独法:海洋研究開発機構(JAMSTEC)見学   09,12,10 

   独立行政法人が揺れている。天下りの温床、高額な報酬、事業の必要性、収入に占める国費の割合の大きさ、
  など国民の疑惑が高まり、連日報道された事業仕分けでも国民の関心を呼んだ。そんな中で、先日訪問した独
  法:宇宙開発センターについでまたまた独法:海洋研究開発機構の見物のチャンスがあった。海洋研究開発機
  構(Japan Agency for Marine-Earth Science and Technology ・・JAMSTEC)は、横須賀市の追浜、つまり私の
  勤務先の近くの港湾に本部を持つ世界でも有数の海洋研究所として知られている独立行政法人で、日産自動
  車、住友重機と隣接した広大な旧軍港払い下げ敷地にいくつもの研究所を所有している。昭和46年に設立され
  発展を続けてきた研究所だが、近くにありながらついぞ訪問の機会がなく、退職して8年後ようやくその機会に
  恵まれた。

   最近の新聞報道によればこの機構の理事長は5代続けての天下り、国の支出額年419億円は収入に占める
  国費の割合が91%、つまり完全な国費依存体質の機構である。事業仕分けでも格好の餌食になり、本年来年
  の予算額は10%以上の減額になるそうだ。

   ところでこの訪問の目玉は、有人潜水調査船「しんかい6500」を見学することにあった。「しんかい6500」は
  最大潜航深度6500mという世界一の有人潜水調査船で、日本近海だけでなく太平洋、大西洋、インド洋など
  で海底の地形、地質、深海生物などを調査研究する現役調査船。宇宙飛行士の毛利さんが2003年にこの船
  に乗り南西諸島で潜航した実績があり、毛利さんは地球の外側と地球の内部に最も遠くまで移動した人間とい
  うことになる。「しんかい6500」はこの日も海上で活動中のため実物は見ることができなかったが、実寸大の
  模型と既に引退した「しんかい2000」を見て乗り込むことができた。

   「しんかい6500」の居住空間は内径2.0mの耐圧殻の中で、そこにパイロット2名と研究者1名が乗り込む。耐圧
  殻の中には計器類などが設置されているため、居住空間はもっと狭くなる。耐圧殻は軽くて丈夫なチタン合金で
  できており、厚みが73.5mmある。水深6,500mでは水圧が約680気圧にもなるので、耐圧殻の少しのゆがみが破
  壊につながる。そこで、可能な限り真球に近づけられていて、その精度は直径のどこを測っても0.5mmまでの誤
  差しかない。因みに建造費を聞いたら、約14〜5億円とのことだった。有人船としては最大潜航深度6500mを
  誇る世界一だが、無人探査機「かいこう7000」は最大7000m、さらに大深度小型無人探査機ABISMOは最
  大10,258mの実績がある。世界で最も深い海はマリアナ海溝だが、現在のところアメリカの無人探査機がこ
  のマリアナ海溝で最深度を記録しているとのことだった。

   世界では日本、フランス、ロシア、アメリカが海洋探索船の技術を競っているが、予算の緊縮のため技術競争
  に遅れをきたす懸念があるようで、案内担当の若手女性技術者は控えめだが真剣に思うところを語ってくれた。
  「なぜ一番でなければならないのか?」民主党の蓮舫代議士の早口でまくし立てる鋭い舌鋒に筋道立てて論理
  的に応えられる官僚はいるのだろうか。
  「しんかい6500」の実物大模型。

  全長9,5m、幅2,7m、高さ3,2mは、宇宙セン
  ターで見た気象衛星ひまわりとほぼ同じ大きさ。

  居住空間の耐圧殻の中に入ってみたが実に狭い。