深川散策と深川めし。        09,07、28

  時代小説にはしばしば深川が登場する。池波正太郎しかり藤澤周平しかり。深川の裏店を舞台にした庶民の
 世話物、小名木川や深川不動尊、富岡八幡周辺で展開する祭りや捕物帳などは、時代小説の格好の舞台に
 なっている。鬼平犯科帳に登場する小名木川だけでも、「掻堀のおけい」「雨引きの文五郎」「尻毛の長右衛門」
 「討ち入り市兵衛」など多数あり、平岩弓枝の「御宿かわせみ」でも、「秋の蛍」「忠三郎転生」「江戸の湯船」
 などに小名木川が登場する。深川を訪れたい魅力は他にもある。江戸勧進相撲の発祥の地が、ここ深川の富
 岡八幡宮だし、あさりをふんだんに使った名物「深川めし」も食べたいし、江戸の「粋」の象徴、辰巳芸者のきっ
 ぷのいい啖呵に出会えたら望外の幸運というものだ。行きたいと思いつつもまだ深川周辺は歩いたことがなか
 ったので、JASSの企画に便乗して魅力あふれる深川探訪に出かけた。


  京急線・大門で大江戸線に乗り換えると3駅で門前
 仲町に着く。門前仲町という名前も江戸時代から続く
 古い地名で深川にまつわる時代小説によく登場する。

 ここは深川不動尊。江戸情緒を色濃く残す深川の中
 心街で縁日には参詣者で賑わい多くの露店が並び
 盛況を呈します。


  富岡八幡宮は江戸勧進相撲発祥の地として有名。
 本場所が本所回向院に移るまで、ここ八幡宮の境内
 は100年間も大相撲の本場所が行われてきた由緒あ
 る地。右の碑は第12代横綱陣幕久五郎を発起人とし
 て明治33年に歴代横綱を顕彰するために建てられた
 もので、初代明石志賀之助から69代白鵬までの四股
 名が刻まれている。新横綱誕生の時には相撲協会立
 会いで刻名式が行われ、新横綱の土俵入りが奉納さ
 れるそうだ。
 この他、清澄公園や出世不動尊を訪れ、最後は八幡
 宮境内にある食べ物処「深川宿」でお目当ての深川
 めし。いうなればアサリの味噌汁のぶっ掛け飯という
 ところだが、これが江戸庶民に好まれた下町の味と
 いうところか。辰巳芸者風にきっぷのいい女将を眺め
 ながら、例によって冷酒で存分に粋な江戸を五感で
 味わい、仲間とゆっくりと歓談して散会した。