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2021年6月のQ&A
【Q】
変更解約告知について教えてください。


【A】
会社が労働条件変更を目的として、現在の労働契約の解約(解雇)と、新契約の
申込を行うことを変更解約告知といいます。
変更解約告知が有効に行われた場合、労働条件変更に同意する労働者は新たな労
働条件で労働契約を締結し直すことになり、変更に同意せず従前の労働契約の存
続を望む労働者は一旦解雇された上で裁判等においてその効力を争うことになり
ます(この他、労働者の「留保付承諾」を認める考え方もあります)。
なお、典型的な変更解約告知は、上記のように労働契約の解約(解雇)の意思表
示と新しい労働契約締結の申し込みが一体となって行われるものをいいますが、
労働条件変更の申し入れに応じない労働者に対する解雇の効力についても、変更
解約告知の問題として論じられることがあります。
用語説明
【留保付承諾】
不利益な変更が合理性があるものかどうか法的な判断を待ってから承諾する、と
いう考え方があります。これを「留保付の承諾」といいます。承諾するかどうか
を留保すると言うものです。しかしこの留保付の承諾は、法的には認められてい
ません。留保つきの承諾は、変更の申出を拒否したものと解釈されます。
(ドイツでは認められている。)

判例【スカンジナビア航空事件 東京地裁 平成7年4月13日】
外国航空会社であるY社は、業績不振による合理化策の一環として、日本支社の日
本人従業員(地上職員・客室乗務員)全員に対し、退職金割増を伴う早期退職募
集と年俸制導入、退職金・労働時間制度の変更、契約期間の導入等の契約条件変
更を伴う再雇用を提案した。全従業員140名のうち115名は早期退職募集に応じた
が、Xら(9名)を含む25名は応募しなかった。Yは、Xらに対して再雇用の場合の
職位(ポジション)と年俸を示した上で、再度の早期退職と再雇用への応募を促
したが、Xらが応じなかったため、Xらを解雇した。Xらは解雇の無効を主張してY
の従業員たる地位の保全等の仮処分を申し立てた。
判決 労働者側敗訴
Xらに対する解雇の意思表示は、雇用契約で特定された職種等の労働条件を変更す
るための解約、換言すれば新契約締結の申込をともなった従来の雇用契約の解約
であって、いわゆる変更解約告知と呼ばれるものである。変更解約告知が行われ
た場合、労働者の職務、勤務場所、賃金及び労働時間等の労働条件の変更が会社
の業務運営にとって必要不可欠であり、その必要性が労働条件変更によって労働
者が受ける不利益を上回っていて、労働条件変更を伴う新契約締結の申込がそれ
に応じない場合の解雇を正当化するに足るやむを得ないものと認められ、かつ、
解雇回避努力が十分に尽くされているときは、会社は新契約締結の申込に応じな
い労働者を解雇することができるものと解するのが相当である。本件においては、
賃金、退職金、労働時間の変更にいずれも高度の必要性が認められ、Xらにこれを
上回る不利益があったとはいえず、解雇回避努力も十分に尽くされている。よっ
て本件変更解約告知は有効であり、Xらに対する解雇は有効である。

2.日本における変更解約告知の法理
変更解約告知は、個別労働契約によって特定され、労働協約等による集団的変更
ができない労働条件を変更するための手段としてヨーロッパ諸国等で発達したも
のです。これら諸外国の中には、たとえばドイツのように変更解約告知の定義や
効力等が法律に規定されている国もあります。
これに対し日本では、変更解約告知法理を正面から認め、同法理の下での解雇を
有効とした上記判例などを契機として、変更解約告知法理のあり方に対する関心
が高まりつつあります。もっとも、変更解約告知に関する法律上の規定は現在の
ところ存在せず、同法理のあり方をめぐっては、なお今後の裁判例・学説の展開
に委ねられた面が少なくありません。

3.変更解約告知の下での解雇の効力
仮に変更解約告知という法理を認めない場合、変更解約告知として行われた解雇
は、単なる解雇として解雇権濫用法理(労契法6条)に基づいてその効力を判断
されることになります。この場合、労働条件変更に同意しなかったことそれ自体
は、解雇の効力を認める根拠にはなりません。
これに対し、上記判例は、変更解約告知法理を正面から認めたうえで、同法理の
下で労働条件変更に応じない労働者の解雇が有効とされるための要件として@労
働条件変更が会社の業務運営上必要不可欠である、Aその必要性が労働条件変更
によって労働者が被る不利益を上回っている、B労働条件変更を伴う新労働契約
締結の申し込みがそれに応じない場合の解雇を正当化するに足るやむを得ないも
のと認められる、C解雇回避努力が十分に尽くされている、という4点を示した。
これは、変更解約告知が労働条件変更のための解雇であることに着目して、労働
条件変更の必要性・相当性(上記@A)と、労働条件変更に同意しない労働者を
解雇することの相当性(同BC)という2つの観点から解雇の効力を判断するもの
と理解できます。
他方で、判例の中には、法律上に明文がないこと等を理由として変更解約告知法
理を否定し、解雇の効力を通常の解雇権濫用法理の枠組みで判断したものも存在
します(大阪労働衛生センター第一病院事件)。
【用語説明】
解雇権濫用法理
解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場
合は、その権利を濫用したものとして無効とする。

4.留保付承諾の可否
ドイツのように留保付承諾が認められると労働者は解雇の危険にさらされること
なく労働条件変更の適法性を争うことが可能になるので、これを認めるかどうか
は変更解約告知法理のあり方を大きく左右します。わが国の民法528条によると、
留保付承諾=条件付の承諾は承諾拒絶として扱われるので、この条文を素直に適
用すると留保付承諾は認められません。しかし、学説上は解釈によって留保付承
諾を認める見解も有力です。
判例においては、労働条件変更に応じない労働者の雇止めの適法性が争われた事
件で、労働者が留保付承諾をしていたことを理由の一つに挙げて雇止めを違法と
した地裁判決が存在しますが、同事件の控訴審判決ではこの考え方が否定されて
います。(日本ヒルトンホテル(本訴)事件 )。
【用語解説】
民法528条(申込みに変更を加えた承諾)
承諾者が申込みに付し、その他変更を加えてこれを承諾したときは、その申込み
の拒絶とともに新たな申込みをしたものとみなす。

5.ポイント
新たな労働条件での労働契約再締結の申し入れを伴った解雇のことを「変更解約
告知」といいます。労働条件変更の申し入れに応じない労働者の解雇をこれに含
めることもあります。変更解約告知は、労働条件変更を目的として行われる解雇
であり、個別的な労働条件変更のための新たな手法として注目されつつあります。
ただし、変更解約告知に関する法律上の規定はなく、判例法理上の効力判断の枠
組みも確立していない状況にあります。

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