京・丹後半島の旅。 ![]() 20日も前のことなので旧聞に属するが、10月6日、2年ぶりに新幹線で京・丹後方面の旅に 出かけた。一昨年7月の信濃・安曇野の旅以来2年間、体調不良とコロナ蔓延のため遠出を控 えていたので久し振りに旅らしい旅になった。 歴史を訪ねる古都京都市内もいいが、今回は京都府の北端の丹後半島周辺の旅にした。 目玉は、京都府宮津の天橋立、京都府伊根町の伊根の舟屋、兵庫県豊岡市の城崎温泉の3つで、 食べ物の楽しみは珍しい豊岡市の出石蕎麦との出会いである。 新幹線米原駅に迎えに来た観光バスでまずは京都府舞鶴に行き、京都丹後鉄道という日本海 沿いを走る1両編成のローカル電車で宮津湾を眼下に見ながら宮津市へ。 同行したツアー客24名、車中で話かけてきた上品な老婦人が94歳で最長老だった。仙台出身 で永くNHK仙台放送局(JOHK)に勤務していたそうで、しばらく戦前・戦中の世情の話が弾ん だ。私は杖が離せず、歩くのも他人よりも遅れ、時には歩くのをやめて休憩する有様で、添乗 員や他の乗客にしばしば迷惑をかけたが、彼女は矍鑠としてみんなと一緒に歩き廻っていた。 ツアーを募集した観光会社クラブツーリズムのバスが後日静岡の富士道路で転覆し観光客が 死傷するという惨事があった。つい直前に利用したばかりのバス会社なのでクラブツーリズム と大書されたバスの車体が横転して無残な姿を見せている映像に見入った。安全に絶対はない。 旅もいつ何が起きるか判らない。しかし起きてしまったら身を守るすべはない。運に任せるし かない。人はみな偶然と偶然の狭間で生きている。 滋賀県米原から福井県、京都府、兵庫県と、丹後半島を一巡りして、宮津と城崎温泉で2泊 した3日間の旅の印象の概略を記す。 ①天橋立。 宮城の松島、広島の宮島と並ぶ日本三景の一つ。生憎の小雨模様で絶景には今一つだったが、 遊覧船で宮津湾を周遊して景色を堪能した。傘松公園で例の「股くぐり」をして天橋立を覗き 込んだ。悪天候だったためか特に印象に残ることはない。 ②伊根の舟屋。 私が最も楽しみにしていたのがこの集落見物。若狭湾の一角に伊根湾があり、230軒余の舟屋 が海辺に沿って立ち並んでいる。 舟屋の1階が船を出し入れする倉庫で2階が生活場所。1階は船の出し入れのため海に面し て傾斜がある。柱や梁は硬い椎の木と松の原木、古く江戸時代の名残があちこちに見られる。 ご多分に漏れず過疎化が進んでいて、あちこちの民家の入り口に「貸し別荘」の張り紙が見 られる。家賃は格安らしく、現役をリタイアした釣り好きのシニアが仲間で別荘を借りて釣り 三昧をエンジョイしているそうな。 伊根湾は周囲が山、南側には青島が湾を囲んでいる地形の関係でいつも風も波もなく絶好の 釣り場になっている。黒潮と親潮の混じった好漁場でブリをはじめ多彩な魚が釣れるという。 もう少し若ければ私も仲間を誘って別荘を利用したかったが、今はそれもかなわない。伊根湾 をクルーズして海からも舟屋群を眺めたが何とも風情のある風景だった。 ③城崎温泉。 伊根町からバスで兵庫県に入り、豊岡市の城崎温泉に到着。城崎温泉は丹後川に沿って7つの 外湯(銭湯のようなもの)があり、これを保護するため旅館の内湯よりも外湯の利用が推奨 されている。 旅館が発行するICカードを提示すると何処の湯でも無料で入ることができる。常連の猛者は 一日で7つの外湯すべてに入るらしいが、我々夫婦は旅館から近い一乃湯という新しい外湯 だけにした。 温泉の行き帰りに腰痛が激しくなり、家内に介抱してもらって這う這うの体で旅館に戻っ た。やはり私のような腰痛持ちには城崎温泉のような外湯巡りは向いていない。 志賀直哉の私小説「城崎にて」をなまじ知っているので期待したが、期待ほどではなかった。 ④出石蕎麦。 兵庫県の出石は「但馬の京都」といわれる旧城下町で、あちこちに武家屋敷の名残が見られ た。お目当ての「出石そば」は、出石焼きの白磁の皿5枚に名物の蕎麦と温泉卵、とろろ、 ネギ、大根おろしとわさびがトッピングされたいる。出石にはそば屋が軒並み並んでいるが、 どこの店でもこのスタイルは変わらないそうだ。味もまあまあで、私たちの入った店は添乗 員推奨の店だった。 ➄その他。 バスでの移動中、若狭湾から屏風岩、立岩を見て、琴引浜に立ち寄った。琴引浜では珍しい 「鳴き砂」の経験をした。日本でも珍しいコウノトリが田んぼでエサを啄んでいるのが散見 された。町で大切に保護している天然記念物だが、めったにお目に掛かれないそうだ。サギ と見間違えるがコウノトリはサギよりも大きくしっぽが黒いのですぐに見分けられる。 「詐欺師」という言葉はこれが語源かなとかってに想像した。 ・旅の楽しみは地方の特色ある食べ物だが、ツアー旅行ではかってに自分の自由にはならな いのであてがいぶちの食べ物しか食べられない、期待していた地方の特色あるカニなどの食 べ物には巡り合えなかったが、出石蕎麦と、やはり出石の小さな和菓子屋のおはぎがとても 美味しかった。この店も添乗員の推奨品である。 出石から一路米原駅までバスで移動し、新幹線で新横浜まで行き帰宅した。杖を突きながら 一生懸命に歩いた旅だったが、怪我も病気にもならずに済んだことでほっとした旅だった。 帰宅してすぐに我が家の風呂に入ったが、やっぱり自分の家の風呂はいちばん。疲れを癒す には最高の特効薬だった。 |