「 天狗会。」    17,08,10

   この所囲碁の話ばかりで恐縮です。
  昔の囲碁仲間のH自動車元会長のK氏から突然丁重な手紙が来て、巌流島の決闘
  ならぬ囲碁の挑戦状を受け取ったことは、以前紹介したが、いよいよその当日が来
  たので、指定された新横浜駅前にある碁会所「白百合」に出掛けた。

   ここ2週間ほど朝昼夜を問わず、さながら若い時の受験勉強の様に囲碁の勉強を
  してきた。かって愛読した囲碁講座「囲碁有段者特訓コース」全5巻、「囲碁高段者
  特訓コース」全4巻を並べて、序盤(布石)、中盤(戦い)、終盤(ヨセ)の手筋を復習
  し、息抜きに、「呉清源打碁集」を並べて秘芸の技を鑑賞した。

   一日中囲碁雑誌を読み碁盤に向き合ってきたので、若干だが囲碁の勘が戻って
  きているのを実感していて多少の自信はあった。

   碁会所「白百合」の席亭は西田晴美さんという全国囲碁界に知られた女流アマで、
  お嬢さんは小山(旧姓西田)栄美女流6段、娘婿の小山竜吾6段は、現在日曜日の
  NHK囲碁番組にも登場している人気者、お孫さんの小山空也3段は若手の有望棋
  士という、つまり囲碁一家である。

   大変気さくな方で、初めて訪問したのに親切に応対してくれた。それもそのはず、
  やはり昔の囲碁仲間の元N発條の会長で、神奈川県経営者連盟会長のMさんが、
  昔からの囲碁仲間に声をかけて、毎月第2木曜日にこの「白百合」で、「天狗会」な
  る碁キチの集まりを主宰していて、席亭さんは天狗会のメンバーとは昵懇の仲なの
  である。

   今日はその「天狗会」の開催日。Mさん始め仲間達が続々と集まってきて、Mさん
  が初見参の私を皆さんに紹介してくれた。Mさんと17年ぶりに握手をして昔話に花
  が咲いたが、彼は私との数々の囲碁の対戦を驚くほどつぶさに覚えていて再会を
  喜んでくれた。今日の囲碁相手のK氏もこの「天狗会」のメンバーなので、それで
  この日、この場所を指定してきた意味がようやく納得できた。

   K氏との対局は、昔は3子置かせていたが、彼は著しく棋力が向上しているよう
  だし、一方私はほとんど他流試合をしていないので、彼の提案で彼の先手、つまり
  置石のハンデなしで対局を開始した。

   対局が進むにつれ、彼の上達ぶりが良く判った。かってのポカはまるでない。さら
  に驚いたことに最近流行の人工頭脳(AI)の最新布石も覚えている。熱戦の結果は
  なんとジゴつまり引き分けだった。彼はジゴになったのがご機嫌で、2局目を所望し
  たが、残念なことに2局目、3局目とも私の連勝となり、いったん休憩にした。

   私は疲れたので一休みをしていたら、席亭の西田さんが、「天狗会」の1人を指
  定してくれて対戦した。私の白番だったが私の圧勝に終わった。その後、K氏とM
  さんの対局を微笑ましく観戦していたら、K氏が最後にもう1局をやろうと言い出し
  た。やむを得ず再びK氏と対戦したが、彼の完敗に終わり、「やはり先では勝てな
  い、次からは2子か3子にして下さい。」と遂に弱音を吐いた。

   結局この日は全部で5局打ち、4勝1ジゴの成績だった。席亭さんは私とMさんの
  碁が見たいとおっしゃったが、次回に持ち越しとなった。Mさんはこの会の強豪で、
  昔から私の常先の手合いだったから彼は私よりも上手である。

   遂に誘われて「天狗会」のメンバーにさせられた。毎月第2木曜日、時々は参加
  することになるだろう。まずは約束通り9月の天狗会には参加せざるを得ない。
  囲碁好きの良き友人が沢山できそうだ。Mさんの人徳だろう。集まってくる仲間た
  ちは皆さん愉快な紳士ばかりだった。私の旧歴を知っている方もおられた。

   この会終了後どうもどこかで反省会をやるらしい。私も誘われたが固辞して帰宅
  した。1日に5局も打つのは記憶にないほど久し振りで疲れたし、興奮が冷めない
  ので、逗子の居酒屋に立ち寄り1人で納涼会をやった。勝利の美酒である。

   珍しく「衣かつぎ」が置いてあったのでツマミにしたが今が旬らしい。何のことは
  ない。里芋の小芋を皮のまま蒸し、その皮を剥いて塩をつけて食べる秋の酒肴で
  ある。冷たい生ビールが火照った頭を冷やして心地よかった。甘露!甘露!