ささやかな小旅行。  20,10,17

   久し振りに箱根カントリークラブの同好会「三友会」の仲間たちとゴルフを楽しみ、
  ゴルフが終わったら家内と待ち合わせて箱根で1泊しようと予定を立てた。

   時節柄もあり自分の体調もあるので、大げさな遠出ではなく 「GO TOトラベル」
  を使ったささやかな県内小旅行とした。ところが生憎、当日は小雨になり、やむを
  得ずゴルフは不参加、旅館での宿泊だけにして昼前にゆっくりと箱根に向かった。

   箱根小涌園の近くにある築140年の老舗旅館「三河屋」は、広大な敷地と重厚な
  造りの玄関廻り、廊下や部屋や調度品も精緻な作りで、まるで大正時代にタイム
  スリップしたような箱根第一級のレトロな老舗旅館だった。

   芦之湯の松坂屋本店旅館と並び称される格式高いこの名旅館も、遂に経営が
  行き詰まり、今年の3月に倒産して藤田観光が買い取って跡を継いでいる。
   3年前に親戚のK夫妻と泊まった松坂屋本店旅館も、三河屋同様に破産・再生
  の道を歩んでいて、さすがの箱根の老舗旅館も「老舗」の看板だけでは生き残れ
  ない厳しい生存競争にさらされている。

   家内が「箱根観光旅館協会」と連絡を取って、「GO TOトラベル」の割引を活用し
  た。宿泊費は△35%、神奈川県民割引き△5000円/人、さらに地域共通クーポン
  7000円がついて、なんと通常24000円/人が半額以下の実質7000円強で宿泊でき
  たことになり、大儲けをしたような気分になった。

   このクーポン券は2日間のみ有効とのことなので、湯本駅周辺の商店街で土産
  物の買い物をして昼食をとり、7000円のクーポン券を使い切って早目に旅館に向
  かった。

   湯本駅周辺の商店街は普段は車で通り過ぎるだけなので、街並みをゆっくりと
  買い物をして散策するのは何年ぶりだろうか。旅館着は15時。

   案内されたのは二間続きの和室。床の間には秋の七草の生け花、障子や欄間、
  掛け軸は現在ではめったにお目に掛かれない凝った時代物、風呂も落ち着いた
  露天風呂で、夕食は伊豆の山海の珍味が並んだ。従業員の接客態度もきめ細や
  かでまずまずの好印象の旅館だった。

   翌朝は昨日とうって変わって快晴で、紅葉が始まった本来の箱根の景観を取り
  戻していた。朝食を済ませ旅館の隣にある岡田美術館に立ち寄った。

   伊藤若冲没後220年と銘打った絵画展を鑑賞した。箱根で若冲特別展を見られ
  るとは幸運だった。帰りの道すがら、小田原にある箱根CCのゴルフ仲間のTさん
  の営む老舗かまぼこ店「田代総本店」に立ち寄った。

   150年続いた老舗かまぼこ店だが、競争激化で経営が困難となり、遂に今月末
  に閉店することに決め、いまは月末までの閉店セールをしていた。生憎本日分は
  売り切れとのことで店は閉まっていた。店主のTさんにも会えなかった。

   箱根もご多分に漏れず、ゴルフ場といい老舗旅館といい老舗かまぼこ店といい、
  栄枯盛衰、弱肉強食の波が押し寄せている。

   ここ数か月、いつも予定を立てては雨で流れている箱根CCだが、とうとう昨日も
  プレーできなかった。ここでプレーをするのもかれこれ30年以上になり愛着が深い
  箱根だが、私も寄る年波には勝てず、今年いっぱいで箱根CCのゴルフ会員権を
  売却することにしている。それだけに昨日のゴルフが流れたのは残念だった。

   30年以上前から少なくとも月1~2度は訪れていた箱根だが、もう頻繁に箱根を
  訪れることはなくなる。ゴルフ場だけでなく観光スポットのあちこちにも立ち寄った
  ので人一倍思い入れが深い。

   若い仕事人間だったころ、静岡県の裾野市にある工場に2年間単身赴任した時
  には、毎週自宅から箱根の乙女峠を越えて行き来したし、会社の保養所が箱根
  にあったので、そこを拠点にしてゴルフ場に行く便利さも味わった。

   思い出深い当時の仕事仲間たちの多くが鬼籍に入ってしまった。すべては幻の
  夢のまた夢である。