秋の箱根CC。  14,10,06

   我が家の庭からいい匂いが漂ってくる。金木犀である。金木犀には雌雄があるが、
  日本には雄の樹だけが渡来したと聞いたことがある。いわば単身赴任ということになる。

   箱根CCのクラブハウスから10番のショートホールに降りていく角にいい匂いのする樹
  がある。白い細かな花の咲く樹で、葉の縁が鋸の歯のようなので、もしやと思いその道
  に詳しい知人に訊いたらやはり銀木犀との事だった。金木犀ほど強くはないが微かに
  いい芳香を放っている。銀木犀も金木犀同様単身赴任で、日本には雄だけあって雌の
  樹はないらしい。

   銀木犀の古い枝の葉はヒイラギのようにギザギザになる。ヒイラギは日本には雌雄が
  あり、ヒイラギの雌の樹と銀木犀の雄が混血してヒイラギ木犀と呼ばれる交配種が生ま
  れたそうだから、きっとこの箱根の白い花はヒイラギ木犀に違いない。

   中国では木犀の事を桂花といい、匂いのいい桂花酒は金木犀の花を使っている、な
  どと植物には全くの素人が俄か知識を得て、あれこれ楽しい夢想をしながら10番ホー
  ルに向かった。

   箱根CCは「壺中天地」といわれて、外輪山にすっぽりと囲まれた国立公園の真只中
  に位置する名門ゴルフ場なので、私の気が付かない自然の動植物が、何万年かの悠
  久の時を経て我々の眼前にひょっこり現れては目を楽しませてくれる。

   ゴルフ場を出ればすぐに広大な仙石原で、秋には高原一帯は黄金色のススキの穂で
  覆われる。仙石原を訪れる観光客が必ずカメラを向ける絶好の観光スポットである。

   毎月1回箱根CCでゴルフを楽しみ、四季それぞれの雄大な景色と草花、時につがい
  の雉やキツネやリスなどの小動物を発見する喜びはそうそう味わえるものではない。
  箱根のゴルフ場に来る幸せをつくづく実感する昨今である。