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2021年5月のQ&A
【Q】
外国人雇用の労務管理のポイントを教えてください。


【A】
1.外国人ならではの留意点
外国人雇用における実務上の留意点を解説します。まず、総論として労務上の取
り扱いが日本人と同じ場合、異なる場合について整理します。(表1)
外国人雇用状況届出は、雇用保険の資格取得届と一体となっています。逆に、雇
用保険が適用されない外国人を雇用した場合は、別途届出をしなければいけませ
ん。届出を怠ると、30万円以下の罰金が科される場合もあります。
厚生年金の被保険者になる場合は、状況にもよりますが、資格取得届等とあわせ
てローマ字表記の氏名届が必要となります。
一方で、日本人と同じように取り扱わなければいけない点として、まず採用や選
考は国籍や宗教で差別してはいけません。労働法令の適用や、労働社会保険の適
用も日本人と同じですが、母国語を用いるなど外国人が理解できる方法で行う必
要があります。

2.日本で働く外国人に対する法律の適用
日本で働く外国人に対する法律の適用関係を整理すると、基本的な考え方として、
相互の合意によって準拠する法律を選択できることになっています。ただ、日本
の労働関係法令のほとんどは、絶対的強行法規か強行法規のいずれかに属してお
り、法規定と異なる合意は無効とされているので、日本の労働関係法令が適用さ
れることになっています。

3.労働者にあたらないケース
外国人が研修生やインターンとして活動している場合、あくまで技術等の習得が
目的であって就労の義務は課せれていませんので、労働者にはあたりません。
こうした外国人を受け入れている場合、「活動支援金」のような名目で研修期間
中の生活維持に必要な金銭を援助することがありますが、この金銭は給料にあた
らず、所得税はかかりませんし、社会保険も適用されません。ただ、契約上は研
修生として受け入れているにもかかわらず、実態は労働にあたると判断されれば、
労働法が適用され、賃金の支払い等が求められるのは日本人と同様です。
外国人が自営業者として、請負契約で日本の企業と仕事をするケースも散見され
ます。このような場合では、偽装請負契約や労働者供給事業に該当しないよう留
意するほか、請負契約であっても企業が外国人に支払う報酬から、住民税の特別
徴収を求める地方自治体もありますので留意が必要です。
このほか、不法滞在の外国人労働者であっても、労働法は適用されます。ただ、
すべての法律が適用されるわけでなく、たとえば労働災害が発生すれば、労災保
険は適用されますが、失業しても雇用保険の給付は受けられず、年金にも加入で
きません。

4.国籍と労働条件の違い
労働基準法では、国籍による労働条件の取り扱いを禁止しています。外国人であ
るからという理由で賃金を低くするなど、日本人と労働条件に差を設けることは
できません。さらに、多くの外国人労働者は有期雇用で働いており、同一労働
同一賃金が適用されますので、今後は労働条件の違いに関する法律がより厳しく
なります。
コロナ禍では、雇用調整助成金等を活用して労働者を休業させる企業も多くみら
れますが、休業手当等の支払いに関しても日本人同様にしなければなりません。
経営悪化等によりやむなく労働者を解雇等する場合でも、外国人であることを理
由として日本人より不利に取り扱うことはできません。

5.雇用契約と労働条件の通知
雇用契約は口頭であっても成立しますが、労働基準法では、賃金などの労働条件
は書面等により交付しなければならないとされています。これは外国人も同様で
すが、その外国人が日本語を理解できない場合は留意が必要です。日本語で労働
条件を明示し、その契約内容に関して争いが生じた時に、場合によってはその全
部または一部が無効とされ、会社に不利になることも考えられます。厚生労働省
での外国人雇用管理指針においても「外国人労働者が理解できる方法により明示
するよう努めること」とされており、同省は英語・中国語等8ヶ国語と日本語を
併記した外国人労働者向けのモデル労働条件通知書を公表していますので、活用
されるのが良いと考えます。
労働条件通知に関しては、従事すべき業務、職務内容に留意が求められます。
日本では、職務内容等が変わる配置転換や転換などに関して、使用者に比較的大
きな裁量が認めていますが、国によって職務内容も賃金と同じように重要な合意
事項であり、どのような業務を行うのか、内容を詳細に記述するのが一般的な国
もあります。配置転換や転勤等をさせる場合は、労働者と改めて合意を得るのが
一般的です。日本の雇用環境に慣れた外国人であれば問題ありませんが、そうで
ない外国人に対しては、職務内容を丁寧に説明し、詳細な職務記述書を提示する
ほうが適切です。その上で日本の職務範囲の考え方を理解してもらうことが大切
だと思います。

6.就業規則の周知
就業規則が法的に有効になるには、労働者に通知させる必要があります。ここで
ポイントとなるのは、日本語を読めない外国人に対して、どのように周知をする
必要があるかという点です。相手の日本語能力を正しく理解した上で、重要な部
分はできるだけ日本語でまとめ、本人に直接説明するというのが一番の方法です。
もちろん母国語で説明できればそれが一番いいのですが、難しい場合には、世界
的に広く使われている英語で翻訳し就業規則を作成することも考えられます。

7.社会保険の適用
外国人に対する労働社会保険の適用に関する実務上の留意点は、表2のとおりで
す。
まず社会保険の適用ですが、
@に関しては、たとえば日本で働く外国人の給料が、海外にある子会社から直接
支給される場合に、「適用事業所に使用される者」にあたるか問題になります。
個々の状況等によりますので、管轄の年金事務所等に相談してください。
Cの夫婦別姓の国から来日した外国人夫婦の被扶養異動届については、夫婦であ
ることを証明する書類に提出が求められます。
Dの脱退一時金については、多くの場合は企業で申請を手伝うと思いますが、日
本人で働く外国人の滞在年数が伸びている実態に鑑みて、2021年4月から支給上限
年数が3年から5年に改正されます。
労働保険の適用について、労災保険は日本で働く限り適用されますが、雇用保険
に関しては表2のとおりで注意が必要です。

8.社会保障協定
日本と社会保障協定(表3)を締結している国は23ヶ国あり、20ヶ国はすでに発効
されています。但し、中国、韓国、イタリア、中国は保険料の二重負担防止のみ
で、年金加入期間の通算はありません。協定による免除を受けるため、外国人が
本国の年金制度に加入していることを証明する書類として、適用証明書を取得す
る必要があります。
多くの協定国は、日本の派遣期間が5年以内と見込まれる場合、本国の社会保障制
度のみに加入し、日本の社会保障制度加入は免除されます。実務上留意しないと
いけないのは、協定国によって特有のルールがあることです。たとえば、派遣期
間の見込みにかかわらず最初の5年間は免除する国もあれば、資本関係のない会社
間の場合は対象としない国もあるので、個別に確認する必要があります。

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