赤外線送受信機 NO.28 (PIC12F629 受信機)

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PIC12F629 を使ったスピードコントローラ内蔵 3 チャンネル赤外線受信機の製作
 PIC12F629 の特徴である低電圧動作と、外部発振回路を使った赤外線受信機を作ってみた。外部発振回路に 6MHz セラミックレゾネータを使い、前回確認した 2.1V から動作することを生かして DC-DC コンバータを省略した。赤外線受光素子も低電圧で動作する NJL74H380A を使ってみる。

 電流容量の少ない電池を使って消費電流の大きなモータを回すと、電池の内部抵抗の影響で電源にかなりのリプルが発生する。このリプルは PIC と赤外線受光素子の動作に影響を与える。DC-DC コンバータを介して PIC と赤外線受光素子を駆動した場合は、その電源リプルは驚くほど抑圧されるので安定に動作するようになる。特に高感度な赤外線受光素子には効果絶大で、通常推奨される RC 回路によるフィルタは使わなくて済んだ。ところが DC-DC コンバータを省略した場合には、電源リプルが赤外線受光素子の動作に大きく影響するので赤外線受光素子の RC フィルタ回路は必須となる。今回は NJL74H380A のレンズ部分を含む不要部分を削り落としたあと、51Ω と 33μF を使ってフィルタ回路を組み込んでみた。


リチウム電池 1 セル用受信機回路図

mode 1, mode 2
IRXS312 HEX ファイル  
Futaba 用 irxs312.hex for PIC12F629
JR 用 irxs312j.hex for PIC12F629
SANWA 用 irxs312s.hex for PIC12F629

 プログラムループは短いほどきめ細かいコントロールができる。そのためにはクロックを速くすればいい。反面、長時間をカウントするためにはカウンタの桁数が増えることになる。受信機では入力信号の先頭を検出するカウンタに 3msec のカウンタを必要とし、受信信号が途絶えたときにスロットルをオフにするためのフェールセーフカウンターに 1.2sec もの時間を必要とする。またエルロン、エレベータ、スロットルのパルス幅のカウントも 1 バイト収まったほうが処理が楽になる。このあたりを考慮した発信周波数の選定も重要である。今回は 6MHz の発振回路で試してみることにした。 6MHz で発振すると PIC では 1 ステップ 4 クロック で実行されるので 1 / 6 x 4 ≒ 0.67μsec となる。 1.2sec を作り出すには実に 180 万ステップも必要なのだ。

 サーボパルスカウント、スロットルパルスカウントはともに 2 度カウントしてその平均値を出力するようにした。これは入力されたパルス幅をカウントするときに、プログラムループのどこでパルス入力があっても検出ルーチンにこないと認識できないため、プログラムループのステップ数に応じた誤差がでてしまう。パルスの終わりを検出するときも同じである。その誤差を少なくするため、前回カウントした値と今回カウントした値を加算して半分にし、平均値を出力するという方法をとっている。この半分にしたカウント値は保存して次回に使う。

 1A もの電流をブラシモータに流すと電源リップルも相当なものになる。モータのブラシ間に 0.1μF のコンデンサを入れて、赤外線受光素子に RC によるフィルタ回路を入れ、受信機を最小限の部品構成で組んだ。リプルの一番多くなる PWM デューティ比 50% 前後の時の電源リプルと受光素子に供給される電源リプルをオシロで確認してみた。

 上が電源リプル、下が赤外線受光素子に供給される電源リップルである。 140mAh リチウムポリマ電池を使い、KP00 + U80 の組み合わせでスロットル約 50% 、モータ電流約 0.5A(1.6W) 入力時のもの。電源ラインで 3mV ほどあるリプルも、赤外線受光素子の電源ラインでは 0.4mV ほどに減っている(注意:上の二つの画像は縦軸のスケールが異なる)。フルパワーでは約 1A の電流が流れたが、モータが 100% ON になるのでリプルは逆に減ってくる。

 ユニバーサル基板に組み込んだ実験用の受信機を Mini-plane 3 に搭載して実際に飛ばしてみた。 FET は回路図とは異なり、テストでは一回り大きな IRF7805 を使っている。赤外線受光素子を垂らしたまま飛ばしたので、飛行中に時々センサの向きが変わり、一瞬受信障害が発生するという場面もあったが、センサをきちんとセットすれば全く問題ないことが確認できた。その後二つのセンサを背中合わせにしたもので飛ばしてみたが、受光安定性が飛躍的に良くなった。スピードコントローラとサーボの分解能は今までにない 38 ステップというきめ細かさが実現できた。細かい部品で構成される DC-DC コンバータを使わなくて済む分受信機の組み立てはとても楽になる。

 サーボを搭載した低速で飛ぶ飛行機に最適な受信機だと思われる。部品も比較的入手の容易なものでまとめてみた。テスト版では 8 ピンのソケットを使い大きな DIP タイプの PIC を使っているが、この状態でも重量は 4.5g と軽量だ。ユニバーサル基板とソケットを省けば DIP タイプで組んでもさらに軽くなる。軽さを極めるなら 0.2mm の基板に SOIC タイプの PIC を使えばいい。おそらく 1g 台でできるだろう。


リチウム電池 2 セル用受信機回路図

 今回は DC/DC コンバータを使わないリチウムポリマ電池 1 セル用受信機を作ってみたが、 2 セルの電池で使いたいという要望もあるので同じプログラムを使ったリチウム電池 2 セル用の回路図も掲載した。こちらは 3 端子レギュレータによる 5V 供給になるので組み立ては楽にできる。 2 セルで使う場合は PIC も赤外線受光素子も、サーボも 5V でドライブするので、赤外線受光素子には 5V 動作の PNA4612M か PNA4614M がマッチする。
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2003/09/12