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2021年2月のQ&A
【Q】
休職制度と職場復帰について教えてください。


【A】
休職とは、労働者に就労させることが適切でない場合に、労働契約関係そのもの
は存続させながら、就労を免除または禁止することをいいます。そのため、解雇
猶予措置としての役割を担っている面があります(傷病休職や事故欠勤休職の場
合に顕著)。このような休職は、就業規則や労働協約の定めに基づき、使用者が
一方的意思表示により発令する場合が多いですが、労働者との合意によって実施
されることもあります。
休職制度は、その内容によっていくつかの類型に分けられます。@業務外の傷病
を理由とする「傷病休職」、A傷病以外の私的な事故を理由とする「事故欠勤休
職」、B刑事事件に関し起訴された従業員に対して行われる「起訴休職」、C他
社への出向期間中に自社での不就労への対応として行われる「出向休職」、D留
学中や公職への就任によってなされる「自己都合休職」、E労働組合の役員に専
念する場合の「専従休職」などがあります。

判例【東海旅客鉄道事件 大阪地裁 平成11年10月4日】
労働者Xは脳内出血で倒れて以降、病気休職に入っていたが、3年間の休職期間満
了前に復職の意思表示をしたにもかかわらず、Y社は、Xには構語障害等の後遺症
があるため就労可能な業務がないとして休職期間満了をもって退職扱いとした。
これに対し、Xは、この退職扱いを就業規則、労働協約等に違反し無効であるとし
て、従業員としての地位確認並びに未払い賃金等の支払いを求めて提訴した。
判決の内容 労働者側勝訴
労働者が職種や業務内容を限定せずに雇用契約を締結している場合、復職の可否
を判断するに際しては、休職前の業務について労務の提供が十全にはできないと
しても、その能力、経験、地位、使用者の規模や業種、その社員の配置や異動の
実情、難易等を考慮して、配置替え等により現実に配置可能な業務の有無を検討
し、そのような業務がある場合には、当該労働者にその業務を指示すべきである。
そして、当該労働者が復職後の職務を限定せずに復職の意思表示をしている場合
には、使用者から指示される配置可能な業務について労務の提供を申し出ている
ものというべきである。
Xの休職期間満了当時の身体の状態は、時間はかかるが杖なしでの歩行が可能で
あり、右手指の動きが悪く細かい作業は困難であるが握力には問題がなく、会話
も相手方が十分認識できる程度に回復していた。他方で、Y社は従業員約2万2,8
00人を要し、事業内容も鉄道事業を中心に不動産売買等の関連事業を含め多岐に
わたって展開する大企業である。これらの事実から、Xの就労可能性を検討する
と、少なくとも工具室での業務については、Xは就業可能であり、また配置替え
することも可能であったと認められる。
また、身体障害等によって、従前の業務に対する労務提供を十全にはできなくな
った場合に、他の業務についても健常者と同じ密度と速度の労務提供を要求する
ことは適切でなく、雇用契約における信義則からすれば、使用者はその企業規模
等を勘案し、労働者の能力に応じた職務を分担させる工夫をすべきである。

2.職場復帰の条件
休職していた理由がなくなることで休職は終了し、職場に復帰することになりま
すが、休職期間満了時点において当該休職事由が依然として存続している場合、
解雇又は自然退職として取り扱われます。休職事由が消滅したかどうかの判断に
関しては、特に傷病休職における労働者の治癒をめぐって争いが生じます。すな
わち、休職していた労働者は、どのような状態にまで回復すれば、解雇又は自然
退職とされずに復職可能と判断されるのかが問題となります。
この点について、判例は、復職の要件とされる「治癒」とは、「従前の職務を通
常の程度に行える健康状態に復したときをいう」(平仙レース事件)と解し、従
前の職務を遂行することが可能な程度に回復していない場合には、復職可能状態
にあるとは認められず、労働者が就労可能な範囲で労務を提供することを希望し
たとしても、使用者にはこれを受領する義務はなく、また、そのような労務提供
を受領するためにそれに見合う業務を見つけなければならない義務もないと判断
しています。
しかしその一方で、当初は軽易業務に就かせることで徐々に通常業務に移行でき
るという回復状態にある場合には、使用者は、労働者の復帰にあたってそのよう
な労働者の状態への配慮を行うことを義務づけられることもあるとされていまし
た。その後、債務の本旨に従った履行の提供があるか否かにつき判断した考え方
が、復職の要件とされる「治癒」の意義についても応用されています。すなわち、
上記判例のように、休職期間満了時において原職に復帰できる状態にはないが、
従前業務より軽易な業務での職場復帰を希望し、当該労働者に労働契約上職種の
限定がない場合には、企業規模などを考慮しつつも、使用者は現実に配置可能な
業務の有無を検討する義務を負うと判断されています。そして、休職期間が満了
した労働者に対して、そのような検討によって軽減業務を提供せずに、退職扱い
や解雇を行った場合には、当該退職扱い等は就業規則上の要件不該当ないし解雇
権濫用として無効とされています。ただし、休職前に既に業務を軽減されていた
労働者の休職期間満了を理由とする解雇について、同じ判断枠組みに依りながら、
復職にあたって検討すべき従前の業務とは、休職前に実際に担当していた軽減さ
れた業務ではなく、本来通常行うべき業務を基準とすべきとして解雇を容認した
ものもあります。
また、職種が限定されている場合においても、休職期間満了時に直ちに従前業務
に復帰はできないものの、比較的短期間で復職可能であるときには、休業又は休
職に至る事情、使用者の規模、業種、労働者の配置等の実情から見て、短期間の
復帰準備時間を提供したり、教育的措置をとったりすることなどが信義則上求め
られるというべきで、このような信義則上の手段をとらずに、解雇することはで
きないとして、解雇を無効とした判例もあります(全日本空輸事件)。
なお、使用者による治癒の判断に関して、労働者は診断書の提出等による協力を
しなければならず、ときには主治医の診断書を提出するだけでは足りず、使用者
の指定する医療機関での受診等が求められることもあります。

3.ポイント
@「休職」とは、労働者に就労させることが適切でない場合に、労働契約関係そ
のものは存続させながら、就労を免除または禁止することをいい、その例として、
傷病休職、事故欠勤休職、起訴休職、出向休職、自己都合休職、組合専従休職な
どがあります。

A 休職制度は、就業規則や労働協約等によって定められ、休職期間の長さ、休
職期間中の賃金の取扱いなどは企業によって多種多様です。

B 休職事由が消滅することで休職は終了することになるが、休職期間が満了し
た時点で、未だ休職事由が消滅していないときには、解雇または自然退職となり
ます。

C 傷病休職において、休職事由の消滅を認めるためには、原則として従前の職
務を支障なく行うことができる状態に回復したことが必要とされますが、職種や
業務内容を限定していない労働者の場合、使用者は、従前業務への就労は無理で
も他に従事できる業務があるか否か、実際に配置することが可能であるかなどを
考慮することが求められます。

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