北陸3県の旅。      20,03,05

   新型ウィルスが世界中に拡散し、WHOによれば感染者は10万人を超えたという。
  特に日本、韓国、中国、イラン、イタリアで患者が増えている。政府は、小中学校の
  一斉休校、各種イベントの自粛要請、中国、韓国、イランからの入国制限、コロナ対
  策臨時特例法制定と追加予算措置、ワクチン開発促進、などの対策を急ピッチで
  進めていてその効果が期待されるが、如何せん対策は遅きに失した感は否めない。

   世の中が厳戒態勢の中で、参加するかどうか迷っていた富山、石川、福井の北陸
  3県のツアーに結局は参加してきた。家内の誕生記念を兼ねた旅行である。

   旅行会社によれば、当初の参加予定者は35名だったが次々にキャンセルがでて、
  当日集まった旅行客は12名、実に3分の2の人がキャンセルしたので、結果的には
  バス席もゆったりできた快適な旅になった。

、  こんなにキャンセルがあってどこが赤字を負担するのか知らないが、旅行会社や
  バス会社、食事処や宿泊旅館は大打撃だったことだろう。他人事ながら気になる。

   外出自粛の余波は全国の交通機関や宿泊需要に及んでいる。 今朝の日経新聞
  によれば、航空便は国内線予約が4割も減り、新幹線利用客も指定席予約客が前
  年比で5割も減った。貸し切りバス事業者は1~4月のキャンセル数は1万1000件以
  上に上っている。旅館・ホテル宿泊予約も減っていて、3~5月の予約は約155万人。
  前年同期に比べると45%も減ったという。

   国内旅行客の減少が長引けば倒産やリストラのリスクが高まる。宿泊業者などは
  すでに立ちゆかなくなっているところもあるらしい。景気減速に嫌気がさして株価も
  アメリカに連動して大幅な下落が続き、世界同時株安が進行している。

   今回利用した石川県の地元のバスの添乗員さんによれば、ここ数年で驚いた事
  が二つあると話していた。

   一つは暖冬異変で、いつもは大雪になる金沢の兼六園や福井の越前岬に雪が降
  らなかった事、二つ目は観光客が激減したことだそうで、兼六園も福井県の三方五
  湖もいつもなら観光スポットとして大混雑するのに、閑散として観光客はまばらな状
  態なのだという。

   そういえば新幹線も東京駅構内も、宿泊した山代温泉も人はまばらで、横須賀線
  ですら空席が目立っていた。中国の観光客が減ったことと新型ウィルス騒ぎがこん
  な珍風景をもたらしたのだろう。

   ウィルス対策を娘に厳命されて手渡された除菌マスクと、除菌ティッシュを持ち、
  感染予防に万全を期して旅に出かけたが、旅先の石川県や福井県の地元の人達
  は感染者が少ないせいか、それほどの危機感は持っていなかったように見えた。
  むしろ学校の一斉休校などは迷惑と思っている地元民が多いように感じた。
  人混みが多くて感染の危険が高い都会と、北陸の地方都市では住民の緊迫感に
  かなりの温度差があるようだ。

   今回の北陸の旅は、3月1日~3日までの2泊3日の旅。加賀山代温泉、5つ星の
  宿 「瑠璃光」に連泊して、冬の北陸名所見物と旬のブランド食材を堪能するという
  スケジュールに無理のないゆったりした贅沢な旅である。

   行きの北陸新幹線の車中から見える雪の立山連峰はいつもながら雄大で、快適
  な旅を予感させるものだった。

   初日;新幹線の富山駅で下車、早速富山市の食事処で富山湾寒ブリのしゃぶしゃ
  ぶの昼食を食べ、世界遺産の五箇山に行き、山代温泉に宿泊。さすがに富山湾の
  寒ブリは脂がのって我々の本拠地の相模湾のイナダやワラサとはまるで味が違う。

    

