入者(海外派遣者)に係る保険給付(第3種特別加入者の保険料は、
保険料の算定の基礎から除外)

※第1種調整率 一般の事業(以下の事業以外の事業)の場合は0.67、林業の事業
は 0.51、建設の事業、港湾貨物取扱事業、港湾荷役業は 0.63、船舶所有者の事業
は 0.35

4.判例【大阪高裁平成28年11月29日判決】
第三者行為による業務上災害により被災した被災労働者の遺族に対して,労災保険
給付がなされたことで労災保険率のメリット制に基づく使用者が負担する労災保険
料が増額になったことが損害であるとして,使用者が損害賠償を求めた事案です。
事案の概要
控訴人(原告)の従業員Aが業務上運転していた普通乗用自動車(タクシー)に,
被控訴人(被告)が運転していた大型自動二輪車が衝突し,Aが死亡した。Aの遺
族に労災保険給付がなされたことにより,労災保険率のメリット制に基づき,控訴
人の負担すべき保険料が増額したと主張してその支払を求めた。

裁判所の判断
大阪高裁は,原審と同様,使用者の損害賠償請求を認めませんでした。 労災保険
は,労働者の福祉の増進に寄与することを目的として,労働者を使用する事業であ
れば,その事業が開始された日に保険関係が成立するものであり,労働者の業務災
害に関する保険給付は,事業主の故意過失の有無や,第三者に不法行為が成立する
か否かにかかわらず行われる。労働保険料の種類,額及び負担者は,いずれも徴収
法において定められているところ,事業主の負担の具体的公平を図るとともに,事
業主の災害防止努力義務を促進するため,メリット制が採用された結果,労働保険
料の負担額は,業務災害に関する保険給付等の額の増加に応じて増加することとな
っているが,当該業務災害が,第三者の不法行為に起因するものであることは,何
らその負担額を増減する要素ではない。
労働保険料は,事業主が,法に基づく義務としてその負担をするものであって,そ
の負担額は,第三者の不法行為に起因する業務災害があったか否かにかかわらず,
事業主の負担の具体的公平を図るなどの観点から,徴収法により定められているも
のである。
メリット制が適用される場合の労働保険料は,3保険年度における保険給付の額等
を前提に算定されるものである。また,労働保険料の算定において前提となる一般
保険料の額は,事業主が支払う賃金総額に基づき計算される。したがって,事業主
が負担する労働保険料は,当該3保険年度における保険給付の額等や賃金総額によ
って変動するのであって,その増減額は,ある特定の業務災害があったことから直
ちに算出し得るものではない。
控訴人は,本件事故があったことを原因として,控訴人における平成29年度から平
成31年度の労働保険料が増額することになると主張するが,その主張は,前提を欠
くというほかない。
労災保険法に基づく業務災害に関する保険給付は,同法施行規則がその手続につい
て詳細に定めるとおり,災害補償の事由が生じた場合に,補償を受けるべき労働者
若しくは遺族又は葬祭を行う者の請求に基づき,労働基準監督署長の決定を経た上
でなされるものである。すなわち,ある特定の業務災害が発生した場合に,具体的
にいつ,どのような保険給付がされるかは,同法施行規則に基づく請求や決定とい
った手続がされない限り不明なものである。上記の各事情を踏まえると,控訴人に
生じた本件負担は,本件事故につき被控訴人に不法行為が成立するために生じるも
のではないし,被控訴人がした不法行為から通常生じる損害ともいえない。なお,
本件負担が生じることについて予見可能な特別の事情があったと認めるに足りる証
拠もない。したがって,控訴人に生じた本件負担が,本件事故による損害であると
認めることはできない。

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