今年の 囲碁の打ち初め。  16,01,27

   今年の4月で満94歳になる囲碁の師匠のK翁は、老いて益々意気軒昂でまるで
  衰えを知らない。毎晩の1合の酒が長寿の薬で、ご一緒すると、「旨い旨い!」を
  連発して幸せを絵に描いたようなえびす顔になる。こちらまで笑顔のお裾分けを
  頂戴した気分になる。

   ところが囲碁の対局となると一転して眼光炯々、鋭い着手を次々に繰り出して
  相手を翻弄する。相手とは私の事で、翁は現在囲碁の好敵手が周りにいなくな
  って久しいので、私だけが格好の餌食にされるという訳である。私とてむざむざ
  敵の術中に嵌ってばかりはいられない。敬愛と勝負は別物である。

   さて今年の打ち始めは我が家での対局。学生時代から付き合いのあった女性
  3人が10数年ぶりに一緒に我が家を訪問してくれ、それに翁ご夫妻と翁の令嬢、
  家内が加わって和やかな昼食会になった。例によって私は釣った魚を手料理で
  もてなし、最後の締めは”あんかけうどん”を振る舞った。

   女性陣が退散してから、いよいよ今年初の対局となった。昨年の対局成績は
  2勝2敗1ジゴ、全くのイーブンだった。もっとも私が常先に打ち込まれているの
  で、ふたつ勝ち越さないと互先には戻れないから一層の奮発が必要である。

   対局は序盤から終始私が優勢で中盤過ぎには必勝態勢だったが、勝勢に慢
  心した私に緩着が出て、それを咎めた翁の着手が冴えに冴え、遂に終盤には
  予断を許さぬ形勢となり、終わって数えたら私の3目敗けに終わった。


     
              (苦戦を強いられた94翁。何と1時間も長考。)

   逆転である。敗着は明快で、終了後の検討でも2人の意見は一致した。対局
  時間は何と3時間半。翁の苦吟の長考が目立ったが、終わってみれば翁の満
  足げな笑顔が全てを物語っていた。正月に娘婿が持参した日本酒「越後鶴亀」
  を例によって旨い旨いと飲み、次の対局を楽しみに、今年の第一局を終えた。