95翁との囲碁対局その3。   17,04,22

   逗子に住む家内の伯父K翁は今月でめでたく満95歳になったが、驚くほどの健在
  ぶりで、まだ一人で逗子の町に出掛けては食材やら好きな買い物などをしている。

   先週私がヒラメとイナダを釣って刺身にしたので、それを手土産にして久し振りに
  K翁宅を訪問し、ヒラメの刺身で一献傾けて、今年3度目の囲碁対局をした。

   私の訪問を心待ちにしていた翁はとっておきの大吟醸を用意し、さらに私の大好
  物の「醤油だんご」を市内の老舗和菓子店で買い求め、92歳の老夫人は手作りの
  惣菜やら色々な酒の肴を用意して歓待してくれた。

   翁の話では、昨年一昨年と連続して逗子の囲碁大会で優勝して賞品の米5キロ
  を持ち帰っているので、今年もと張り切って出場したが、不本意にも見損じが続い
  て遂に1勝3敗という惨めな成績に終わったと大いに嘆いていた。

   95歳という最長老だが、最高段者でもある翁にしても見損じはあるもの。まだま
  だ若い者の軍門に下る訳にはいかないと意気軒昂なところを見せ、96歳になる
  来年こそは必ずリベンジすると大いにうっぷんを晴らしていた。なんとも闘争心旺
  盛な驚異的な老人である。

   日頃の言動や物腰は至って物静かで温厚な尊敬すべき大先輩だが、こと囲碁と
  なると闘争心に火が付く。囲碁の打ち方は棋理に忠実、無理な着手は決してしな
  い堂々たる打ちっぷりで、さすがはアマ6段の棋風が随所に現れて私を翻弄する。

   今日の対局は序盤、中盤と私の構想通りに進み、予想以上にうまく打てて幸運
  にも私が中押し勝ちを収め、今年に入ってこれで2勝1敗となった。

   翁は、技量が伯仲している私との対局をとても楽しみにしていて、難かしい局面
  で長時間長考しているときが無上の幸せで、これが自分の長寿の源だと私にいつ
  も感謝をしている。

   加えて私との局後の一献と語らいが命の泉だとおっしゃる。私だってそうだ。
  今では囲碁の好敵手は翁しかいない。かっての好敵手はみな鬼籍に入ってしまっ
  た。お互いに元気なうちにあと数年、翁との精一杯の頭脳の戦いを楽しみたい。

   今日持ち込んだヒラメの刺身は絶品だと喜ばれ、大皿に盛りつけた刺身はあっ
  という間に4人で食べ尽くした。次回は近々我が家にご両人をお迎えすることにな
  った。