日韓の古典芸能。   13,01,14

   主題から少し横道にそれるが、今日の産経新聞のトップニュースは、中国の戦闘機が東シナ
  海の上空で米海軍のP3C哨戒機と空軍のC130輸送機に緊急発進(スクランブル)し、執拗に追
  尾していたとの報道だった。中国軍用機による日本領空への接近飛行を受けた日本政府が対
  抗措置の強化を検討していることに反発し、中国側は対応をエスカレートさせているとみられる。
  米国が尖閣は日米安保の防衛対象範囲内とした声明に対する示威行為とも受け止められる。

   この報道は産経だけのニュースで何故か3大新聞や日経新聞では報道されていないが、米中、
  日中の経済交流など吹っ飛んでしまう一触即発の危険を孕んだ出来事と危惧される。
   時あたかも安倍首相は昨日、憲法解釈を変えて集団的自衛権の行使を容認する姿勢を明言
  し、これを訪米の土産にしようとしているとの報道もあった。タカ派の本領を発揮し始めた。
   過去を振り返れば、大小の戦争は概ね些細な局地的な紛争が原因で起こっているのは歴史
  が教えている。よもやとは思うが一歩誤ると重大事(局地戦?)に巻き込まれる瀬戸際にあると
  認識すべきで、今後の一連の報道から目が離せない。

   本題に戻って、昨日横浜能楽堂で行われた「紡ぎ合う日韓の古典芸能」と銘打った文化交流の
  集いに参加した。日韓も竹島をめぐる領土紛争の最中にあって日韓関係は冷えている。
   朴槿恵新大統領との新しい対話による緊張緩和が期待される昨今だが、両国の心ある文化人
  達は文化交流を通じてお互いを理解し合おうとする試みを長年続けている。外交関係が冷えて
  いる今だからなおのこと、こうした文化交流は絶やしてはならない民間外交だと云えよう。

   「紡ぎ合う日韓の古典芸能」の出演者は日本と韓国の古典芸能を代表する音楽家・舞踊家が
  顔をそろえた。韓国芸術綜合学校の梁性玉(ヤン・ソンオク)教授が舞う他、琴系の楽器の伽耶
  琴(かやきん)や牙筝(アジェン)、鉄弦琴などの韓国独特の楽器の演奏者が出そろった。
   一方、日本は東京芸大の深海さとみ准教授、同じく東京芸大の松岡松韻教授の筝曲演奏と、
  常磐津文字兵衛の中棹三味線、現代の日本舞踊界の第一線で活躍する水木佑歌が地舞の名
  曲「鐘ヶ岬」を舞った。最後に日韓の演奏者が日本の筝と韓国の伽耶琴の合奏曲「MATURI]を
  合同演奏して3時間半の祭典が終了した。

  両国の古典芸能はともに発祥はインドなどの西方と考えられるが、長い年月を経るにしたがって
 韓国・日本それぞれの独自の多様な形態となったに違いない。踊りも楽器もかなりの類似性を持
 ちながらも民族特有の様式が出来上がっていて見事な伝統文化となっていた。合奏を聞きながら、
 演奏者達はお互いに、誇りと共に尊敬の念も持っているに違いないと察知した。

   会場の能楽堂は収容人員が250名ほどだがほぼ満員の盛況で、終了後は拍手が鳴りやまず
  日韓両国の芸術鑑賞愛好者の心が完全に一致した瞬間だった。領土をめぐる紛争はあっても
  こうしたしっかりとした民間交流が下支えを続ける限り日韓両国の友好関係は決して揺らぐこと
  はないとの感を改めて感じた一夜だった。

   この古典芸能の催しを企画し実現させた功労者のS女史とM氏は私が親しくしている知人で
  同じく知人で横須賀RCの大先輩のⅠさんから案内状を頂いた。日本はおろか韓国の古典芸能
  にはまるで知識も鑑賞経験もない身だが、冷え切った日韓関係だからこそ隣国人同士の心を共
  有したいと思い、古い友人夫妻を誘って4人で出席した。

   受付にいたS女史が正面2列目の特等席を用意してくれたので心から上演を堪能できた。
  にわか勉強だが日韓それぞれの古典芸能、楽器や踊りも知ることができた。何よりも上演者と
  観客が国境や思想を越えて芸術で結び合う一体感を知ることが出来た。

   横浜能楽堂は野毛の掃部山公園にあり昔の学生時代には県立音楽堂や県立図書館によく通
  ったものだが、当時はまだ能楽堂はなく紅葉坂はでこぼこ道だった。調べてみたら1996年(平成
  8年)に建設されたそうだが、内部の舞台周りから観客席まで、伝統的な能舞台にふさわしい実
  に見事な雰囲気を持った構造になっていた。勿論入場したのは初めてで、この日は全て初めて
  づくしの得難い1日だった。

   上演中は撮影禁止なので事前に
 能舞台だけを撮影しておいた。