信州・飛騨の旅。          11,08,11

   熊谷ではとうとう39度を越す熱暑の夏になったという。連日の猛暑に電力使用量はうなぎのぼり
  で企業も家庭も使用量制限を呼びかけられ四苦八苦である。かといって我慢しすぎると例の熱中
  症に脅かされる。住みにくい世の中になったものだ。アメリカの債務不履行(デフォルト)懸念から
  ドルの信用不安がおき、ドル安・円高が進行して世界中の株価が全面安となり、世界経済の減速
  に拍車をかけている。庶民はただ肝を冷やし固唾を呑む毎日である。外憂内患というが、暑さに
  攻められ一方では景気の悪化に背筋が寒くなる毎日では堪ったものではない。

   暑さを逃れて親子3人でツアー会社の企画に乗って信州と飛騨にバス旅行に出かけた。いうなれ
  ばささやかな避暑旅行・逃避旅行である。行き先は、初日がバスで中央道の駒ヶ根に行き、信州・
  駒ヶ岳のロープウェイに乗って、日本で最も標高の高い駅のある千畳敷カール(標高2600m)を散
  策してその夜は上諏訪温泉に泊まった。折からの諏訪湖の花火を見た。翌日は急な山道の乗鞍
  スカイウェイを登って飛騨の乗鞍岳・畳平(標高2700m)の散策をした。その後は飛騨の秘湯平湯
  まで下りて、シャトルバスで上高地まで足を延ばし、大正池から河童橋まで2時間の散策をした。
   駒ケ岳・千畳敷カールにせよ乗鞍岳・畳平にせよ上高地にせよ気温がほぼ15〜17度というなん
  とも気持ちのいい別天地。畳平ではなんとまだ雪が残っていて若者がスキーを愉しんでいた。
  2700mもの高地になると、霧が突然現れて視界を遮ったと思うと、また突然霧が晴れて2万年前
  の氷河期の名残という山肌の岩壁群や中央アルプスの山々、そして可憐な高山植物やお花畑の
  絶景が目前に現れる。下界の猛暑や浮世の憂さなど暫し忘れる天空の散策であった。
   上高地に一昨年家内と訪れた時にはあいにくの小雨で視界が悪く河童橋からの眺望は楽しめ
  なかったが、今日は素晴らしい天気で、北アルプス、穂高連峰がくっきりと目前に見えてこれこそ
  50年前に感動した河童橋からの景色だと改めて納得したものである。梓川沿いの散策路の田代
  橋を少し小道に入って帝国ホテルに立ち寄り、ケーキセットと飲み物を奮発して振る舞い親子の
  団欒を深めた。

   ここ数年この手の団体バスにも慣れてきて以前のようなぎこちなさもなくなった。人生を愉しむ
  老夫婦が多く参加しているので、言葉少なく遠慮気味に声をかけてくる人や、静かにひとり風景
  を楽しむ旅好きな人など様々である。我々親子はどう映ったのだろうか。二日間の親子水入らず
  のつかの間の夏の旅であった。


  標高2600mの千畳敷カールを散策するハイカー。    散策路に咲く高原の花”くるまゆり”。