五色沼散策。           09,10,22

   気温が摂氏5度に近づくと紅葉がピークになるのだそうだ。まだ紅葉は7,8分だという情報だったが、何10年
  振りかで裏磐梯・五色沼の紅葉を見に出かけてきた。家内が例の日帰り格安バスツアーに申し込んだ団体バス
  ツアーの企画である。この手のツアーは圧倒的に女性の多いのが通例で、ご多分に漏れず賑やかな中高年女
  性のおしゃべりと笑い声が一日中バスの中に充満している。何せ日帰りの裏磐梯という強行軍だから、散策す
  る時間よりもバスの中にいる時間のほうが長い。これに耐えられないとツアー客失格なので、最近は老人特有
  の馬耳東風の特技を発揮してこうした雰囲気にも手馴れている。朝5時半に自宅を出発して帰宅22時半の延
  べ17時間は老人にはきついスケジュールで、大変疲れるバスの旅だった。

   五色沼は明治21年に磐梯山が噴火してできた湖沼群のことで五色沼という沼は存在しない。散策路には40
  以上の沼が点在している。バスが五色沼の最初の毘沙門沼に到着し、ここから赤沼〜深泥沼〜竜沼〜弁天沼
  〜青沼〜柳沼と、ほぼ2時間、紅葉と多彩な色彩を見せる沼を見ながら散策した。この上ない秋日和・行楽日和
  で、沼の水も紅葉も、遥かに見える磐梯山も秋らしいきれいな景色を見せてくれた。紅葉はほぼ80%というとこ
  ろだったが黄色の中に赤がちりばめられた紅葉が見事で、五色沼の次に立ち寄った中津川渓谷などはあたり
  一面の紅葉で、ツアー客一同一斉に歓声を上げていた。

   五色沼はたしか学生時代に寮の仲間達と一緒に遊びに来たと記憶しているが、何せ50年以上昔のことで、
  景色もルートも一緒に来た仲間の顔も何もかも記憶にない。変化する湖水の色がかすかに記憶の隅にあるだ
  けである。人間の記憶とは不思議なもので、子供のころのどうでもいいような些細なことが記憶に残っている
  かと思うと、肝心の大事なことを失念していることが多々ある。何を記憶して何を忘れるかはその人の価値基
  準の優先度によって脳が勝手に決めているのだろう。だから他人の記憶力のことをむやみに嘲笑してはいけ
  ない。価値基準の優先度は人によって千差万別だからである。脳の不思議、脳の素晴らしさというものだろう。
  「友人が一人できた時、その人は一人の友人を失っている。」と昔誰かに聞いたことがある。そんなものだろう
  と妙に納得した「記憶」がある。
   
   尤も、新しく記憶するものが次第に何もなくなって、忘れることだけが加速する年齢に近づいているので、「忘
  れることができるのが人間の脳の素晴らしさだ。」などと悠長に悦に入っている訳にはいかない。無理をしない
  で貪欲に、「忘れること」以上に「インプット」することに努めることにしないといずれ何もなくなってしまう。
    五色沼の散策はまず毘沙門沼から。
    後方の山は磐梯山。
    
    この写真では紅葉は見えないが周辺
    は見事なものだった。
   ほぼ8分どおり紅葉した五色沼の木々。
   日光が差し込む瞬間の写真は珍しい。。