   宿舎「瑠璃光」の食事は、夕食朝食とも定番のバイキングではなく個別の会席膳
  なので年寄りにはうれしい。石川県の自慢料理を心行くまで堪能した。

   2日目;福井県の三方五湖の展望台から若狭湾の絶景を見物して、小浜漁港で
  若狭湾トラフグの昼食。ふぐ刺し(てっさ)、身皮の湯引き、フグチリ鍋(てっちり)、
  フグ雑炊に女性陣から歓声が上っていた。そういえば私もフグ料理を食べるのは
  20数年ぶりだと思う。名古屋の某専門料理店で食べたとら河豚の焼き白子の味が
  忘れられない。

   次に曹洞宗大本山永平寺へ。2009年にゴルフ仲間と5人で「おわら風の盆」を見
  に呉羽に行った時に永平寺を参拝しているので11年ぶりである。あの時はゴルフ
  もやった記憶がある。

   当時は長い回廊も平気だったが、今回は何と疲れるのだろうと少々へたばってし
  まった。小雨が降り出したが、添乗員さんとガイドさんが、「弁当忘れても傘を忘れ
  るな、北陸道」の例えのある北陸なので、この程度の雨は降ってもすぐにやんだり
  します、といった通りにすぐに雨は上がった。宿舎「瑠璃光」にこの日も連泊。

   夕食の会席料理は量も質も満足で大変美味いが、連日朝夕共に醤油が出てこ
  ない。醤油なしの食事が続くのは東北育ちの私には耐えられない。家に帰ったら
  醤油を沢山かけた納豆飯を食べよう。

   3日目;福井県三国市の東尋坊や芦原温泉をバスの車窓から見て、越前海岸を
  ドライブ。越前岬の公園で水仙を見物して料理旅館でタグ付き越前ガニのフルコー
  スの昼食。ツアーの料理なのでカニの身が薄いのではと心配したが、1匹丸ごと出
  されたカニは少々小ぶりだが姿が立派で、結構身が厚かったので安心した。

   カニの刺身、炭火焼きガニ、カニの姿茹で、カニグラタン、カニの茶碗蒸し、カニ
  味噌、カニ飯とカニスープ、最後にカニ雑炊、とカニのオンパレードに大満足だった。

   当地のカニはズワイガニ、俗に越前ガニと呼ばれるカニで、黄色のタグが付い
  ているブランドガニである。甲羅を外して味噌を食べた後で、甲羅に熱燗の日本酒
  を入れて飲むのは酒飲みにはこたえられないが、禁酒中の身なので止む無く断念
  した。そういえば、カニのフルコースも20数年ぶりになろうか。

   昼食後石川県に戻り、片山津ゴルフ西コースの横を通って金沢市の兼六園へ。
  冒頭に書いたように、観光客はまばらで庭内にはいつも見かける外国人の姿は
  少ない。冬の風物詩の「雪つり」は見事だが、雪あってこその雪つりだから趣は半
  減だった。ガイドさんによれば庭内の維持費は年4億円、雪つりの費用は1千万円
  だそうだ。

   日本三大名園のうち、水戸の偕楽園は「梅」、岡山の後楽園は「竹」、ここ兼六園
  は「松」が有名、これで松竹梅がそろうわけだが、三大公園すべてを見た我々とし
  ても、それぞれ趣があってどの公園がよいかの優劣はつけられない。

    

   兼六園に別れを告げ、金沢駅から一路東京へと帰路に着く。旅館の会席料理を
  はじめ、寒ブリのしゃぶしゃぶ、フグ料理、カニ料理、と贅沢三昧の3日間だったが、
  帰宅して我が家の風呂に入り、ふかふかの布団の寝床に入ると、疲れがいっぺん
  に吹っ飛んだ。やはり住み慣れた我が家が一番だ。

   これが外出が億劫になった老人の偽らざる心境である。しばらくは遠出の旅は
  敬遠することにしよう。まずは新型ウィルスに無縁だったことで良しとしよう。