能登〜立山・黒部の旅。    15,07,10

   北陸新幹線が金沢まで伸びたので北陸の観光が格段に便利になった。
  能登在住の弟と狛江に住む幼友達と海釣りを楽しむために、初めて電車で能登を
  訪問した。新幹線の”かかやき”だと東京から2,5時間で金沢に行ける。途中停車
  する駅は大宮、長野、富山の3駅だけだから、随分速いなと実感する。

   金沢から七尾まではJR特急サンダーバードで50分。つまり東京を7日の朝10時半
  に出発して目的地の能登半島石川県七尾市には午後2時に到着した。所用時間は
  何と3時間半だから大阪に行くのと大差ない。日本も狭くなったものだ。先日の不届
  きな新幹線内の放火事件があったものの、日本の新幹線技術の日本一は揺るが
  ない。

   七尾で駅まで迎えに来た弟夫人と、和倉温泉の加賀屋の前にある今評判のケー
  キのパティシエ、辻口博啓の店でケーキを食べて休憩し弟宅に宿泊した。夕食は
  弟推薦の中華料理店。独特の味のする麻婆豆腐が美味かった。

   8日の未明午前4時に家を出て七尾湾から出漁した。弟の会社の釣り名人Oさん
  が何から何までお膳立てして同行してくれたので、正に殿様釣りだった。釣竿、電
  動リール、仕掛け、エサ類、ロッドホルダー、合羽など全て揃えてくれた。

   生憎小雨模様と風のため沖まで遠征ができず、狙っていた「鱈」は諦めたが、次
  に狙ったメバル、アジをはじめメダイ、キダイ、カレイ、キジハタ、サバ、など8種類
  もの魚でクーラーが一杯になった。10個の針のついたサビキに中型のアジやメバ
  ルが3匹も5匹も釣れてくるのには驚いた。幼馴染のMちゃんは2キロはありそうな
  メダイを2匹も釣ってご機嫌だった。

   能登の海の魚影は濃い。相模湾や東京湾とは比較にならないほど海が荒れて
  いない。だいいち乗合船が見当たらない。魚がすれていないのはそのせいだろう
  か。能登は釣り好きにとっては天国である。

   帰宅して主だった魚を氷詰めにして宅急便で自宅に送っておいた。夕方からは
  釣った魚を料理して刺身や煮付け、塩焼きなどにして豪華な夕食になった。
  弟夫婦、我々夫婦、幼友達の5人のいわば”能登サロン”である。女性軍は輪島
  見物に出掛けてきたのでそれぞれ話題には事欠かない。

   翌朝、今回の旅のもう一つの目玉の立山・黒部アルペンルートの旅に出掛けた。
  七尾から電鉄富山駅までは弟の車で送ってもらい、そこからは我々夫婦とMちゃ
  んのアルペンルートを通る旅の始まりである。

  去年の11月に紅葉を見に宇奈月温泉から黒部川沿いにトロッコで欅平まで登って
  きた。欅平には黒部第3発電所があり、この発電所建設には想像を絶する苦闘の
  歴史があった。それは吉村昭の「高熱墜道」に詳しく書かれている。

   今回は富山側から登る念願の黒四ダムの見物。木本正二の小説「黒部の太陽」
  や小説を映画化した裕次郎の「黒部の太陽」で描かれたのは、信濃大町から北ア
  ルプスを貫いてダムサイドに至るいわゆる「大町トンネル」、現在の関電トンネル
  を掘削する物語で、最大の難工事だった大破砕帯の現場描写である。

   死者171名、昭和31年から7年の歳月を要したこの難工事のトンネルは、今では
  トロリーバスでたったの16分で通り抜けられる。トンネルの中ほどに富山県と長野
  県の県境があり、長野県寄りの地点に大破砕帯の現場があった。

   立山・黒部アルペンルートは電鉄富山から立山駅に行き、美女平〜室堂〜大観
  峠〜黒部平〜黒部湖〜黒部ダム〜扇沢〜信濃大町までほぼ6時間、高原バスや
  ケーブルカー、トロリーバス、ロープウェイで移動する。

   標高480mの立山駅から標高2450mの室堂、標高1470mの黒部ダム、標高700
  mの扇沢と一気にアップダウンするので高所恐怖症の私には少々しんどい。

   生憎この日は濃霧が一帯を覆っていたので雄大といわれる景色は全く見ること
  が出来なかった。しかし黒部川上流に建設されたアーチ式のK四ダムはさすが
  にスケールが大きく、ダムの高さが186mと日本一を誇るその威容に圧倒された。
  日本を代表するダムだけに、困難を極め多数の犠牲者を出した建設工事も頷け
  るものがあった。


   室堂の立山ホテルのレストランの昼食は富山名物の白エビのかき揚げうどんを
  食べたが、揚げ油が悪く、うどんは伸びているし、サラダは萎れていて、結構な値
  段の割には味はいまいちだった。標高2450mと日本一の高さにあるホテルのラン
  チだからこんなものなのだろう。仕方がない。

      

   帰りは信濃大町からは大糸線で松本に出て、JR特急スーパーあずさで新宿に
  向かった。新宿で彼と別れて帰宅した。幼馴染の彼とは3日間、釣りと黒部見物を
  共にして、久し振りに長い時間いろんな話が出来た。

   明日は私の78歳の誕生日。幼少のころからの親友との一生の思い出に残る、
  又とない3日間の旅だった。