2008.03.16.
東京告白教会伝道開始50年の挨拶
主の恵みと平安が皆さまの上にありますように。
日本キリスト教会東京告白教会は1958年受難週の主日、世田谷区羽根木町の、好意でお借りしている一室で、伝道所として歩みを始めました。日本キリスト教会教師の渡辺信夫、また教師試補の渡辺鈴女が自給伝道者として宣教の業に仕えて来ました。
半世紀に亙る歩みは、主が全世界に公同の教会を建て、育てて来られた歴史から見て、取るに足りないささやかな営みでありますが、歩み続けた者として見れば、無から有を起こす神の絶大な御業を現実に味わい知る充実した経験でありました。
渡辺牧師はその若き日に戦場に駆り出されて、意味付けの余地なき戦争の無意味さと悪魔性に触れるとともに、死を免れて生還した者として、生かされた生を捧げる伝道者の道に入っていましたが、自己の戦争責任、国家の戦争責任、また教会の戦争責任を考えるうちに、神と世界の前に責任を負うことを求めて行く教会が問われていることを感得して、同じ召しに従う兄弟姉妹とともに新しい教会を建てる歩みを始めました。
そのような志を実行することは無謀であると助言する人々も多かったのですが、私たちの志を理解し、共鳴して、支援して下さった方々も多く、殆ど無一物で歩み始めた群れが、やがて土地を購入し、建物を建てるに至りました。この企画を進めるに際して、私たちは献金でなく、金融機関からの借り入れでもなく、外部の信仰の友から教会債を募り、その債務を返して行くという方式を採りました。常識を外れたこのやり方を認めて下さる方々の好意で、貧しい群れは自立して歩むことが出来ました。
また私たちの教会はここで語られた説教をいろいろな形で公けにするよう努力しましたが、それが広範囲の読者から受け入れられ、教会としては小さく貧しいのでありますが、少なからぬ精神的支援者に取り囲まれて守られたことを感じています。そのような支援者のうちには私たちの存じあげない方も多く、感謝の思いは伝わりきらないと思いますが、主がそれを知らせて下さることを願っています。
神の恵みによるのみでなく、神の御旨のもとにある人々の好意によっても支えられていることを知って、私たちは多くのことを学んで来ました。わけても、仕えられるのでなく仕えるために世に来たりたもうた主に従って、仕える教会であろうとする志をいっそう固くするように導かれたのです。時とともに世界はいよいよ暗くなっていますので、その中で仕えなければならない隣人の多さに気付かせられております。
牧師は強力な牽引力によって群れを前進させることに努めるというよりは、主が教会を建て上げたもうのですから、主の御業に人々の目を注がせるために、低く下って主の御業の土台となっていることが何であるかを見て考えるように努めて来たと思います。宗教改革の精神の継承は初めから目指していたものですが、50年に亙る告白教会の生命を経験し、宗教改革の理解はさらに掘り下げられ、噛みしめられ、古代教会の基盤の深さが宗教改革の備えをなしたことが見えるとともに、現代の危機の中で宗教改革のメッセージが新しく力を発揮することも悟って、それを訴えて来ました。
一昨年、牧師は老齢と過労のゆえに倒れる一時があって、引退を決意したのですが、教会員は牧師を支えて召されている命の続く間は務めを全うさせたいと努力を始めました。その支えによって辛うじて説教の務めを継続するうちに、健康は回復し、85歳になった今も講壇での奉仕を続けることが許されております。このような梃子入れがなかったならば、私たちは伝道開始50年の記念をすることが出来なかったでしょう。一昨年の経験は、開拓伝道の初期の経験を或る意味で越えた、主の御手の確認でした。牧師はこれまで、戦争によって死ぬところだったのに生かされたからには、全力を投じて走らなければならないと考えて走っていました。病気で走れなくなって挫折感を味わいましたが、この経験の機会にもう一度、行ないによらず、信仰による義、の原理を学び直し、肉体的には衰えましたが宗教改革の精神をもっと強固に捉えなおしました。
昨年、告白教会の会員で日本キリスト教会神学校を卒業した篠塚予奈教師試補を伝道師として迎えることが出来たので、今年の50年記念の時には、この後の50年を望み見ることが課題となっています。これからの50年は、これまでの50年と比べようもない厳しい時であろうと私たちは考えます。50年前には予想も出来なかった暗雲が目の前に垂れ込めています。50年後には地球もなくなっているのではないかという不安を語る人は増えています。しかし、私たちは明日終わりが来るとしても、私たちには主がおられ、将来があり、希望があることを証しして立つ所存であります。
日本キリスト教会東京告白教会
牧師 渡辺信夫 伝道師 篠塚予奈
(日本キリスト教会教師 渡辺鈴女)
長老 小塩海平 徳永博 籾井道誉 渡部幸江
執事 徳永静子 籾井佐由美 渡邊榮子 渡部純平