新潟の旅。 ![]() 越後三山。新潟を南北に走る魚沼連峰の主峰をなす八海山・駒ヶ岳・中岳の三山を始め 連峰全山が白雪に覆われて青空にくっきりと浮かび上がっていた。上越新幹線長岡駅に向 かう浦佐駅との中間付近の車窓から見えた壮大な大自然のパノラマだった。 この山並みを北越戦争で幕府軍に敗れた長岡藩の敗残兵、河井継之助一行は会津に逃 げ延びようとし、古くは上杉謙信が甲斐の武田信玄と相対し、また小田原の北条攻めにこの 山越えを企てたのであろうか。 新潟に住む学生時代の友人から「冬の新潟は雪景色もいいし、温泉もいいし、酒も美味い から是非来いよ。」と熱心に誘われ、横須賀に住む同じく学生時代の友人夫妻と共に、旧友 3組の夫妻6人で新潟の秘湯「松之山温泉」に集合する前日の新幹線車中の景観だった。 折角の新潟なので少し欲を張り3泊4日の温泉旅行を楽しむ事にした。 約束の前日の3月9日、一足先に夫婦二人で長岡の史跡を訪れ、河井継之助記念館、山本 五十六記念館、長岡城遺跡を見学してから、在来線で弥彦に行き弥彦神社に参拝して駅近 くの温泉宿”だいろく”に宿泊した。親切な宿の女将が駅まで迎えに来てくれ神社にも案内して くれた。家族的でちょっとした気配りがうれしく湯量も豊富で朝夕の食事も晩酌の「清泉」も旅 の疲れを癒してくれた。 因みに神社の礼拝は通常2礼2拍1礼だがこの弥彦神社は2礼4拍1礼だと巫女さんに教 わった。この4拍は出雲大社と宇佐神宮とここ弥彦神社の3社だけだそうである。 翌朝は弥彦線、信越線、上越線と在来線を乗り継ぎ、小千谷に行った。ここで横須賀から 車で来た友人S氏夫妻と落ち合い駅前の蕎麦屋で名物の”へぎそば”を食べ慈眼寺に向か った。慈眼寺はこの旅の目玉の一つで、北越戦争の契機となった河井継之助と岩村精一郎 の談判決裂の会見場のある寺である。会見場となった居間と遺品を見物し記念写真を撮っ て「松之山温泉」に向かった。やはり新潟、なかでもここ松之山は雪深い山奥の温泉で、雪 が3〜5mもの高さになって道路の左右がまるで壁の様に視界を遮っている。4輪駆動が威力 を発揮して雪道も事もなげに走ってくれた。旅館「凌雲閣」に着く。 日本の秘湯を守る会の指定旅館だけあって外装も玄関も客間も風呂も秘湯に相応しい趣 のある旅館だった。築75年の各部屋の欄間や天井、障子などは今では再現できない造作が 施されていた。 上越市在住の旧友K氏夫妻とここで合流し、入浴後居酒屋”滝見屋”に行く。友人二人が 推奨するだけあってここの主は有名な趣味人。本業は蕎麦屋でおいしい山菜や煮物まで何 でも出してくれる。店の中は昭和を感じさせるレトロな店で、ジャズを中心に古い日本の演歌 まで幅広く古いレコードを揃え、骨董品のような真空管むき出しの古いアンプのオーディオで ナマに近い音楽を楽しめる。まるで郷里一関の”ベイシー”を髣髴させる店だった。暖かな家 族的サービスがうれしく蕎麦も最後のコーヒーも格別だった。 宿の部屋に戻っても我々は学生時代の寮生活を大いに懐かしみ夜が更けるまで語り合っ た。古い仲間が集まるととうに忘れていた青春時代が昨日のように思い出される。 3日目はK氏夫妻と別れて魚沼へ。小雪が舞い道路の左右は相変わらず雪の壁。越後の ミケランジェロといわれた石川雲蝶の彫刻を見る目的で、永林寺、西福寺開山堂に行く。 道元を描いた天井彫刻は彫りの深い豪快かつ精緻な彫刻で圧倒される。雲蝶は江戸時代 の彫刻師で魚沼をはじめ多くの寺院に優れた作品を残している。 伊豆には「伊豆長八」という江戸時代の彫刻師がいて、伊豆半島や三浦半島のお寺に同 様の見事な彫刻を残しているが雲蝶のほうがはるかにスケールが大きい。 魚沼から小雪の中を一路山沿いをひた走り群馬県の法師温泉「長寿館」へ。この温泉も 「日本秘湯を守る会」に登録された知り人ぞ知る山奥の隠れた温泉。3つの湯船があり、 「法師の湯」は湯の底に玉石が敷き詰められていて大きな湯殿は井桁状に木の枠で囲まれ ている。上原謙と高峰三枝子の混浴のポスターで有名になった宿である。 お湯は温めで少し長風呂しないと汗が出てこないが、この湯殿は正に秘湯の湯と云うにふ さわしい。入浴後S氏夫妻とゆっくりと雪見酒と山菜料理で3日目の夜を楽しんだ。 4日目、朝食後新幹線上毛高原駅に向かう。あれほど雪深かった新潟とは一変してここ 群馬県の山々も周りの景色も雪の残骸すらない。あるのは上州の空っ風だけ。遠く谷川岳 の威容が望める山道をひた走り下界に降りて1時間ほどで上毛高原駅に到着。無事に新潟 の旅を終えた事と思い出に残る旧友との語らいを感謝してS氏夫妻と別れた。我々は新幹 線で帰路へ、彼らはさらに秘湯を巡るらしい。 ニトロ持参で用心を重ねた旅だった。ともすれば旧友との語らいと美味しい地酒で度が過 ぎそうになるが、隣りにいる大目付の妻が牽制球を投げてくるので、なんとか大事に至らず に済んだ。 帰宅してみると、我が家の庭のモクレンや杏子、辛夷、ボケが一斉に咲いていた。椿も蕾 が大きく膨らみ明日にでも咲きそうだ。4日間見ぬ間に春到来である。旅の疲れを風呂で癒 し秤に乗ったらなんと2キロも増量していたのに驚いた。多分血糖値も高くなっているだろう。 悦楽の見返りとして与えられた試練と心得て、これから数か月減量の耐乏生活を続ける事 になるだろう。 以上3泊4日の新潟旅日記でした。 |
雪景色や趣のある 秘湯の宿など沢山の 写真を撮りました。 この1枚は「松之山 温泉」の「滝見屋」で、 一緒に飲んだここの 主が撮った写真です。 滝見屋は「不良中年 の店」とか「ジャズと 蕎麦の店」などの別 名があるユニークな 店です。 |