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2022年8月のQ&A
【Q】
企業が、労働者に時間外労働をさせるには?


【A】
労基法は、労働者に休憩時間を除き一週間について40時間、一日について8時間
を超えて労働させてはならないと定めています(労基法32条)。労基法上の原則
としては、この上限(法定労働時間)を超えて労働させる旨の労働契約や業務命
令は違法無効であり(同法13条)、労基法32条に違反した使用者には罰則が適用
されます(労基法119条1項)。

【適用除外】
@農業、畜産業、養蚕業、水産業
A事業の種類にかかわらず、監督又は管理の地位にあるもの
(管理監督者の範囲)
・経営方針の決定に参画するあるいは労務管理上の指揮権限を有する経営者の一
体的立場にあるもの
・出退勤の管理を受けず、独自の裁量で勤務時間を決定できる。
・職務の重要性に見合う賃金を受けている
という、上記3つの要件を満たすこと。

B事業の種類にかかわらず機密の事務を取り扱う者(秘書等)
C監視に従事する者で使用者が所轄労働基準監督署長の許可を受けた者
D断続的労働に従事する者(休憩時間は少ないが手待ち時間の多いもので、使用
者が所轄労働基準監督署長の許可を受けた者)
ただし、@災害その他の避けることのできない理由により臨時の必要がある場合
(労基法33条)と、A使用者が過半数労組または過半数代表者との間に労働時間
の延長等に関する協定(三六協定)を締結し、届け出た場合(労基法36条1項)
には、上記の労基法による規制は解除され、使用者が法定労働時間を超えて労働
者を働かせても労基法違反の責任を問われることはありません。

判例【日立製作所武蔵工場事件 最高裁 平成3年11月28日】
原告側労働者Xは、Y社の工場で製品の品質管理業務に従事していた。Xは、上司
から、製品の良品率が低下した原因の究明と手抜き作業のやりなおしを行うため
に、残業をするよう命じられたが、これを拒否した。これに対して、YはXを出勤
停止の懲戒処分に処し、始末書の提出を命じたが、Xはなお残業命令に従う義務
はないとの考えを改めなかった。そこで、Y社は、過去3回の懲戒処分歴と併せ、
悔悟の見込みがないとしてXを懲戒解雇した。なお、Y社は過半数組合と三六協定
しており、同社就業規則には「業務上の都合によりやむをえない場合には組合と
を締結の協定により…実労働時間を延長…することがある」との規定があった。
Xは懲戒解雇が無効であると主張して提訴した。懲戒解雇の効力を判断する前提
として、残業命令の適法性が問題となった。
判決の内容 労働者側敗訴
使用者が、三六協定を締結して労働基準監督署に届け出た場合に、就業規則に、
三六協定の範囲内で業務上の必要があれば労働時間を延長して労働者を労働させ
ることができると定めているときは、その就業規則の規定内容が、合理的なもの
である限り、使用者と労働者の間の労働契約の内容となる。そして、就業規則の
適用を受ける労働者は、その定めるところに従って時間外労働を行う義務を負う。
Y社における時間外労働の具体的内容は三六協定によって定められている。そし
て、本件の三六協定は、使用者が時間外労働を命じうる時間数の上限を設定し、
かつ、時間外労働を命じるには所定の事由を必要としている。所定の事由のうち
「業務の内容によりやむを得ない場合」等はやや包括的であるが、相当性を欠く
とまではいえない。それゆえ、業務上の都合によりやむを得ない場合には三六協
定により時間外労働を命じることがあるという、本件就業規則の規定は合理的な
ものというべきである。したがって、本件の残業命令は適法であり、その命令に
従わなかったXに対する懲戒解雇は有効である。

(2)三六協定締結に関しての注意点
三六協定を締結する際には、時間外・休日労働をさせる事由、業務の種類、労働
者の数、延長できる時間数及び労働させる休日数の上限を定める必要があります
(労基法施行規則16条)。時間外労働の上限時間数については、労基法36条2項
に基づいて基準(限度時間)が定められ、三六協定の当事者は労働時間の上限を
定めるに当たり、三六協定の内容が基準に適合したものとなるようにしなければ
ならず(同条3項)、行政官庁は、この基準に関して協定当事者に対し、必要な
助言指導を行うことができます(同条4項)。ただし、この基準は私法上の強行
法規としての効力をもたないと解されているので、基準の定める限度を超える三
六協定が直ちに無効とされるわけではありません。さらに、限度時間を超えて時
間外労働をさせなければならない特別の事情が生じる場合に備えて、限度時間を
超える一定時間まで労働時間を延長することができる旨の特別条項を付すことも
認められています(平10.12.28労告154号)。
また、三六協定締結の相手方である「労働者の過半数を代表する者」とは、労基
法上の管理監督者(41条2号)に当たらない者で、かつ従業員の意思が反映され
るような民主的な手続で選出された者であることが必要であり(労基法施行規則
6条の2)、例えば親睦団体の代表が自動的に過半数代表となって締結された三六
協定は無効とされています(トーコロ事件)。三六協定の締結・届出により使用
者は罰則の適用を免れますが、三六協定の効力は労基法の規制を解除することに
止まるので、使用者が労働者に時間外・休日労働を命じるには、三六協定のほか
に労働契約上の根拠が必要です。上記判例のように、時間外・休日労働に関して
就業規則の一般的な規定(「業務上必要があれば三六協定の範囲内で時間外休日
労働を命じうる」等)が存在するとき、それが労働契約の内容となっていれば、
労働者は使用者の命令により時間外・休日労働を行う義務を負います。就業規則
が労働契約の内容となるためには、その内容が労働者に周知され、かつ合理的で
なければなりませんが(労契法7条)、上記判例によれば、労基法及び同施行規
則に則った適法な三六協定が存在する限り、ほとんど常に就業規則の合理性が認
められることになります。
ただし、就業規則に基づく一般的な時間外労働命令権が認められる場合でも、個
々の時間外労働命令について業務上の必要性が存在しない場合や、労働者にやむ
をえぬ事由(病気など)がある場合には、その命令は権利濫用に当たり違法無効
と判断される可能性があります。

(3) ポイント
@労基法は、労働者に休憩時間を除き一週間について40時間、一日について8時
間を超えて労働させてはならないと定めています(労基法32条)。労基法上の原
則としては、この上限(法定労働時間)を超えて労働させる旨の労働契約や業務
命令は違法無効であり(同法13条)、労基法32条に違反した使用者には罰則が適
用されます(労基法119条1項)。

Aただし、@災害その他の避けることのできない理由により臨時の必要がある場
合(労基法33条)と、A使用者が過半数労組または過半数代表者との間に労働時
間の延長等に関する協定(三六協定)を締結し、届け出た場合(労基法36条)に
は、上記@の労基法による規制は解除されます。

B使用者が労働者に法定労働時間を超える時間外労働や休日労働を命じるには、
@適法な三六協定の締結・届出と、A時間外・休日労働が労働契約上の義務内容
となっていることが必要です。就業規則に、「業務上の必要がある時は三六協定
の範囲内で時間外・休日労働を命じうる」といった明文の定めがある場合には、
Aの要件を満たすと解されている。ただし、業務上の必要性を欠く場合や、労働
者に時間外労働に従事できないやむを得ない事情がある場合には、時間外労働命
令は権利濫用に当たり、違法無効とされます。

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