初秋の上高地・蓼科。    09.09、29〜30
   
   残暑が遠のくと、季節は露骨なほどに秋らしい顔を見せ始める。雲の形は軽やかになり、秋の花々が季節
  を彩り、夜は虫の声が賑やかさを増す。旅が恋しい秋本番である。

   家内が申し込んで参加を予定していた旅行会社の上高地探訪ツアーが応募者不足で中止になり、シャンソン
  のコンサートも都合で行けなくなって、楽しみにしていた家内は少ししょんぼりしている。こんな時には頼もしい
  男の出番となる。4年前に蓼科に完成したT社のおそらくは日本一の豪華なテラス形式の保養所「テラス蓼科」
  を急遽キープし、1泊2日で初秋の上高地・蓼科探訪のドライブに出かけた。往復約700キロの旅である。しか
  しこの日と翌日の2日間は予報ではあいにくの小雨模様。果たして上高地からの北アルプスや蓼科からの八ヶ
  岳の眺望は?心配しながら朝4時半出発。八王子インターから中央道松本IC、158号線を走り上高地の手前
  の終点沢渡(さわんど)まで約5時間。沢渡でシャトルバスに乗り換え20分で大正池で下車。ここからは上高地
  の河童橋まで梓川沿いに約2時間のトレッキング。あいにくの小雨は降り止まず、散歩には支障はないものの
  お目当ての北アルプスは遂に小雨煙る雲に隠れてその姿を現すことはなかった。

   思えば45年前、友人4人でここ上高地から徳本峠を経て長塀山、蝶ヶ岳に登山した折、見上げた穂高連峰
  の素晴らしさを今も忘れることはない。蝶ヶ岳(2669m)の山小屋での寒い朝、目の前に拡がる奥穂、前穂、
  西穂、右奥の槍ヶ岳、左奥の焼岳などの山々が、昇る朝日に照らされて次第に赤くその頂を染めていく一大
  パノラマを見て、神の存在を意識した記憶は決して忘れることができない。

   河童橋からもその片鱗が見えるはずなのだが今日は小雨のためそれは叶わない。しかし大正池から河童
  橋までの2時間の散歩は、山々が紅葉の兆しを見せていて十分に上高地の自然の素晴らしさを満喫させてく
  れた。奥入瀬を十和田湖まで歩いた時の感覚に似た沢登りであった。この日の宿泊は「テラス蓼科」。松本
  インターから諏訪インターまで戻ってここから蓼科まではほぼ1時間の距離。途中松本市内の松本城などを
  見物して蓼科に到着。「テラス蓼科」の隣は「T社ゲストハウス」。ここには何度宿泊したことだろうか。Tグル
  ープの中長期の経営戦略をグループ会社13社の仲間達と泊りがけで議論した懐かしい宿舎である。そして
  息抜きは道路を隔てた目前の蓼科高原ゴルフ場でのプレーだった。あれもこれも8年前までの昔のことであ
  る。

   新設された「テラス蓼科」はゲストハウスに勝るとも劣らぬ広大な敷地に建つ豪華でゆったりとした建物で、
  部屋といい施設といいサービスといい一流ホテルに遜色のないものだった。露天風呂からは八ヶ岳がパノラ
  マとなってその勇姿を見せてくれるはずなのにやはりこの日も翌朝も見えずじまいで、昨日といい今日といい
  お目当ての山の景観には遂に恵まれなかった。
夕食、朝食ともにバイキングで質・量ともに不足はなく、特に
  1600円のフリードリンクはあらゆる種類のアルコールをお変わり自由という魅惑的なメニューで、疲れた体
  を露天風呂で癒した喉にはまさに干天の慈雨という恵みの命水であった。


   朝9時にチェックアウトして周辺の蓼科湖、横谷渓谷、乙女の滝、などを見物して道の駅で土産を買い一路
  中央道、東名高速をひた走り、実測往復670キロ。体調を気にしながらのんびり走った二日間の初秋のドラ
  イブを無事に終えた。心残りはせっかく信州に来たのに名物の信州蕎麦を食べ損なったことである。
 大正池から梓川沿いに河童橋
 まで歩く途中で。

 近くの上高地帝国ホテルに立ち
 寄る。オムライスが定番のお勧
 めだが、2800円の料金が高い
 か安いかはその人の価値観です。