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1.外国人ならではの留意点 |
外国人雇用における実務上の留意点を解説します。まず、総論として労務上の取 |
り扱いが日本人と同じ場合、異なる場合について整理します。(表1) |
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外国人雇用状況届出は、雇用保険の資格取得届と一体となっています。逆に、雇 |
用保険が適用されない外国人を雇用した場合は、別途届出をしなければいけませ |
ん。届出を怠ると、30万円以下の罰金が科される場合もあります。 |
厚生年金の被保険者になる場合は、状況にもよりますが、資格取得届等とあわせ |
てローマ字表記の氏名届が必要となります。 |
一方で、日本人と同じように取り扱わなければいけない点として、まず採用や選 |
考は国籍や宗教で差別してはいけません。労働法令の適用や、労働社会保険の適 |
用も日本人と同じですが、母国語を用いるなど外国人が理解できる方法で行う必 |
要があります。 |
3.労働者にあたらないケース |
外国人が研修生やインターンとして活動している場合、あくまで技術等の習得が |
目的であって就労の義務は課せれていませんので、労働者にはあたりません。 |
こうした外国人を受け入れている場合、「活動支援金」のような名目で研修期間 |
中の生活維持に必要な金銭を援助することがありますが、この金銭は給料にあた |
らず、所得税はかかりませんし、社会保険も適用されません。ただ、契約上は研 |
修生として受け入れているにもかかわらず、実態は労働にあたると判断されれば、 |
労働法が適用され、賃金の支払い等が求められるのは日本人と同様です。 |
外国人が自営業者として、請負契約で日本の企業と仕事をするケースも散見され |
ます。このような場合では、偽装請負契約や労働者供給事業に該当しないよう留 |
意するほか、請負契約であっても企業が外国人に支払う報酬から、住民税の特別 |
徴収を求める地方自治体もありますので留意が必要です。 |
このほか、不法滞在の外国人労働者であっても、労働法は適用されます。ただ、 |
すべての法律が適用されるわけでなく、たとえば労働災害が発生すれば、労災保 |
険は適用されますが、失業しても雇用保険の給付は受けられず、年金にも加入で |
きません。 |
5.雇用契約と労働条件の通知 |
雇用契約は口頭であっても成立しますが、労働基準法では、賃金などの労働条件 |
は書面等により交付しなければならないとされています。これは外国人も同様で |
すが、その外国人が日本語を理解できない場合は留意が必要です。日本語で労働 |
条件を明示し、その契約内容に関して争いが生じた時に、場合によってはその全 |
部または一部が無効とされ、会社に不利になることも考えられます。厚生労働省 |
での外国人雇用管理指針においても「外国人労働者が理解できる方法により明示 |
するよう努めること」とされており、同省は英語・中国語等8ヶ国語と日本語を |
併記した外国人労働者向けのモデル労働条件通知書を公表していますので、活用 |
されるのが良いと考えます。 |
労働条件通知に関しては、従事すべき業務、職務内容に留意が求められます。 |
日本では、職務内容等が変わる配置転換や転換などに関して、使用者に比較的大 |
きな裁量が認めていますが、国によって職務内容も賃金と同じように重要な合意 |
事項であり、どのような業務を行うのか、内容を詳細に記述するのが一般的な国 |
もあります。配置転換や転勤等をさせる場合は、労働者と改めて合意を得るのが |
一般的です。日本の雇用環境に慣れた外国人であれば問題ありませんが、そうで |
ない外国人に対しては、職務内容を丁寧に説明し、詳細な職務記述書を提示する |
ほうが適切です。その上で日本の職務範囲の考え方を理解してもらうことが大切 |
だと思います。 |
8.社会保障協定 |
日本と社会保障協定(表3)を締結している国は23ヶ国あり、20ヶ国はすでに発効 |
されています。但し、中国、韓国、イタリア、中国は保険料の二重負担防止のみ |
で、年金加入期間の通算はありません。協定による免除を受けるため、外国人が |
本国の年金制度に加入していることを証明する書類として、適用証明書を取得す |
る必要があります。 |
多くの協定国は、日本の派遣期間が5年以内と見込まれる場合、本国の社会保障制 |
度のみに加入し、日本の社会保障制度加入は免除されます。実務上留意しないと |
いけないのは、協定国によって特有のルールがあることです。たとえば、派遣期 |
間の見込みにかかわらず最初の5年間は免除する国もあれば、資本関係のない会社 |
間の場合は対象としない国もあるので、個別に確認する必要があります。 |
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